空き家管理が煩わしいと考えている人のなかには、今後特に誰かが居住する可能性も低いため、いっそ解体して更地にしてしまおうかということを検討する所有者も多いです。
空き家を更地にすると、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
お金の面や税制面、少し意外な視点も加味して考えてみましょう。
01更地にするには解体費用がかかる
まずお金の面です、更地にするには解体費用がかかります。解体業者に依頼する費用や、解体の結果生じた家屋の残骸を処理する費用も必要です。
多くの場合、解体業者が一括で見積を作成してくれます。
解体をして新たな建物を建てる場合は解体工程も必須ですが、特段何も建てない場合、解体を急ぐ必要はあるのでしょうか。
結論としては、よほど建物(上物)を維持するうえでリスクがない限りは、解体を急ぐ必要はありません。
解体費用をかけて、その上で更地状況が続くことになるためです。
ただ、解体費用を回避して現状維持の選択肢を選んだときも、ある法律に留意しなければなりません。

02治安や衛生上の問題があるなら空き家を更地にするべき
空き屋を維持することで治安や衛生上の問題があれば、早期に解体して更地化をすべきでしょう。空き家のなかには刑法犯の根城になったり、害虫が発生したりして衛生上の問題が生じる物件があります。
特に所有者の居住地から遠い場合は定期的な清掃なども難しいため、解体を進める必要が生じます。
周辺住民から指摘をされるほどの外観上の問題がある場合かどうかを見極めましょう。
ここで重要になるのは、空家等対策の推進に関する「特別措置法(空家対策特措法)」です。
同法では治安面および衛生面から問題ある空き家を「特定空き家」と定め、助言・管理の対象としています。
空き家を所有しているのは所有者の権利なので、通常国や自治体が介入してくることはありません。
ただ、治安・衛生的な問題がある場合は私的所有権を超えて介入するのが、この法律の趣旨です。
定められた助言に従わない場合の最終手段として、国や自治体に行政代執行の権利も付与されています。
行政代執行とは、国や自治体が建物を解体してしまう権利のことです。
当然所有者の同意は必要ありません。
また、この場合の解体費用は所有者が事後負担となります。
自治体の交渉の労力を考えると、解体して更地にしてしまえば空き家特措法の対象から外れることができます。
法律制定後、空き家特措法による助言・指導は19,029件、行政代執行は260件です。
決して脅しだけではないことがわかります。

03更地にすることで固定資産税の軽減税率の対象外に
一方、更地にすることでのデメリットもあります。最大の点は、更地にすることで固定資産税と都市計画税の軽減税率の対象から外れてしまうことです。
過去日本では空き地を無くすため、建物を立てた土地には固定資産税で1/6、都市計画税で1/3を軽減しています。
更地にすることは建物を解体しますので、この対象から外れます。
これまで所有者のなかには、これらの軽減税率の対象外になるのを避けるため、敢えて築年数の古い建物を解体しない所有者も目立ちました。
空き家対策特措法制定の最大の原因として問題視されました。
先の空き家対策特措法では、特定空き家に指定された際にこれらの固定資産税・都市計画税の軽減税率の対象から外れることが定められました。
くだけた言い方をすると「建物を残しておいても、解体してもどちらも変わらないよ」という国からのメッセージです。
税金面からの考慮をせず、その建物が必要あるのか、それとも不要なのかを判断し、維持か解体かを選んでいきましょう。

04更地にすると起こること
さて、更地にすることで、税金面のほかに変化は考えられるのでしょうか。解体して更地にしても自分の所有地であることは変わりません。
眼に見える事象としては、営業が増えます。
不動産の世界にはハウスメーカーや建築会社などが街中を歩き回って建築用物件を探しています。
更地は「格好の獲物」となり、所有者には連日訪問や電話が寄せられます。
個人情報が最重要視される昨今になっても変わりません。
なお、行政役所には住宅地図という土地の地番を記載した地図が置かれており、そこから不動産登記を調べ、突撃訪問してくるのです。
更地の規模にもよりますが、これらの業者応対はとても面倒なものです。
厄介なのは一度業者を返しても、同社の別の営業担当などが繰り返し訪れてくることです。
前時代的な営業方法のため、遠からず無くなっていくとは考えられますが、あらかじめ認識しておきましょう。
空き家を解体し、更地にすることで生じるメリットとデメリットをお伝えしました。
税金の問題は特に重要ですので、家計や不動産事業の負担がどれくらい変わるのかを落とし込んだうえで、更地にするか否かを可否を考えていくようにしましょう。
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