全国で空き家の管理が問題となっています。
自治体から管理不全空き家や特定空き家などに指定されると維持管理にコストと手間が発生します。
これまでは、指定を避けるために空き家を相続放棄しても、管理責任は免除されないケースがありました。
今般、民法が改正され、現に占有していない(一緒に住んでいないなど)親族は、相続放棄すれば空き家を管理する責任がなくなりました。
例えば、親族が相続放棄をした結果、亡くなった人の兄弟姉妹が空き家を管理を迫られるようなことがなくなったのです。
本記事では、令和5年4月の民法改正の中身を解説します。
現に占有している人が管理責任を免れる方法や、相続放棄できなかった場合の対応も説明するので、最後までお読みください。
01相続放棄とは
まず、相続には次の3種類があります。単純承認 | ・相続人が被相続人(亡くなった人)のプラスの財産もマイナスの財産も無条件で引き継ぐこと ・特に手続きを行わなければ、単純承認となる点に注意 |
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限定承認 | ・相続人が相続したプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産の債務を引き継ぐこと ・被相続人の債務がどの程度かわからない場合に多い |
相続放棄 | 相続人が被相続人の財産や債務を全て放棄する(相続しない)こと |
限定承認と相続放棄は、相続が開始したことを知ってから3か月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に手続きを行い、認められると効力が発生します。
もし相続財産の中に不要な空き家があることが分かったら、相続人全員が相続放棄をして誰も引き継がない場合もあるでしょう。
この際でも預貯金のみを相続して、空き家だけを放棄することはできないので注意が必要です。
万が一実行してしまった場合は、相続放棄が無効となります。
02相続放棄した空き家の管理責任は
これまでの民法では相続人全員が相続放棄しても、空き家が処分されるまでは親族に管理責任が残ると解釈される場合がありました。改正前の民法第940条第1項では曖昧な点が多く、空き家が倒壊するなど周辺住民に迷惑をかける場合は、相続放棄をしていても適切な管理が求められるような例があったのです。
しかし、令和5年4月の民法改正では相続放棄後の管理責任を負うのは「現に占有している者のみ」と明確化されました。
現に占有しているとは、亡くなった所有者と一緒に住んでいた場合と考えると分かりやすいです。
永年離れて暮らしていた場合は現に占有していたとは言えません。
ただし、改正後の民法によると、現に占有していた者は相続放棄をしたとしても、一定の条件を満たさなければ管理する責任を免れない(解除されない)とも明記されました。
参考:
こん・さいとう司法書士事務所 【司法書士監修】相続放棄をした者の責任は令和5年度から変わる?
Youtube 荒井法律事務所 相続放棄しても責任があるの!?相続放棄後の管理義務 教えて!!荒井先生
03空き家の管理責任を免れる条件とは
相続時に一緒に住んでいなかった場合は管理責任はありませんが、一緒に住んでいた親族が相続放棄をしても、一定の条件を満たさなければ空き家の管理責任があることを前述しました。管理責任を免れる条件は、次のいずれかを満たす必要があります。
1.他の相続人に相続してもらう
2.相続財産清算人に引き渡す
1.他の相続人に相続してもらう
相続放棄した者が空き家の相続時に一緒に住んでいたとしても、次の相続人が見つかれば管理責任を免れます。ただし、その相続人も後日相続放棄をしてしまい他に相続人が見つからない状態となった場合、一緒に住んでいた人は管理責任を免れることはできないので注意しましょう。
2.相続財産清算人に引き渡す
相続人全員が相続放棄を行った結果、空き家を引き継ぐ人が見つからない場合は、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらい空き家を引き渡せば管理責任は解除されます。ただし、相続財産清算人の選任には費用がかかります。
相続財産清算人が遺産の清算を進めるため、必要な経費や報酬として数十万円程度の予納金が必要です。
相続したくない財産の処分のために予納金を負担することは、大きな負担と感じる人もいるでしょう。
負担を避けるために清算人を選任しない場合には、管理義務がいつまでも続くことになります。
04もし空き家を相続してしまったら
空き家の管理を避けるために相続放棄という方法があることを述べました。しかし、事情により相続放棄せず空き家を相続してしまう場合もあるかもしれません。
この場合、相続財産を処分するには次のような方法が考えられます。
1.売却
2.活用
3.解体して更地に
4.自治体へ寄附
5.隣地と交渉
6.相続土地国庫帰属制度の活用
1.売却
空き家の状態が良く買い手が見つかる状態であれば、売却するのもよいでしょう。管理責任も免れるので、コストと手間が省けます。
自分で活用する予定がない場合には売却がおすすめです。
2.活用
空き家に資産価値があり、活用できる場合はリフォームなどを施して賃貸するのもよいでしょう。売却と異なり、一時的ではない継続的な収益が見込めるでしょう。
3.解体して更地に
空き家に資産価値がなければ、更地にして近隣に迷惑をかけない状態にするか、更地の上に建物を立てるなどして活用する方法があります。4.自治体へ寄附
空き家の活用方法が見つからなければ、自治体に寄付を打診する選択肢も考えられます。ただし、自治体も資産価値のない物件の寄附は受けないことが予想されるので、必ずしも寄附できるとは限らないので注意が必要です。
5.隣地と交渉
空き家が隣地と接している場合には、隣地の所有者に買取を交渉する手もあります。売却側は不要な空き家と宅地を売却できるだけでなく、隣地側にとっても土地の面積が広くなるメリットがあります。
打診してみて損はないでしょう。
6.相続土地国庫帰属制度の活用
相続土地国庫帰属制度を活用すれば、相続で手に入れた不要な土地を国に寄附できる場合があります。建物が建っている場合は更地にしたり、借地権など権利関係が複雑な物件は寄附できなかったりと種々の条件はありますが、どうしても手放したい場合には検討してみる価値はあります。
ただし、申請すれば必ず寄附できる制度ではなく、負担金もかかるので金銭的負担がある点は留意しましょう。
参考:
相続会議 4. 相続放棄した人が、保存義務から免れる方法
相続会議 5. 相続財産清算人の選任方法
05まとめ
民法が改正されて、現に占有していない(一緒に住んでいないなど)親族は、相続放棄をすれば空き家を管理する責任がなくなりました。これまで相続放棄をしても管理責任が残るのではないかと不安を感じていた人には朗報です。
一方、一緒に住んでいた人は、他に相続してくれる人が見つかるか、相続財産清算人が選任されるまでは管理責任はなくなりません。
相続放棄しようとする空き家を他の誰かが相続しようとする確率は低く、相続財産清算人を選任する際に予納金に100万円かかる場合があるので、管理責任から逃れるのは容易でないかもしれません。
田舎に実家がある人は、相続放棄だけでは無く、やむを得ず相続する場合も含めて対策を考えておく必要があるでしょう。
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