「外部不経済」という言葉を聞いたことはありますか?
おそらく多くの方にとって聞きなれない言葉でしょう。
「外部不経済」は、空き家問題に大きく関わる言葉であり、みなさんにも影響を及ぼす可能性があります。
とくに、現在空き家を所有している方は知っておいたほうが良いでしょう。
そこで今回は外部不経済とは何か、それが空き家とどう関係しているのかについてご紹介します。
空き家問題に関わる外部不経済とは?
外部不経済とは、主に経済学で使われる専門用語の一つで、市場でおこなわれている経済活動とは別の場所で何らかの不利益が発生し、個人や法人に悪影響を与えることを言います。
たとえば、分かりやすい例を挙げると「公害」があります。
大気汚染や光化学スモッグなどの公害は、地球環境を壊し人体や動物・植物に悪い影響を及ぼしますよね。
場合によっては生態系のバランスを崩し、動物や植物は種族の絶滅危機に陥ることもあるでしょう。
放置された空き家も同様に外部不経済をもたらし、近隣地域の住環境を悪化させ、多大な迷惑をかけてしまうことがあります。
住環境の悪化で転居する方が増えると過疎化が進み、その地域の経済が回らなくなってしまう可能性も。
国土交通省がまとめたデータでも、空き家によって外部不経済が起きていると回答した自治体は70%以上もありました。
参考資料|国土交通省 空き地・空き家等外部不経済対策について
空き家が原因で起きる外部不経済の例
では、実際に空き家が原因で起こりうる外部不経済には、どのような事例があるのでしょうか。
事例①風景や景観の悪化
放置された空き家は、庭の草木が伸び放題になっていたり、屋根や外壁が傷んだままになっていたりなど、荒れていることが多いです。
そのような荒れ果てた空き家が1軒でもあると、せっかくきれいに整備された街であっても、風景や景観が悪くなってしまいます。
事例②ゴミなどの不法投棄
荒れ果てた空き家は誰も寄り付かないため、ゴミを不法投棄されてしまうことがあります。
「勝手にゴミを捨ててもバレない」「ほかの人も捨てているから」と、不法投棄がどんどんエスカレートする恐れがあるため、不法投棄をされないようにするための対策が必要です。
事例③悪臭の発生
ゴミが不法投棄されたり、動物が棲み付いてしまったりなどで悪臭が発生する場合もあります。
悪臭が発生すると嗅いだ方の気分が悪くなるなど、周囲に健康被害を及ぼしトラブルに発展する可能性があります。
なお、全く手入れがされていない廃屋や廃墟・空き地では、上記の外部不経済の事例以外にも防災や防犯機能の低下が問題視されています。
外部不経済が起こるような空き家があるのはなぜ?
そもそも、なぜ外部不経済が起こるような空き家があるのでしょうか?
空き家の放置が発生する理由としては以下の3つが挙げられます。
●所有者が亡くなり、相続人自体や相続人の所在が不明である
●病気で入院してそのまま放置される
●高齢のため介護施設へ入所し管理不全となる
また、親から実家を相続した子どもが遠方に住んでいて、なかなか出向けずに管理不全となっているケースも少なくありません。
そのほか、住宅地として開発されるはずの土地が何らかの事情で計画がストップして放置されたり、空き家を解体したけどその後はとくに利用しなかったりするといったケースがあります。
そのような事態を受けて、空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)が施行されてからは、複数の自治体で行政代執行によって空き家を処分する動きが出てきています。
とはいえ、すべての空き家に対して所有者確認をおこない、管理について指導をしたり、強制的に処分したりすることはとても大変です。
時間も費用もかかりますし、何より対応できる職員の数にも限界があるので、「管理不全の空き家を減らしたくてもなかなか進められない」のが現実でしょう。
このようにさまざまな要因が複雑に絡み合って空き家が増えてしまい、結果的に外部不経済が起きてしまうのです。
関連記事|放置していると危険!増え続ける空き家が引き起こす問題と解決方法
空き家が原因の外部不経済を防ぐ方法
前述のとおり、空き家を放置すると重大な外部不経済を起こしてしまいます。
そこで外部不経済を防ぐには、空き家の管理不全をなくすことが大切です。
近年は、さまざまな事情で自主管理が難しくなった空き家を、所有者に代わって管理してくれる会社が増えています。
依頼する場合の金額や業務内容などは会社によって違いますが、外からの目視管理、郵便物やポスティングされたチラシの回収などは、多くの会社で実施しています。
雪の多い地域なら、冬は家屋の倒壊を防ぐために屋根の雪降ろしもお願いすることができますよ。
委託を受けた管理会社は定期的に巡回するため、わざわざ空き家の管理のためだけに遠方から出向く手間も省けます。
料金はかかりますが、適切な管理がされた空き家は外部不経済を起こす可能性が低くなり、近隣地域へ迷惑をかける恐れも小さくなります。
空き家の管理に悩んでいる方は、ぜひ検討してみてください。