近年は、空き家バンクによって空き家の売買も増えましたが、一方で空き家を売りたくないという所有者もいらっしゃいます。
空き家は管理に手間がかかり、固定資産税などの維持費もかかるのに、なぜ売らないのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は、空き家を売らない理由と所有し続けることのリスク、空き家の維持費用について解説いたします。
ぜひ、参考までに最後までご覧ください。
空き家を売らない理由とは?
現在、空き家の増加問題にともなって「空き家を利活用して社会に貢献したい」との理念を掲げて事業を展開する企業や個人事業主が増えています。
そのため、立地の良い場所にある空き家は人気も高いのですが、所有している方によっては、売ることをためらう場合もあります。
空き家を売らない理由は主に以下の3つです。
理由①物置として利用するため
総務省の2019年度の住宅・土地統計調査によると、空き家を売らない理由としてもっとも多かった回答が「物置として必要だから」です。
所有物が多い家庭ではトランクルームの代わりに空き家を物置にするのは便利でしょう。
また、相続した空き家に残置物が残っている場合は「撤去が面倒だからそのままにしている」という方も多いです。
理由②解体費用がかかるから
前述の同調査において、2つ目に多い理由としては「解体費用がかかるから」です。
古いぼろぼろの空き家を売るとなると、多くの場合は更地にしてから売ることをすすめられます。
そして、空き家によっては、売却代金よりも解体費用のほうが高くつき、赤字になる場合もあります。
また「更地にしても使い道がない」との声もあります。
理由③相続でもめている
相続人の間で遺産分割協議が難航して所有者が決まらないことが、売らない理由になっているケースもあります。
とくに、老朽化した空き家はだれも相続したがらないため、相続放棄されて所有者不在のまま放置されるケースもよく見られます。
また、複数の相続人が空き家を所有することになった場合、相続人全員の同意がないと売ることができないため、空き家状態が長期化する可能性もあります。
空き家を売らないとどうなる?売れ残るリスクとは
空き家を売らない理由は、前章でご紹介した以外にもさまざまな理由があるかと思いますが、空き家を所有し続けたらどうなるのでしょうか?
実は、空き家はすぐに売らないと今後売れなくなる可能性があります。
その理由は以下のとおりです。
人口が減少している
日本は現在「超高齢社会」と言われるほど、少子高齢化が進んでいます。
総務省が発表した2021年9月15日時点の推計人口によると、総人口は前年に比べ51万人減少している一方で、65歳以上の高齢者は22万人増加しています。
このまま少子高齢化が進めば、2015年時点で約1億2,000万人いる人口が、2050年には1億人まで減少すると言われています。
人口が減少すると、住宅需要も下がるため、空き家も売れなくなるでしょう。
空き家の増加
2018年の総務省の「住宅・土地統計調査」によると、空き家率は全住宅のうち13.6%となっています。
そして、野村総合研究所の調査によると、2033年には空き家率は30.2%まで上昇すると予測されています。
人口が減少するうえに空き家が増えるとなると、需要と供給のバランスからみて、空き家が売りにくくなるでしょう。
また「農業の担い手がいない」ことによる、農地継承の問題もあります。
農業従事者が減ると、農地が宅地に転用されて多数売りに出されることが想定されます。
空き家だけでなく、土地も多数売りに出されるとなると不動産市場は供給過剰となり、さらに空き家を売りにくくなるでしょう。
不動産市場の変化
2022年現在、不動産価格はピークを、むかえていると言われています。
実際に、国土交通省が公表している2022年の地価公示の全国平均は、2年ぶりに上昇しています。
不動産価格の上昇には、以下の指数が関係します。
●取引件数
●株価
●金利
取引件数が増えれば、不動産価格が上昇し、取引件数が減れば下落します。
コロナ禍以降は、家にいる時間が長くなったことで引っ越したいと考える方が増え、取引件数が伸びました。
また、不動産価格は1年遅れで株価の推移と連動すると言われています。
実際に、株価が2021年に上昇したことによって、2022年に不動産価格も連動して上昇しています。
そして、金利が下がると住宅ローンを組みやすくなるため、不動産価格は上がります。
そして、2022年以降は、住宅ローン金利や物価の上昇による建築費の高騰から「家を買いたい」という住宅需要が下がることが予想されます。
住宅需要が下がれば取引件数も減り、空き家もますます売りにくくなるでしょう。
空き家を売らない場合の維持費用とは?売却費や解体費と比較
前述のとおり、空き家は所有していると税金や管理費などの維持費がかかるうえ、将来的に売りにくくなるリスクがあります。
それでも「売却するのにも費用がかかるから売らない」「解体費用が高いから売らない」と言う方もいらっしゃるでしょう。
では実際に、空き家を維持するためにかかる費用と、売却費用や解体費用はどちらのほうが高いのでしょうか。
空き家の維持費用
一般的に、空き家の維持費用は年間で数十万円はかかると言われています。
その内訳は以下のとおりです。
●固定資産税
●都市計画税
●管理費
固定資産税は市区町村によっても異なりますが、標準税率は1.4%です。
都市計画税は、市街化区域にある土地・建物に課される税金で、税率は市区町村によって異なりますが、一般的に0.3%です。
上記の税率を空き家の固定資産税評価額にかけて計算すると、年間数万円~数十万円の費用がかかるでしょう。
また管理費として、一般的に電気・水道などの光熱費や火災保険料がかかります。
目安として、光熱費は年間で3万円ほど、火災保険料は年間で12万円ほどかかります。
また、もし雨漏りなどの修繕が必要になった場合は、数百万円の修繕費用がかかることもあるため、空き家の維持にかかるコストは大きいでしょう。
空き家の売却費用
一般的に不動産を売却する際にかかる費用は、売却価格の4%~6%と言われています。
たとえば、空き家を500万円で売った場合、売却費用は20万円~30万円ほどとなるため、空き家の維持費用とさほど変わらない値段となるでしょう。
空き家の売却費用の主な内訳は以下のとおりです。
●仲介手数料
●税金
仲介手数料とは、売却したときに不動産会社に支払う手数料です。
仲介手数料は法律によって、上限が定められており、400万円以下は「18万円+消費税」400万円を超える場合は「売買代金×3%+6万円+消費税」となります。
その他の税金は、印紙税や譲渡所得税になります。
印紙税は売買契約をする際に発生する税金で、売買代金によりますが、およそ5,000円~1万円ほどです。
譲渡所得税は利益が出た場合に発生する税金で、税率は所有していた期間によって変わります。
空き家の解体費用
空き家の解体費用は大きさや建物構造によっても異なりますが、30坪の木造で75~180万円、鉄筋コンクリートで105~210万円ほどかかります。
そのため、空き家の年間維持費用より高くなります。
ただし、自治体によっては空き家の解体にかかる費用に対して、一部補助金が出るところもあります。
「空き家を解体したいけど、費用がかかるからそのままにしている」という方は、まずは自治体に相談することをおすすめします。
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まとめ
空き家を売らない理由でもっとも多かったのは「物置として使用しているから」です。
ただし、今後人口減少などの影響によって、いざ売ろうと思ったときに売れなくなる可能性もあります。
空き家に対してかかる維持費は年間数十万円ほどで、売却費用や解体費用と比較しても、所有し続けるにはデメリットが大きいといえるでしょう。
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