空き家を持ち続けていると、人が住んでいる家屋と同様に固定資産税を払わなければなりません。
住宅用宅地には税負担を軽減する特例があります。
この特例は家屋に人が住んでいるか否かによって変わりません。
しかし、全国的に問題になっている特定空き家に認定されると固定資産税が約6倍に跳ね上がる事態もありえます。
本記事では、空き家にかかる固定資産税の仕組みと特例について解説します。
また、特定空き家に認定されて税負担が増えないための対策についても解説しますので、参考にしてください。
01空き家にかかる固定資産税と特例
空き家にも固定資産税が課税されますが、敷地である土地の部分には軽減の特例があります。これは家屋が空き家であるか否かを問わない特例です。
ここでは、固定資産税の仕組みと住宅用地の軽減特例について解説します。
固定資産税の仕組み
固定資産税とは、法人と個人の区別なく、毎年1月1日時点で土地や家屋・償却資産を所有している人にかかる税金です。原則としてすべての土地や家屋などが対象となります。
また、固定資産税とセットで課税される税金に都市計画税があります。
これは都市計画法によって定められた市街化区域内にある土地や家屋が課税対象となる税金です。
ただし、市街化区域内に土地や家屋がなければ、都市計画税はかかりません。
固定資産税額を算出する計算式は次のとおりです。
固定資産(土地・家屋・償却資産)の評価額 → 課税標準額 × 税率 = 税額
固定資産税は、評価額を調整等した課税標準額に、税率(自治体によって異なる場合あり)を乗じて算出されます。
計算式中の用語の意味は次のとおりです。
評価額 | 総務大臣が定めた基準に基づいて 市町村長が3年に1回行う評価 |
---|---|
課税標準額 | 評価額に負担を調整したり 特例を適用したもの |
税率 | 固定資産税 標準税率1.4%(基本的な税率) 都市計画税 制限税率0.3%(上限となる税率) |
住宅用地の特例
固定資産税で住宅用地の税負担を軽減する特例があります。課税標準額を算出する場合の特例は次のとおりです。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|
小規模住宅用地 (200㎡以下の部分) |
評価額の1/6 | 評価額の1/3 |
一般住宅用地 (200㎡を超える部分) |
評価額の1/3 | 評価額の2/3 |
たとえば面積が250㎡で評価額が1800万円の宅地の場合、固定資産税と都市計画税は次のように計算されます。
200㎡以下の部分
固定資産税:1,800万円×200/300㎡×1/6×1.4%=200万円×1.4%=2万8千円都市計画税:1,800万円×200/300㎡×1/3×0.3%=400万円×0.3%=1万2千円
200㎡を超える部分
固定資産税:1,800万円×50/300㎡×1/3×1.4%=100万円×1.4%=1万4千円都市計画税:1,800万円×50/300㎡×2/3×0.3%=200万円×0.3%=6千円
合計 2万8千円+1万2千円+1万4千円+6千円=6万円

02特定空き家は固定資産税が約6倍になるので注意
特定空き家に認定されると、前述したような住宅用地の軽減特例が受けられず、固定資産税が約6倍になる恐れがあります。管理の行き届かない空き家は、近隣の住民に迷惑をかけるだけではなく家屋の崩壊や放火のリスクもあります。
このため、政府は平成27年5月に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を施行し、特定空き家を認定するなどの対策を強化しています。
「特定空き家」とは
次のように管理が不十分な状態にある空き家は、「特定空き家」として認定される場合があります。1.倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある
2.アスベストが飛散したりごみによって異臭が発生したりするなど、著しく衛生上有害となるおそれがある
3.適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている
4.立木の枝が隣家に超えてきたり、空き家に棲みついた動物のふん尿などが原因で周辺の生活環境を乱している
特定空き家に認定されると固定資産税は約6倍
自治体が空き家の調査を行い特定空き家に認定されると、固定資産税が約6倍になる恐れがあります。法律に基づく勧告を受けた特定空き家の敷地や、管理されておらず今後居住する見込みがない空き家の敷地には、住宅用地の特例が適用されないからです。
空き家を取り壊しても負担が増えてしまう
危険な空き家を取り壊すと、単なる宅地となってしまい住宅用地の軽減特例が受けられません。また、取り壊すには解体費用もかかるため、空き家を放置してしまうという問題が発生しています。
しかし、取り壊せず放置した結果、特定空き家に認定されると更地と同様に固定資産税の負担が増えてしまいます。

03空き家で税負担を増やさないために
空き家を管理していないと固定資産税の負担が増えてしまうので、次のような対策が必要です。・空き家について自治体に相談する
・空き家バンクに登録する
・空き家をリフォームする
・空き家の保守や片付けをして管理をする
・空き家の管理や活用のサービスを利用する
・空き家を解体して活用する
空き家の管理はなかなか行き届かないものです。
特定空き家に認定されて税負担が重くのしかからないように、早めの対策を行いましょう。
