空き家対策で市区町村が国から受けられる財政措置とは?

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最新の空き家に関する統計である「平成30年度住宅・土地統計調査」によれば、2018年時点の日本の空き家数は849万戸、空き家率は13.6%と過去最高を記録しています。

このように、年々深刻化する空き家問題を受けて、平成27年に施行されたのが「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家特措法)です。


空家特措法は、空き家対策として空き家対策計画の策定や情報収集、利活用に向けた対策の実施に加え、財政・税制上の措置をとることを定めています。

そこで今回の記事では、全国の市区町村が空き家対策を講じるにあたって受けることのできる財政上の措置について、空家特措法の概要にも触れながらご解説いたします。

01空家特措法が定める市区町村の空き家対策に対する財政措置とは

自治体の空き家対策に対して取られる財政・税制上の措置の詳細をご紹介するにあたって、まずはこれらの措置について定めている「空家等対策の推進に関する特別措置法」についてご解説しましょう。

「空き家特措法」は、国が平成26年に公布し、平成27年より施行された空き家対策のための法案です。
施行の背景には、空き家の増加が全国的に深刻化し、管理不全の空き家が周辺地域の住民の生活環境に悪影響を与えるケースが増加したことが挙げられます。

ここで「住宅・土地統計調査」の統計から近年の全国の空き家数、空き家率の推移について触れておきましょう。
2018年の空き家数は849万戸、空き家率は13.6%であることはすでにお伝えしましたが、その20年前である1998年の空き家数は576万戸でした。

つまり、全国の空き家の数は、この20年間でおよそ1.5倍にまで増加したことになります。

さらに、賃貸や売却などの利用予定のない「その他の空き家」は1998年の統計では182万戸でしたが、2018年には349万戸と、20年間でおよそ1.9倍の増加となっています。


「その他の空き家」は、賃貸や売却などの用途が定まっていないため放置されやすく、管理不全となる傾向にあると言われており、管理不全の空き家が増えれば周辺地域に悪影響を及ぼします。
日本全国の空き家の総数が増加していることに加え、「その他の空き家」が急増していることも「空き家特措法」が制定される一因となりました。

このような背景から生まれた「空き家特措法」ですが、「空家等」を「建築物とそれに属する人工物のうち、使われていないことが状態であるもの」およびその敷地と定義しています。
このうち、保安・衛生・景観・防犯などの面で周辺地域に悪影響を及ぼす可能性があると判断されるものは「特定空き家」として行政措置や罰則の対象となります。

「空き家特措法」が定めているのは、これらの「空家等」の増加とそれが引き起こす問題に対処するための施策です。
基本的な施策としては、以下のものがあります。


指針および計画の策定

国が空き家対策の基本指針を定め、市区町村はこれに則って対策計画を策定、協議会を創設する。
この際、都道府県は市区町村への助言や連絡調整などの補助的な役割を果たす。


空き家等に関する情報収集

市区町村長は、法律の定める範囲に基づいて、空家等に関する立ち入り調査を実施したり、空き家の所有者を特定するための個人情報を閲覧したりすることができる。
また、市区町村は空家等について、データベースを作成する。


空き家等の利活用

市区町村は空家等についての情報の提供をはじめとして、空家等の利活用に必要と思われる対策を実施する。


財政・税制上の措置

市区町村による空き家対策の促進のため、国や地方公共団体は費用補助や地方交付税制度の拡充、必要と思われる税制上の措置を実施する。


特定空家等への措置

「特定空家等」について、市区町村は行政措置を実施することができる。
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02市区町村の様々な空き家対策に使える財政措置

ここまで「空家特措法」と基本的施策についてご紹介し、その施策に「財政・税制上の措置」が含まれることを確認しました。
ここからは「空家特措法」に基づいて実施されている「財政上の措置」について、さらに具体的にご紹介いたします。

「空家特措法」では、地域住民の生活環境を守るために、市区町村が主体となって空き家対策計画の策定をはじめとした空き家対策を実施していくことを定めています。

このため、地方自治体は空き家に関する情報収集、データベースの作成、相談窓口の設置や空き家の利活用・除去の推進などの対策をおこなっていかなくてはなりません。

「空家特措法」が定めるところの「財政措置」の一つである「空き家対策総合支援事業」は、空家特措法に基づいて空き家対策を実施する市区町村の財政支援をおこなう取り組みです。
こちらの事業の期間は、当初平成28年度から令和2年度までの予定でしたが、令和3年度には令和7年度まで延長されることが決定され、予算も1.29倍となる45億円に拡充されました。

補助対象となるのは、空家等対策計画を策定し、民間事業者との連携のために協議会を創設するなど、空家特措法に基づく対策を実施している市区町村です。
こちらの財政措置の対象となるのは、空き家の除去、空き家の活用、空き家の実態把握、空き家の所有者特定のための調査費用およびこれらに関連する事業です。

例えば、空き家の所有者を特定するためにかかった通信費や委託費用、特定空き家を除去するための費用、空き家を公共施設に活用するためにかかる費用などに対して、財政措置が適用されます。

さらに、令和3年度には、まだ特定空き家ではないが、特定空き家となる可能性の高い空き家の除去費用に対する支援もこれらの事業内容に加わっています。
令和3年度より、予算や補助対象事業の拡充などで新たな見直しが図られた「空き家対策総合支援事業」ですが、その効果が期待されています。
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03過疎集落の空き家対策に対する財政措置

そのほかにも、「空家特措法」に基づいた財政措置としては、市町村がおこなう「定住促進空き家活用事業」に対する財政支援があります。

「定住促進空き家活用事業」とは、市区町村による空き家の借り上げ制度で、空き家の状態に応じて改修を施した上で、その地域への定住希望者への賃貸物件とするものです。
「定住促進空き家活用事業」に対する財政措置では、国が過疎に悩む市区町村を対象に、「定住促進空き家活用事業」にかかる費用の一部を助成します。

補助の実施期間は原則として1か年度以内、空き家の改修費用の1/2以内を、1戸あたり400万円を上限として補助します。
また、財政措置の対象となるためには、以下の要件を満たしている必要があります。

●集落内の空き家を住宅整備に有効活用すること
●空き家が3戸以上の空き家を整備すること
●公営住宅や特定優良賃貸住宅の供給の促進に関する法律に基づき、国の補助を受けた住宅、市区町村が住宅として提供している住宅など、公的な住宅でないこと

この財政措置を活用した場合、市区町村は空き家の整備費用の50%をこの財源からまかない、それ以外の費用を集落再編整備のための過疎債や一般財源からまかなうことになります。


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04まとめ

「空家等対策の推進に関する特別措置法」では、市区町村がそれぞれの地域の空き家対策の主体とされています。

同時に、「空家特措法」は国が市区町村に対して、空き家対策を実施する上で必要な財政措置をとることも定めています。
これに則って、国は「空き家対策総合支援事業」や「定住促進空き家活用事業」に対する経済的支援など、様々な財政措置を講じているのです。


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