田舎に住む両親や祖父母の逝去により、空き家を相続する人が増えています。
売却も賃貸利用もなく、まったく使用されていない空き家であっても、さまざまな維持費がかかってしまいます。
この記事では、空き家の維持費にはどのようなものがあり、どれくらいかかるのかについて解説していきます。
空き家を放置すると、維持費がかかるだけでなく、さまざまなトラブルも発生するため、対処方法についても早めに検討しましょう。
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空き家の維持費と都市計画法の関係
親戚から空き家を相続した空き家をそのまま放置していませんか?
誰も住んでいない空き家であっても、所有者は空き家をしっかりと管理しなければならない責任があります。
また、空き家は所有しているだけでもさまざまな維持費が必要になります。
空き家にかかる維持費にはどのようなものがあるのか、理解しておきましょう。
空き家の維持費:税金
空き家を含み、不動産を所有している場合は、固定資産税を納税する義務があります。
固定資産税とは、空き家などの住宅を所有する方に向けて市町村が課す税金です。
その市町村ごとに固定資産税の税率は異なりますが、一般的な税率は1.4%となっています。
固定資産税の税額は、市町村が定めた不動産の固定資産税評価額に、税率をかけて計算します。
たとえば、建物の固定資産税評価額が、500万円の場合の固定資産税は、
「500万円 × 1.4% = 7万円」となります。
毎年5月中旬~下旬ごろに届く、固定資産税の納税通知書で、詳細金額が確認できます。
固定資産税は建物だけではなく、土地にも固定資産税がかかります。
土地が住宅用の場合、面積が200㎡以下であれば、固定資産税評価額が1/6になる優遇措置があります。
たとえば、土地の固定資産税評価額が、1,500万円の場合の固定資産税は、
「1,500万円 × 1/6 × 1.4% = 3.5万円」となります。
上記の場合、建物の固定資産税7万円+土地の固定資産税3.5万円=10.5万円が、年間で必要な税額になります。
さらに、都市計画税がかかります。
都市計画税とは、都市計画法によって指定される、市街化区域にある土地・建物に課される税金です。
自治体が定める都市計画に指定されている地域、市街がすでに形成されている地域、将来的に市街化を図る地域が、市街化区域に該当します。
空き家の所在地が、市街化区域にあるかどうかは、空き家所在地の自治体に問い合わせて確認してください。
都市計画税の税額は、市町村ごとに異なりますが、一般的には0.3%です。
たとえば、建物の固定資産税評価額が、500万円の場合の固定資産税は、
「500万円 × 0.3% = 1.5万円」となります。
土地の固定資産税評価額が、1,500万円で用地面積が200㎡以下の場合の固定資産税は、
「1,500万円 × 1/3 × 0.3% = 1.5万円」となります。
この場合、固定資産税と都市計画税の年間の空き家の維持費は、トータルで13.5万円もかかってしまうことになります。
空き家の維持費はほかにも!
税金以外にも、空き家の維持費はさまざまなものがかかります。
空き家の電気・水道の契約をそのままにしておく場合、たとえ使用していなくても、基本料金がかかります。
目安として、空き家の管理に必要な電気代は年間で約1.6万円、水道代は年間で約1.8万円の維持費が必要になります。
火災保険料は年間で約12万円、地震保険料は年間で約5万円の維持費がかかります。
そのほかにも、空き家が老朽化している場合は、修繕工事費用がかかり、場合によっては数100万円ほどかかるケースもあります。
庭木の手入れ・管理費用は、年間で20万円ほどかかります。
誰も住んでいない、使用されていない空き家であっても、維持費は年間で約30万円以上もかかってしまうのです。
【空き家と維持費】空き家はどう対処すべきなのか?
