中世の風情漂う歴史的な建築物が有名で、観光地として人気があるドイツですが、空き家事情も気になるところでしょう。
ドイツも日本と同様に少子高齢化による人口減少が問題視されている先進国の一つです。
そのため、空き家対策にも力を入れており、斬新なアイデアで空き家を利活用した事例もあります。
そこで今回は、ドイツの空き家事情と対策、画期的な活用事例をご紹介します。
ぜひ、参考にご覧ください。
ドイツの空き家事情とは?日本と比較!
ヨーロッパにおける政治・経済的な主要国であり、文化や科学技術が発達しているドイツは、移住先としても人気の国です。
そんなドイツの空き家事情は、日本と比べてどう違うのでしょうか。
日本とドイツでは、主に空き家の発生要因と住宅事情が異なります。
ドイツの空き家の発生要因とは?
日本では、少子高齢化や新築志向が強いことが空き家が発生する要因として挙げられます。
また、不動産登記が任意であることから、所有者の土地や建物に対する管理意識が弱い点が放置空き家の発生要因となっています。
前述のとおり、人口減少が空き家の発生要因として日本とドイツで共通しています。
ドイツの2015年時点の総人口に占める65歳以上の者の割合(高齢化率)は21.1%と、日本の26.6%に次いで世界2位の高齢化率となっています。
出典:内閣府 高齢化の状況
そのため、人口減少を補うための移民政策が取られています。
反対に異なる点は、新築住宅供給量や不動産登記義務です。
ドイツは日本よりも新築住宅の供給量が少なく、不動産登記が義務付けられています。
新築住宅の供給量が少ない分、中古住宅の需要があるため、日本よりも空き家率は少し低い値となっています。
ドイツの住宅事情とは?
ドイツの住宅事情について、主に日本と異なる点は以下の3つです。
●賃貸住宅に住む方が多い
●築古物件が多い
●中古住宅のリフォームが活発
総務省の2018年の住宅・土地統計調査によると、日本の持ち家率は61%です。
それに対してドイツの住宅は、賃貸住宅率が51%で持ち家率が44%と、持ち家より賃貸住宅の割合のほうが多い傾向にあります。(出典:センサス2011)
また、日本では1980年以前に建てられた住宅は4分の1ほどと、築年数の古い住宅はさほど多くありません。
対してドイツでは、築年数が古い物件が多く、1978年以前に建てられた住宅が7割にも及びます。
そのため、ドイツでは中古住宅のリフォームが活発で住宅の寿命も長いです。
一方で、築年数の古い住宅ほど空き家となっていることが多く、地域によっても空き家率に偏りがあります。
ドイツを東西に分けると、東側のほうの空き家率が高い傾向にあります。
ドイツの空き家対策とは?日本との違い
ドイツの空き家事情がわかったところで、具体的にどのような空き家対策をおこなっているのでしょうか。
ドイツの特徴的な空き家対策は、下記の3つです。
対策①所有者への管理義務
日本では、基本的に空き家所有者に対しては適切な管理を呼び掛けることがほとんどで、特定空き家に指定されない限りは強制的に管理を命じることはありません。
一方でドイツでは、建設法典により空き家所有者に対して傷んだ空き家の修繕や改修を義務付ける規定があります。
そして、空き家の修繕や改修をしても欠陥や不具合が残る場合は、空き家の解体・除去命令が下されることもあります。
ただし、空き家を解体・除去することによって所有者に不利益が生じた場合は、市町村からの補償があります。
また、解体・除去命令によって所有者が更地となった土地の維持がむずかしい場合は、市町村への買取を請求することもできます。
対策②利用不全の規制
ドイツでは、州ごとに法律で住宅の利用に対する規制があります。
適切に利用されていない住宅に対して規制がかかるほか、土地の売買についても市町村が先に買える権利があります。
ドイツではこのような規制をすることで、住宅の不正利用や供給不足、放置される空き家を事前に防いでいるのです。
対策③空き家活用で地域の価値向上
日本でも空き家対策として空き家再生の取り組みはおこなっていますが、ドイツの場合は空き家の再生だけでなく、空き家を活用した地域の再生まで取り組んでいます。
たとえば、空き家や空き地が多い地域を特定エリアに指定し、古い建物の撤去や修繕だけではなく、近代的な建物を新たに建築したり公共施設を設けたりして環境の整備までおこないます。
空き家対策だけでなく、空き家が多いエリアの住環境の整備までおこなうことで地域の魅力を高め、地域活性化に取り組んでいるのです。
このように、空き家対策とセットで都市計画までおこなうのは、空き家所有者としても嬉しいところでしょう。
ドイツの空き家を活用した画期的な事例とは?
では実際に、ドイツではどのように空き家を利活用しているのでしょうか。
画期的な取り組み事例をご紹介します。
使用者を募って空き家を保全
ドイツのザクセン州にあるライプツィヒは、画期的な空き家再生をして地域活性化に成功した世界的にも有名な都市です。
旧東ドイツに位置するライプツィヒは、第二次世界大戦後に産業が衰退し、人口減少により空き家が増加しました。
そこで、空き家問題を解決するために立ち上がったのが市民団体「ハウスハルテン」です。
ハウスハルテンは、空き家仲介団体として使われていない空き家を所有者と交渉して預かり、利用者に原則家賃無料で提供しています。
利用者は家賃無料で家を借りる代わりに、空き家の最低限の維持・管理に努めます。
そうすることで、空き家所有者と利用者の双方にメリットがあるだけでなく、放置空き家の増加問題に歯止めをかけることに成功しました。
セルフリノベーションをサポート
ハウスハルテンは、借主に空き家を家賃無料で提供するだけでなく、セルフリノベーションのサポートもおこなっています。
借主は、自由に居住空間をセルフリノベーションすることができ、ハウスハルテンはリノベーションの際に必要な工具を無償で借主に貸し出しています。
このような画期的な仕組みが注目を集め、ハウスハルテンが提供する空き家は「安価な家賃で自由な空間を作れる」と若手のアーティストや起業家が集まる場所となりました。
地域活性化に貢献
ライプツィヒでは、単に空き家を住宅として再生するだけでなく、コミュニティスペースやアートギャラリー、デザイン工房など、さまざまな施設に再生しました。
そのことによって、若年層や新進気鋭のアーティストが集まる街となり、人口が増加し、空き家再生が地域の活性化にもつながりました。
そして、ライプツィヒの空き家再生事例はドイツ国内でも話題となり、そのほかの都市でもハウスハルテンが立ち上がって同様の取り組みが広がっています。
ちなみに日本でも、広島県尾道空き家再生プロジェクトがライプツィヒと同様の取り組みをおこなっています。
このように、空き家所有者と利用者の双方にメリットがあり、かつ地域活性化につながる取り組みが日本全国にも広がってほしいですね。
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まとめ
今回は、ドイツの空き家事情と対策、画期的な活用事例をご紹介いたしました。
ドイツは、日本同様に少子高齢化による人口減少によって空き家が増えています。
しかし日本と異なり、空き家所有者への管理義務や利用不全の規制が厳しいため、効果的に空き家対策がおこなわれています。
そして、ドイツのライプツィヒでは、空き家を家賃無料で提供する代わりに、借主に維持・管理をおこなってもらうことで、放置される空き家を減らしています。
ぜひ、この記事を参考に空き家の利活用をご検討ください。
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