日本では年々深刻化する空き家問題が大きな社会問題となっており、平成31年度の「住宅・土地統計調査」では、全国の空き家数約846万戸、空き家率約13.55%と過去最高を記録しました。
こうした状況に歯止めをかけるために、国が制定した法律に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家等対策特別措置法)があります。
この法律は管理不全と判断される空き家について、行政が指導や命令などの措置をとることができるとし、また、空き家対策の主体を各市区町村と定めています。
そこで、今回の記事では伊万里市の空き家対策についてご紹介していきましょう。
伊万里市の空き家対策をご紹介!空き家の解体・除去を市が代行する制度も!
九州北部に位置する佐賀県伊万里市は人口およそ6万人、面積255.25平方キロメートルほどの市で、古くから焼き物「古伊万里」の産地として栄えてきました。
その港は古くは「古伊万里」の積出港として発展し、現在では様々な工業製品を世界へと輸出する国際物流拠点港へと成長を遂げています。
文化都市として発展してきた伊万里市ですが、全国の他の市区町村と同様、少子高齢化や空き家問題への対応を迫られており、移住定住施策や空き家対策に取り組んでいます。
伊万里市の空き家対策のうち、今回はじめにご紹介するのは、「空き家等の適正管理に関する条例」です。
平成25年1月より施行されたこちらの条例は、空家等対策特別措置法を基に、空家等の所有者に対して空き家の適正な維持・管理の義務を求める内容となっています。
それでは、「空き家等の適正管理に関する条例」の概要について見ていきましょう。
まず、こちらの条例の背景には、空き家の所有者の高齢化や経済的な事情により、適正に管理されず、老朽化・荒廃化しても放置される空き家が増加している現状が挙げられます。
このような放置空き家は倒壊や犯罪の温床になる可能性が高く、近隣の生活環境を脅かすことが懸念されています。
「空き家等の適正管理に関する条例」は、空き家の管理責任者をその所有者と定め、適正な管理を義務付けることにより、地域の暮らしの安全を守ることを目的としています。
条例の対象となるのは、伊万里市内にある住宅、事務所や店舗、工場などの商工業向けの建物や小屋などのうち、常に無人の状態にあるものとその敷地です。
条例ではこれらについて適正な管理がなされておらず、「危険な状態」と判断された場合、市がその所有者に対して必要な措置をとることができるとしています。
ここで言う「危険な状態」とは、以下のいずれかの状態を指します。
●老朽化や自然災害により、空き家が倒壊したり、その一部が飛散したりする可能性があり、周囲の人やその財産に危害が及ぶおそれがある
●不特定者が空き家に侵入し、犯罪や火災を引き起こすおそれがある
●敷地内の植物が生い茂り、害虫が発生するなど、近隣の生活環境を悪化させるおそれがある
伊万里市では「都市政策課 住宅・空き家対策係」および各町の公民館を窓口として、このような状態の空き家についての情報提供を受け付けています。
危険な状態の空き家についての情報提供を受けると、市は当該の空き家について現地調査、所有者情報調査、場合によっては立ち入り調査などの実態調査を実施します。
調査の結果、空き家が危険な状態であると判断された場合、通知文書により助言および指導、勧告などの措置が講じられます。
伊万里市は、住民税の非課税世帯について、経済的な事情で空き家の所有者が解体・除去をおこなえない場合の救済措置を設けています。
こちらの救済措置では、解体・除去のための補助金の交付を受ける、または空き家とその敷地を市に寄付し、市に解体・除去を委ねることができます。
ただし、空き家の所有者が助言および指導、勧告に従わなかった場合は、行政処分に該当するより効力の強い措置が取られることになります。
この段階では、空き家の解体・除去などについての「命令」が出され、これに従わない場合は所有者の住所・氏名・命令内容が公表されます。
命令・公表に至っても所有者がこれに従わず、著しく公益に反すると判断された場合、法に基づく行政代執行がおこなわれることになります。
「伊万里市空き家情報バンク」の仕組みとは?
