空き家バンクでは、格安で売られている物件を目にする機会が多いですが、なんと1円で売買されている物件があることをご存じですか?
1円と聞くと「立地が悪い」「ボロボロの家」を想像してしまうかもしれません。
しかし、そうではなく充分に住める状態の空き家が、温泉地や別荘地などの観光地、首都圏で1円で売りに出されていることがあります。
なぜ、好立地にある空き家を1円で手放してしまうのか気になりますよね。
そこで今回は、所有者が空き家を1円で売る理由や物件の特徴、査定のポイントと売却時の注意点について解説します。
ぜひご参考までにご覧ください。
01空き家が1円で売られる理由とは?
近年、格安で売り出される空き家が増えていますが、その背景には少子高齢化や人口減少、新築住宅の供給過多による空き家の増加問題があります。総務省が5年ごとにおこなう「平成30年住宅・土地統計調査」によると、全国の総住宅数は6,240万7千戸のうち空き家は848万9千戸、空き家率は過去最高の13.6%となっています。
今後もさらに空き家は増加していく見込みで「格安でも良いから売りたい」という所有者も同様に増えています。
その理由は主に以下の3つです。
格安でも売りたい理由①:維持費がかかる
空き家を所有していると、さまざまな維持費が発生します。維持費の内訳は以下のとおりです。
・固定資産税
・都市計画税
・光熱費(電気・水道を契約している場合)
・火災・地震保険料
・庭木の手入れ・管理費用
空き家の状態や市町村によってももちろん異なりますが、上記の費用を合計すると年間で約30万円以上はかかることになります。
また、維持費をなるべくかけたくないからと管理を怠った場合は、空き家の老朽化が加速し、最終的に解体をしなければいけなくなってしまいます。
解体費用は、空き家の大きさや構造によりますが、目安として150万円~200万円ほどかかります。
使用しなくても維持費にこれだけの金額がかかるため、安い値段でも売りたいという方がいるのです。
関連記事|空き家の維持費はどれくらいかかる?空き家はどう対処すべきなのか
格安でも売りたい理由②:相続人への負担を避けたい
空き家の所有者が亡くなった後は、相続人が引き継ぐことになります。そうなると、空き家の維持費の負担も相続人が背負うことになってしまいます。
さらに、物件によっては相続人に高い相続税がかかることも。
そのため「子孫に空き家を相続させて負担をかけたくない」という理由で、売却価格を1円にして、売却益よりも手放すことを優先するケースがあります。
関連記事|空き家を相続放棄しても管理責任が残る!?それはどうして?
格安でも売りたい理由③:売れなくなることへの焦り
前述のとおり、空き家は年々増加しており、今後も人口減少によりさらに増えていくことが予測されます。そのため、空き家の売却を先延ばしすればするほど、空き家が供給過多になるため、売却のハードルが高くなってしまいます。
このような焦りから、早く売るために注目を集めやすい「1円」という破格の値段をつけるのでしょう。
021円で売られる空き家の特徴とは?
