空家対策特別措置法(以下、「特措法」)が制定されて以来、官民あげて空き家対策に乗り出しています。
ただ、なかなか採算ベースに乗らないプロジェクトが多いのも事実。
このため、どうしても自治体の取り組みに依存しがちです。
それでは自治体はどんな対策や取り組みをしているのでしょうか。
今回は自治体が行なっている空き家対策にスポットをあてます。
01自治体が行なっている空き家対策
自治体の空き家対策は多岐にわたります。テレビやニュースでは「行政代執行で空き家を解体」や「空き家を再生してこんな施設を作った」といった見た目に派手なものが流れます。
こうした取り組みは一端に過ぎません。
各自治体は啓発活動から民間が空き家対策に取り組みやすいように下地も作っています。
自治体が行なっている代表的な仕組み作りをみていきましょう。
啓発活動
市役所や役場へ行けば、「空き家対策を考えよう」といったパンフレットやポスターを目にします。これらを作っているのも自治体です。
まずは空き家を放置するのが問題、という意識を住民に持ってもらいます。
最近では総務課や空き家対策室のような部署ができるようになりました。
空き家バンクの設置
空き家バンクとは、空き家を売りたい人や貸したい人と、買いたい人や借りたい人を、仲立ちをする制度です。本来は不動産業者が行なうものですが、空き家を仲介しても報酬は微々たるもの。
不動産業者は積極的に行いません。
このため、自治体が主体となって空き家バンクを運営しています。
条例の制定
自治体によって名称は異なるものの、「空き家対策条例」も制定しています。自治体も法令なしには動けません。
特措法だけでは自治体が積極的に動くには不十分で、細かい規則が必要です。
それが空き家対策条例で、現地調査の方法や委員会の立ち上げ、所轄する部署などを決定します。
空き家対策委員会の立ち上げ
会議体として空き家対策委員会を立ち上げている自治体もあります。空き家対策委員会のメンバーは、弁護士や不動産鑑定士といった専門家、大学教授のような有識者、解体業者のような実務家などです。
その自治体の空き家対策をどうすべきか提案し、空き家対策に役立てています。
特定空家の指定
特定空家の指定も自治体の動きのひとつ。特定空家に指定されると、固定資産税の優遇措置が解除されます。
この後待っているのは、除却などの強制的な措置です。
2019年までに特定空家などの除却に至った件数は7,552物件。
2023年には特措法が改正される見込みで、特定空家の指定がしやすくなります。
今後、除却などの増加が見込まれます。
02具体的な取り組み
ここまでは自治体の空き家対策の仕組みづくりの部分をみてきました。こうした仕組みや法令がなければ官も民も動きにくくなります。
次は具体的な取り組みをみていきましょう。
仕組みをつくり、具体的な施策を行なう。
自治体の行っている取り組みは表に出てくるものばかりではないことがわかります。
取り壊し後の固定資産税の減免
固定資産税が空き家問題の一因となっているのは周知の事実です。住宅が建っていれば土地の固定資産税が減免されます。
空き家を取り壊した結果、税金が増えるのも避けているのです。
これを回避するために、取り壊し後でも一定期間は固定資産税の減免が受けられるようにする自治体もあります。
交流拠点として整備
次は活用事例です。自治体が宿泊やアパートとして活用するのは難しいでしょう。
その代わり、地域の交流拠点としての活用や防災拠点としての活用は得意分野です。
カフェなども併設すると地元の人も集まりやすくなります。
こうした取り組みは時折ニュースなどでも取り上げられる、わかりやすい事例です。
強制的に空き家を壊す(行政代執行)
自治体には一部に強制力も付与されています。空き家問題の場合は、所有者に代わって空き家を取り壊す権限です。
これも特措法によって認められており、2023年の改正ではさらに利用しやすくなります。
ただ、やはり他人の財産を侵害するのは抵抗があるのか、空き家の数に比べると行政代執行が行なわれた数は多くありません。
取り組みたくても人手不足
自治体の多くは人手不足。空き家問題に積極的に取り組みたくてもマンパワー不足の自治体が多いのです。
「空き家対策課」といった専門部署があるのは珍しく、総務部門や課税部門が兼任しています。
これでは多くの担当者を置くことや専門知識をつけることは困難です。
空き家問題とともにそれに取り組む自治体の人材問題も問題となりつつあります。
03まとめ
空き家問題は全国的な問題ですが、地方では特に大きな問題です。ですが、地方は自治体の職員数や予算規模も小さく、満足な活動ができないこともあります。
理想としては自治体が仕組みをつくり、あとは民間主導で行うのがよいでしょう。
利益が出にくい空き家問題ではボランティアや大学などが主体となっているのが現実です。
今後の改正が期待されます。
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