次にご紹介するのは、空き家の有効活用と移住・定住の促進を目的として、伊万里市が運営する「伊万里市空き家情報バンク」です。
「伊万里市空き家情報バンク」では、空き家の所有者が物件の売却や賃貸を希望する場合、伊万里市と協定を締結した市内の宅建取引業者(協力事業者)を通じて、物件情報を登録することができます。
登録された物件は伊万里市のホームページに掲載され、空き家の購入や賃貸を希望する方が物件情報を閲覧することができる仕組みです。
「伊万里市空き家情報バンク」に掲載できる物件は、以下の通りです。
●市内の住居、店舗、事務所、倉庫などのうち、現在使用されておらず、かつ独立した住居(併用住宅は含まれるが、集合住宅やテナント物件、倒壊の恐れのある建物は除く)
●上記の建物の敷地、建物に付随する土地(農地、私道路、水路、雑種地など)
●建物解体後、1年以内の宅地
空き家の所有者が空き家物件を登録する場合は、まず、伊万里市役所内の都市政策課・住宅・空家対策係に相談した上で、希望する協力事業者に空き家情報バンクへの登録を申し込みます。
申し込みを受けた協力事業者は物件の現地調査を実施した上で、問題がないと判断すれば物件を空き家情報バンクに掲載します。
「伊万里市空き家情報バンク」では、協力事業者が空き家の利用希望者の見学対応、契約交渉、契約手続きを仲介することとなっており、伊万里市が物件の売買や賃貸借についての交渉および契約に関わることはありません。
このため、空き家バンクを閲覧して気になる物件を見つけた場合は、当該物件を担当する協力事業者とコンタクトをとることになります。
協力業者は宅建取引業者ですので、物件の取引の際には、宅地建物取引業法の規定に基づく仲介手数料が発生します。
また、農地付き空き家の取引の際には、農業委員会に農地指定申出や農地権利取得申請をおこなう必要があります。
伊万里市への移住希望者の方必見!「令和3年度 空き家改修移住奨励金」とは?
最後に、伊万里市の空き家対策として「令和3年度 空き家改修移住奨励金」をご紹介しましょう。
こちらの制度もまた、空き家の有効活用と伊万里市への移住・定住促進を目的としており、5年以上の定住を目的に市内に転入した世帯に対して、契約前に移住相談を受けた場合、空き家改修費の一部が助成されます。
奨励金を受けるためには、転入・申請の時期や年齢、納税義務を果たしているかなど、市が掲げる全ての要件を満たしている必要があります。
奨励金交付の対象となる住宅は、「伊万里市空き家情報バンク」に登録された一戸建て専用住宅および併用住宅のうち、令和3年4月1日から令和4年3月31日までに交付対象者名義で登記手続きが完了したものとなります。
また、対象となる工事は、伊万里市に定住する目的で令和4年3月31日までに完了する改修工事のうち、居住用に購入した空き家住宅について、市内の業者または市内に営業所・支店がある業者がおこなうものに限られます。
申請者本人や申請世帯員が所属する業者が工事をおこなった場合、交付の対象外となります。
対象となる工事内容としては、台所・浴室・便所・洗面所などの改修、内装や外装の改修、給排水設備改修、不要物の撤去やハウスクリーニングにかかる費用などが含まれています。
ただし、増改築や耐震工事、エコリフォーム、外構工事にかかる経費は対象外です。
奨励金の金額は50万円を上限として、住宅・併用住宅の居住部分の改修工事にかかる費用の1/2となります。
申請期間は令和3年4月1日から令和4年2月25日まで、着工前に申請し、令和4年3月31日までに工事完了の上、実績報告書の提出が求められます。
この記事も読まれています|三重県津市に移住したい!津市への移住で空き家に使える補助金をご紹介