空き家が年々増加している今、空き家に関するトラブルが社会問題となっています。
空き家にまつわるトラブルは、管理不全によるご近所トラブルや、法的な権利関係に関するものなど多岐にわたります。
そのようなトラブルの一つに、空き家の境界線に関するトラブルがあります。
長期間にわたり人が住んでいない空き家では、隣地との境界の目印が何らかの理由でなくなっているのに、気付かない場合もあり、後のトラブルに発展してしまう可能性があります。
そこで今回の記事では、空き家と隣地との境界線を示す「境界杭」について、注意点やトラブル事例についても触れつつ、ご紹介していきます。
空き家の敷地の境界を示す境界杭とは?
はじめに、そもそも境界杭とはなにかについて、ご説明いたしましょう。
土地の境界線とは、一つの土地を周囲の土地と区別する境目の線のことを指します。
境界杭とは、土地の境界となる点や線を示すために、土地の角に埋め込まれた杭のことです。
ですから、境界杭同士を結んだ線が、その土地の境界を示す境界線ということになります。
境界杭の上部には、点・矢・十字などが記されており、その境界杭が境界線のどの部分にあたるのかわかるようになっています。
また、境界杭が示す境界線には以下の3種類があります。
隣地境界線
隣地境界線とは、土地の境界線のうち、隣地との境界を示す境界線のことを言います。
所有者の異なる土地が隣り合っている場合、その境界は塀や生け垣などで仕切られていることも多いため、見ただけでおおよその境界がわかるケースもあります。
しかし、これらの塀や生け垣は、正確な境界線とずれが生じている場合もありますので、正確な境界については境界杭や登記簿などで確認する必要があります。
道路境界線
隣地境界線とは隣接する土地との境界線ですが、一方の道路境界線とは、土地と公道との境界を示す線のことです。
道路境界線を示すために、その境界上には境界杭が埋め込まれており、そのような境界杭には道路の所有者である自治体の名前やマークなどが記されています。
ただし、道路との境界線でも、その道路が公道でなく、私道であったり、通行地役権のある土地であったりといった場合には、その境界線を道路境界線と呼ぶことはありません。
敷地境界線
敷地境界線は不動産の敷地の境界全体を示す線のことで、隣地境界線、道路境界線の双方を含みます。
空き家に境界杭がない!設置したほうがよいケースとは?
不動産が空き家や空き地である場合には、境界杭が見つからないこともあります。
これは、長期間人が住んでいないと、降雨や降雪などにより、杭が埋没、もしくはなくなってしまっても、気付かれないことがあるためです。
そのような場合、新たに境界杭を設置したほうがよいのでしょうか。
ここからは、空き家で境界杭が見つからない場合に、境界杭の設置が必要なケース・不要なケースについてご紹介いたします。
空き家をそのまま所有する場合
まず、空き家を維持・管理する、所有者自身が将来空き家に住む予定があるなどで、空き家をそのまま所有するのであれば、境界杭の設置は不要です。
ただし、必須ではないものの、様々なトラブルが起きた場合のことを考えると、境界杭は設置しておいた方が安心です。
長い間土地の測量をおこなっておらず、あらたに、境界杭を設置する場合には、土地家屋調査士に依頼することになるため、費用がかかる点には注意しましょう。
空き家を売却する場合
空き家を所有し続けるのであれば、境界杭の設置は必要ありませんが、空き家を手放す際には設置が必要です。
売却などで手放すのであれば、土地家屋調査士に実測を依頼し、確定した境界線に基づき、境界杭を設置した上で、売却活動をおこないましょう。
空き家の境界部分にブロックや塀などを設置したい場合
また、空き家を手放すわけでなくても、境界杭の設置が必要となるケースがあります。
隣地との境目にブロックや塀を設置したい場合がこれにあたります。
境界杭がなく、正確な境界線が不明のまま塀などを設置してしまい、後日、塀の設置場所が実は隣地の敷地内だったことが判明した、ということも起こり得ます。
そうなってしまうと、一度建てた塀を撤去した上で、再度実際の境界線に沿って塀を立て直すことになり、費用がかさんでしまいますし、隣人とのトラブルにも発展しかねません。
測量には費用がかかりますが、余計な費用負担を増やさないためにも、塀などを設置する際には、境界杭が設置されていることを確認し、見つからない場合には測量の上で、設置するようにしましょう。
空き家の境界線トラブルとは?トラブルの事例や境界杭の設置方法をご紹介
それでは、最後に境界確定をしていない場合に起こりうるトラブル事例や、境界杭を設置する手順をご紹介していきましょう。
空き家や空き地などを売却する際の取引方法には、「公簿取引」と「実測取引」があります。
公簿取引は登記簿上の記載を基とした不動産取引、実測取引は実際に土地を測量し、それに基づいた不動産取引を指します。
現在の不動産市場で一般的なのは実測取引であり、売り主側の責任で測量をおこない、その結果が記載された境界確認書を基に、不動産売買がおこなわれます。
古い不動産の場合、前回の取引が公簿取引によるもので、実測との誤差が生じているケースもあり、空き家や空き地を売却する際に、境界線に関するトラブルが発生することは決して珍しくないのです。
まず、境界確定していなかったことが原因で、よく起こるトラブルとして、隣地境界線にかかわるトラブルがあります。
相続した不動産が隣人の所有地に越境していた
その中でも、相続した空き家などの不動産が隣の敷地の境界をこえてしまっていた、というケースは珍しくありません。
これに気付かないまま、その不動産を売却してしまうと、民法第563条の定めるところにより、売り主は売却価格の減額を請求される可能性があります。
相続により取得した不動産によくみられるケースではありますが、いずれにしろ、不動産を売却する前には、きちんと境界確定しておくことが大切です。
工事の際に境界杭にズレが生じた
また、工事のために一時的にずらされた境界杭の位置が、戻されずにそのまま放置されているケースもあります。
境界杭があるからといって、必ず正しい位置に設置されているとは限りませんので、境界杭に加えて、測量図や登記簿も参照しながら、境界線を確認する必要があるのです。
自然災害で境界杭が紛失してしまった
さらに、洪水や土砂崩れにより境界杭が流出するなどして、なくなってしまう場合もあります。
また、隣地境界線だけでなく、道路境界線に関するトラブルもあります。
道路境界線は公道との境界であるため、きちんと管理されていると考えがちですが、測量をおこなってから時間が経っていると、当時の測量技術の問題もあって、境界線にズレが生じている場合があります。
このため、その土地が接しているのが公道だけであっても、特に売却などで空き家や空き地を手放す際には、測量することが望ましいのです。
最後に、業者に測量を依頼し、境界杭を設置する手順についても触れておきましょう。
境界確定の手順は以下の通りとなります。
●土地に関する資料調査(役所や法務局)
●資料を基にした現地調査
●打ち合わせ、隣接する土地所有者への挨拶
●測量作業(基準点測量、現況測量、境界測量)
●測量結果の分析
●自治体や隣地の所有者などの関係者への説明
●境界杭の設置
●境界確認書への署名・捺印
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まとめ
今回の記事では、空き家の境界線を示す「境界杭」について、トラブル事例や注意点を交えつつ、ご紹介いたしました。
土地の境界線は目に見えるものではないため、日頃意識しませんし、正確な境界線がわかりにくいかもしれません。
しかし、境界線の問題には法的な権利の問題が関わってくるため、放置しておくと思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。
空き家をご所有の方、特に手放すことをご検討中の方は、測量を依頼し、境界確定をおこなっておくことをおすすめします。
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