「1円で売られる空き家はどのような物件なのか」「立地や条件にどのような特徴があるのか」気になるところでしょう。この章では、1円で売られた空き家の3つの事例とその特徴を解説します。
1haの田んぼつきの一戸建て
築140年、490坪ほどの大きな空き家が1円で売れたケースがあります。家の目の前には1haほどの広さの田んぼがあり、条件としては悪くなさそうですが、なぜ1円なのでしょうか。
その理由は、古い建物のため雨漏りをしていて修繕が必要であることと、農地の売買には農業委員会等の許可が必要になるため、買い手が限られてしまうからです。
農業委員会等の許可を得るためには、「農業の知識がある」「しっかり農地を管理できる」などの条件が購入希望者に求められます。
そのため、なかなか買い手が見つからず、1円で売りに出すことになったのです。
その後、近隣の農園から問い合わせがあり、無事に売買が成立しました。
温泉付きの約330㎡の別荘地
続いては、東伊豆の2階建て2DKの別荘が1円で売れたケースをご紹介します。この物件は、固定資産税のほかに水道料金、温泉代などで毎月2万3,000円ほどの維持費がかかっていたため、なるべく早く手放そうと売却価格を1円に設定していました。
ただしこうした物件の場合、物件自体は1円で購入できますが、税金やリフォームなどで、入居できる状態にするのには諸費用が約200万円かかります。
そのため買い手は、なるべくリフォームにお金をかけずに自らDIYをすることができる30~40代の男性が大半を占める傾向にあります。
海が一望できる熱海の戸建て
温泉地として人気の高い静岡県熱海市にも、1円で売られた空き家があります。その空き家は築29年で、高台の傾斜地に建てられています。
駐車場が無く、道路からゴンドラに乗らないと敷地に入れないという訳あり物件でした。
そのほかにも、家の中には大量の残置物があったり、雨漏りなどで修繕費がかかったりするというデメリットがあったため、1円で売りに出されました。
固定資産税や管理費で年間18万円ほどかかりますが、購入者が自然豊かな環境にある物件を気に入ったことで、売買が成立しました。
海が一望できて花火も鑑賞できるこの物件は、将来的に1階にカフェを開いて有効活用するそうですよ。
03なぜ1円?空き家の査定のポイントと売却時の注意点とは?
前章で述べたとおり、1円で売られる空き家は「維持費がかかる」「早く売りたい」などの理由で安い値段になっています。1円は一見すると破格の値段に感じますが、実際には購入価格以外に修繕費や維持費などがかかります。
売主としては、なかなか売れずに維持費だけを払い続けるよりも、1円でも良いからそのままの状態でできるだけ早く売ったほうが、長期的に見てコストの削減につながるというメリットがあります。
とはいえ、なるべく高い値段で売りたいと考える方は多いでしょう。
なるべく高値で売りたい方は、不動産鑑定で空き家の売却額を決める主な査定のポイントである以下4点をチェックしてみてください。
・キッチンの動線が保たれているか
・水回りが清潔か
・管理状況を示す書類があるか
・室内や庭の手入れがされているか
買い手にとって、生活するうえで毎日のように使うキッチンの動線はもっとも気になる点です。
そのため、キッチンが快適に使えるように動線が保たれていると、査定額が高くなりやすくなります。
キッチン以外にも、トイレや浴槽などの居住するうえで使用頻度が高い水回りも清潔だと好感度が高まります。
また、リフォームをしたことがある家であれば、管理状況がわかる書類があると査定がスムーズに進むでしょう。
さらに、査定額が上がりやすくなるポイントとして、空き家に見えないくらいのこまめな手入れがされていることも重要です。
例えば、定期的に庭の手入れをしたり、ほこりが溜まらないように室内を掃除したりしておくと、「すぐに住めそうな家だ」と購入希望者が魅力を感じやすくなります。
注意点としては、よほどボロボロでない限りは、空き家を管理・保存し、解体しないことです。
中古物件は、更地にするよりも住める家が建っているほうが利用価値が高く、新たに家を建てるよりもずっとコストが少なく済むからです。
例えば、先ほどの1円で売られた熱海の物件の事例では、仲間に手伝ってもらいながら改装工事をおこない、修繕費を100万円程度に抑えています。
新築で注文住宅を建てる場合の建築費用の全国平均は約3,200万円ほどかかることを考えると、数百万円の費用で購入できる空き家はかなりお得ですね。
国土交通省も中古住宅の流通促進のために、リフォーム費用の補助金などの政策に力を入れています。
以上のことから、空き家を適切に管理して売りに出すことで、買主にとっても売主にとっても良い不動産取引ができるでしょう。
関連記事|空き家の管理をどうする?適正管理や有効活用の方法をご紹介
04まとめ
今回は、所有者が空き家を1円で売る理由や物件の特徴、査定のポイントと売却時の注意点について解説しました。空き家を1円で売る主な理由は、維持費がかかることや、相続人への負担を避けたい、売れるうちに売りたいと言う焦りからです。
1円で売られる空き家はリフォームをすることで、買い手にとって良い物件に生まれ変わることもあります。
そのため、空き家を安く売ることは、買主と売主の双方にメリットがある売り方と言えるでしょう。
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