近年、空き家の無償譲渡が注目を集めています。
特に、空き家の増加が社会問題化するにつれて、親が子に生前贈与として自宅を無償譲渡するケースに加え、空き家の所有者が親族ではない方に住居を無償譲渡する場合も増えてきています。
無償譲渡と聞くと、譲渡される側は金銭の支払いなく住宅を取得できるかのように思われますが、無償譲渡された住宅に対しては税金が課税されます。
今回の記事では空き家の無償譲渡に関わる税金の話を中心にご紹介いたします。
01近年増加中の空き家の無償譲渡とは?
はじめに、空き家の無償譲渡についてご説明していきましょう。通常、ものを譲渡する場合にはその代価として金銭の受け渡しが発生することが一般的です。
これに対して、無償譲渡とは金銭の授受なく、ものを譲渡することを指します。
空き家を無償譲渡する場合には、使わなくなった住宅を自分の子どもや、空き家の取得を希望する人に無償で譲ることになります。
すでに述べたように、近年では親族以外にも住宅を無償譲渡するケースが増えつつあります。
この背景には、社会・経済的な要因による空き家の増加と空き家に課税される税金の問題があります。
空き家増加の要因の一つには、日本では新築住宅が好まれる傾向が強く、人口が減少しているにもかかわらず、新築住宅が建設され続け、住宅の供給過多となっている現状が挙げられます。
住宅の所有者が高齢化し、子との同居や施設への入所により自宅が空き家となるケースも増えています。
また、使わなくなった住宅を空き家のままにしてしまう所有者が多いのは、建物の除去費用や、解体後の更地には税金が多く課税されること、また、解体後に新たに建物を建築できない「再建築不可物件」の存在など、経済的、法的な理由があります。
しかし、使っていない空き家であっても、固定資産税などの税金は課税されますし、管理費用がかかります。
管理を怠って、行政が周辺地域に悪影響を及ぼすと判断すれば、固定資産税の負担が大きくなる場合もあります。
こうした状況が、親族間以外でも空き家の無償譲渡をおこなうことが一般的になりつつある背景となっているのです。
関連記事: 空き家が日本で増え続ける原因とは?2020年の現状と解決策もご紹介
02空き家の無償譲渡はメリットばかりではない!気を付けたいポイントは?
無償で住居を譲り受けることができ、受ける側にとってメリットが大きいように思われる空き家の無償譲渡ですが、メリットばかりではなく、注意すべき点もあります。まず、注意しておきたいのは、特に親族間の無償譲渡ではない場合、無償譲渡物件は何らかの理由で売却しにくい物件であるという点です。
たとえば、アクセスが極端に悪く、活用方法が見つからない、老朽化が進行している、再建築不可物件であるなどの可能性が考えられます。
さらに、通常の不動産取引では仲介業者が手続きをおこないますが、無償譲渡の場合は原則的に所有者と不動産を譲り受ける側の直接取引となります。
調査や交渉、書類の準備や作成は本人がおこなうか、専門家に費用を支払って依頼することになります。
そして、空き家の無償譲渡で特に気を付けたいのが、無償譲渡物件に対して課税される税金です。
個人間での空き家の無償譲渡には、譲渡を受けた側に贈与税、不動産取得税、登録免許税、固定資産税、都市計画税などの税金の支払いが発生します。
これらのうち、空き家の売買や相続の場合とは異なり、無償譲渡の場合に課税されるのが贈与税です。
ここからは空き家の無償譲渡に関わる贈与税について、詳しくご説明していきましょう。
関連記事: 空き家にかかる税金の節税方法を知って損しない問題解決策を選ぼう!
03空き家の無償譲渡に課税される贈与税とは?
まずは、譲渡、相続と贈与の違いから見ていきましょう。無償譲渡のように金銭が発生しないものの受け渡しは、法律的には贈与と呼ばれます。
相続の場合もものの対価としての金銭の受け渡しは発生しませんが、相続は『亡くなった人から財産を受け継ぐ』場合に、対して贈与は『生きている人から財産を譲り受ける』場合に用いられます。
そして、亡くなった人から受け継いだ財産にかかる税金は相続税、生きている人から譲り受けた財産にかかる税金は贈与税と呼ばれます。
贈与税は、贈与対象の財産の合計額から基礎控除額(110万円)を差し引いた金額に対して課税されます。
差し引いた金額に応じて課税率が変わりますが、課税対象となる財産は以下のように分けられます。
●一般贈与財産…夫婦・兄弟姉妹間の贈与や、親が未成年の子どもへ贈与する場合
●特例贈与財産…祖父母から孫、または親から子への贈与で、譲り受ける側の子や孫が20歳以上である場合
どちらも最大課税率は55%ですが、一般贈与財産の場合は最大課税率となる金額が3,000万円超、特例贈与財産の場合は4,500万円超と大きく異なります。
また20歳以上か未満かの判断は、譲り受けた人の誕生日ではなく譲り受けた年の1月1日に成人していることが基準となります。
詳しくは、国税庁のホームページにてご確認ください。
04空き家の無償譲渡で税金を安くする方法とは?
無償譲渡で空き家を安く取得できても、多額の税金がかかると負担が大きいですよね。そのような場合には、『相続時精算課税の選択』制度(通称:相続時精算課税制度)をチェックしてみましょう。
この制度は、60歳以上の親または祖父母から財産を譲り受けた人が20歳以上の場合、財産に対してかかる税金を安くするものです。
ただし、相続時精算課税制度は贈与した人が亡くなると、生前に贈与した分の財産も加算して相続税を課税する仕組みとなっています。
また、相続時精算課税制度は一度選択すると取り消すことができません。
そのため、将来相続する財産と生前贈与を受ける財産の価値を合算したらどのくらいになるのか十分に検討した上で、選択しましょう。
05無償譲渡された空き家を解体すると贈与税の金額が高くなる?
空き家を無償譲渡する際、家付きではなく空き家を解体してから譲り受けるケースもあります。解体や改築にかかる費用がかからないため、こちらの方がよいと思われるかもしれませんが、空き家を解体すると贈与税の課税対象が土地のみとなり、税金が高くなる可能性があります。
通常、家は新築された時の価値が一番高く、それから築年数を経るごとに家屋が古くなって価値が下がります。
一方、土地は古くなるものがないため、手に入れた時から年数が経っても大きく価値が下がることはほとんどありません。
そのため、空き家を解体して更地にしてから譲り受けると贈与税の課税対象となる金額も高くなり、負担が重くなることがあるのです。
なお、空き家を解体して土地だけを残すと、贈与税だけでなく固定資産税も高くなるリスクがあります。
関連記事:固定資産税6倍の恐れも!空き家の固定資産税について3大NG
贈与税は譲り受けた後に1回納めるだけで良いですが、固定資産税は別の人に譲ったり売ったりしない限り、納め続けなければいけません。
そのため空き家を残したまま所有している人も少なくありません。
とはいえ、誰ももう住むつもりがない空き家を放置してもメリットがないので、無償譲渡を受ける場合は家を残すべきか、解体すべきか十分検討しましょう。
06まとめ
空き家の無償譲渡は、住宅を無料で取得できるため、譲り受ける側に大きなメリットがあるように感じられますが、税金のことを考えると、かえって金銭的負担が増える可能性もあります。不動産の贈与は専門的知識を要する場合が多いので、ぜひ相続や贈与に詳しい不動産会社へ相談しましょう。
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