空き家は、所有しているだけでもかなりの維持費がかかってしまいます。
そのため空き家は、なんらかの活用をすることがおすすめです。
空き家の対処方法:売却
誰も住んでいない空き家を所有しているのであれば、まずは売却することを検討してみましょう。
空き家を売却する場合は、そのままの状態で売却するか、空き家を解体してから売却する方法があります。
空き家を解体して、更地にしたほうが、そのままの状態で売却するよりも早く売却できる可能性が高くなります。
どちらの場合も、信頼できる不動産会社に依頼することが一般的です。
空き家の対処方法:賃貸
空き家の立地条件が良好な場合や、築年数が浅い場合は、賃貸に出せば、借り手が見つかるケースもあります。
築年数が古い空き家の場合は、家賃を相場よりも低く設定したり、事務所利用可、ペットと同居可など条件の幅を広げたりすることで、借り手が見つかりやすくなりますよ。
別荘用としての貸し出しや、シェアハウス、民泊といった賃貸方法で空き家を活用することも話題となっています。
リフォームやリノベーションをおこなえば、賃貸活用しやすくなるでしょう。
空き家を賃貸に出すことを検討している場合も、まずは不動産会社に相談してみるのがベストです。
空き家の対処方法:解体後、土地活用
空き家の築年数が古く、リノベーションなどのコストがかさむ場合には、建物を解体し、更地にした上で土地活用するという方法があります。
立地条件によっては、賃貸住宅を経営して、利益を得ることができます。
また、土地活用の方法として、駐車場、コインランドリーなどの経営は近年注目を集めつつあるビジネスとなっています。
さらに、賃貸需要が少ないエリアであっても、国道などの道路沿いの立地であれば、コンビニエンスストアなどに土地を貸して、賃料を得るという方法もあります。
ただし、これらの方法を収益につなげるためには、人口が多い都市部に近く、ビジネスとして需要が確保できる必要があります。
そうした需要が少ない地方の過疎地であっても、収益を得る活用方法としては、太陽光発電施設を建設して、発電した電力を電力会社に買い取ってもらう方法があります。
ソーラーパネルの設置費用など、設備投資の必要はありますが、入居者や利用者を集める必要がなく、一度設置してしまえばランニングコストがほとんどかからないため、人口の少ない地方ではおすすめの土地活用法です。
その他にも、建設会社の資材置き場などとして土地を貸し出すのも、設備投資が必要なく、過疎地であっても収益を得られる可能性があります。
【空き家と維持費】空き家を放置しないほうがいい理由
空き家問題を解消するために、国もさまざまな取り組みをおこなっています。
空き家問題対策として、2014年に「空き家等対策特別措置法」が施行され、もはや空き家を放置したままにしておくことはできなくなりました。
倒壊のリスクが高い空き家、著しく衛生的に有害となる空き家、手入れや管理がおこなわれておらず、地域の外観を乱す空き家、そのほか周辺の生活環境を著しく乱す空き家など、いわゆる放置された空き家は、「特定空き家」に指定されます。
「特定空き家」に指定されると、自治体や役所から改善するよう指導、勧告が入ります。
また、「特定空き家」に指定され、勧告を受けると、「固定資産税の住宅用地の特例」から排除され、固定資産税などの優遇措置が受けられなくなり、固定資産税や都市計画税が増額されます。
「固定資産税の住宅用地特例」とは、住宅用の土地に対して、200㎡までの土地に対しては6分の1に、200㎡を超える部分の土地に対しては3分の1に、固定資産税を減額するという制度です。
この特例があるため、放置されたままの空き家が増加したという背景もあります。
「特定空き家」に指定されてしまうと、場合によっては固定資産税が最大で6倍になってしまうこともあるのです。
さらに「特定空き家」に指定され、指導、勧告を受けたにも関わらず、改善されない場合は、行政代執行がおこなわれることもあります。
行政代執行がおこなわれると、行政の判断で強制的に空き家を解体したり、修繕したり、ゴミを処分したりすることが可能になります。
空き家の解体や修繕にかかった費用は、空き家の所有者に請求されるのです。
行政代執行の費用は、税金と同じ扱いになるため、支払いをしなければ、空き家ではなく、現在居住している住宅の不動産や車が差し押さえられてしまいます。
行政代執行は、空き家の所有者にとっては、もっとも避けるべきものなのです。
「特定空き家」に指定されてしまうことのないよう、誰も住んでいない空き家であっても、しっかりと管理することが重要です。
空き家を放置しておくと、さまざまな問題が発生し、周辺住民にも迷惑をかけてしまいます。
空き家の適切な管理は、所有者がおこなうべきものであり、その責任があります。
空き家は放置しておいてもなんとかなるだろうという甘い考えは、もはや通用しなくなっています。
誰も住んでいない状況が長く続いてしまう前の、できるだけ早い段階で、空き家の売却や賃貸を検討することがポイントです。
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