本州北部、青森県の中央に位置する青森市は、およそ28万人の人口を擁する県庁所在地です。
古くから本州と北海道を結ぶ中継地点として栄えた交易都市でもあります。
また、山や海に囲まれているため、春は桜、夏はねぶた祭、秋の紅葉、冬はウィンタースポーツに雪景色と様々なアクティヴィティや食材を楽しむことができます。
そのような歴史や文化、自然に恵まれた青森市ですが、全国の他の自治体と同様、高齢化や人口減少により空き家の増加が社会問題となっています。
今回の記事では青森市の空き家問題と空き家対策についてご紹介いたします。
青森市の空き家の実態は?空き家率・空き家数は減少しているが空き家予備軍が多い
全国的な空き家の増加とその放置が社会問題となり、平成26年、国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を制定しました。
この中で、各自治体における空き家対策の主体は市町村と定められ、市町村は空き家対策計画を策定した上で、それに則った施策を進めていくことが推奨されています。
これを受けて青森市も令和2年度から令和5年度を対象期間とした「青森市空家対策計画」を策定し、この計画に基づいて管理不全の空き家を解消し、安全かつ快適な市民生活を守るべく対策を進めていく方針です。
今回の記事では、「青森市空家対策計画」の内容を中心にお伝えしていきますが、市の空き家問題とその取り組みについてご紹介するにあたって、はじめに青森市の空き家の実態からご紹介していきましょう。
青森市の空き家問題の要因としては、全国の他の市区町村と同じく、人口減少や高齢化が進んだことにより、特に高齢者世帯を中心に核家族化が進んだことが挙げられます。
平成27年の調査では、65歳以上がいる高齢者世帯は青森市内に52,267世帯で全体のおよそ4割、このうち構成員が高齢者のみの世帯は24,518世帯にも及びます。
高齢者のみの世帯が多いことから、施設や病院への入所・入院や、死亡による相続などでさらに空き家が増えていくことが懸念されており、経済・健康上の理由で十分に管理されない空き家が増えていくことも予測されています。
総務省が実施した「平成30年度住宅・土地統計調査」では、青森市内の総住宅数は135,090戸、このうち空き家の数は19,700戸で、空き家率は14.6%となっています。
空き家全体の数を見ますと空き家率は青森県の平均より低く、また平成25年度におこなわれた前回調査と比較して、空き家数、空き家率ともに減少しています。
ただし、現状で管理不全となっている空き家は空き家全体の2割から4割程度ありますし、解体予定や賃貸や売買などの用途が定まらない空き家は全体の2割から3割程度と、管理不全の空き家や将来的に管理不全に陥る可能性が高い空き家は依然として多く、油断を許さない状況です。
青森市の空き家対策についてご紹介!その基本的方針とは
青森市はこのような市内の空き家の現状を踏まえ、「青森市空家対策計画」で空き家問題についての課題と市の空き家対策の基本的方針についてまとめています。
ここからは、「青森市空家対策計画」で示された空き家対策を推進する上での課題について見ていきましょう。
空き家の所有者の意識
このうち、空き家の所有者への意識調査から浮かび上がった課題として、所有者の空き家に対する問題意識が希薄である点が挙げられます。
このことから、市はその全域が豪雪地帯と定められていることも踏まえ、所有者に対し、空き家についての問題意識や物件の管理についての意識を高める必要があるとしています。
空き家の利活用
また、空き家の数を減らしていく、またはこれ以上増やさないためには、空き家の利活用を促していくことが欠かせません。
青森市では除去もしくは利活用の予定が定まらない空き家が、空き家全体の2割から3割ほど存在することもあり、空き家・空き地バンクや移住・定住促進政策などを通した空き家の利活用の促進も課題の一つです。
空き家の管理
さらに、様々な調査結果から、空き家の所有者には高齢者が多く、相続により家を所有したものの、自らは遠方に居住しているケースなども少なくないことがわかっています。
この観点から、体力・経済力や地理的な理由で自力での空き家管理が難しい方を中心に、空き家の管理をサポートしていく体制づくりも課題となっています。
管理不全の空き家対策
また、青森市内で管理不全となっている空き家は空き家全体の2割から4割にも及びます。
豪雪地帯でもある青森市で、こうした空き家を放置することは近隣住民の生活を脅かすことにもなりますので、管理不全の空き家の状況を改善・解消するための取り組みも必要とされています。
空き家に関する情報提供
そして、これらの課題を解消していくためには、空き家の管理や利活用、相続など、空き家に関する様々な情報を市民に提供していくことが求められるため、情報提供の仕組みづくりや相談窓口の設置も課題となっています。
青森市の空き家対策についてご紹介!具体的施策とは?
これらの課題を踏まえ、「青森市空家対策計画」では市の空き家対策の基本方針と具体的な施策を設定しています。
最後に、青森市の空き家対策における5つの基本方針と、それぞれの方針に対応した具体的施策についてご紹介いたします。
空き家の発生の予防および抑制
青森市は空き家を減らしていくためには、現在すでに空き家となっている物件への対策と同様、空き家の発生を防ぐことが欠かせないとして、空き家の発生予防・抑制に向けた取り組みを実施する方針です。
具体的な施策としては、市民全体の空き家に関する意識を高め、情報を提供するため、空き家に関する広報の充実、空き家関連講座の開催、相続に関する相談体制の強化、パンフレットなどを通じた空き家の発生を予防するための情報提供が挙げられます。
空き家の利活用の推進
市は市民や各種団体などと連携しつつ、空き家の利活用を通じて地域の活性化を図っていく方針です。
この方針に関する施策には、空き家の所有者へのパンフレット配布などによる空き家・空き地バンクの利用促進に加え、商店街の空き店舗を活用する事業者へのサポートや、空きビル・空き店舗のリノベーションによる再生支援などがあります。
税制面に関する情報提供にも力を入れており、空き家解体後の跡地についての固定資産税減免措置、空き家の譲渡所得の3000万円特別控除などについての広報を充実させていく方針です。
空き家の適正管理の推進
「空家等対策の推進に関する特別措置法」でも触れられている通り、適切に管理されていない空き家は、周辺地域の生活環境に悪影響を及ぼします。
空き家の管理についての責任は所有者が負うことになるため、青森市は空き家の所有者を主な対象として啓発活動や管理促進のための対策を実施し、管理不全の空き家解消に努めています。
具体的には、所有者への空き家管理についてのパンフレット送付、空き家関連講座の開講、住民から管理不全の空き家について通報を受けた場合の管理依頼文書の送付、民間の空き家管理業者を紹介するパンフレット送付などの施策があります。
特定空き家に対する措置
また、すでに適切な管理がなされていない空き家が近隣に悪影響を及ぼしているケースでは、青森市が「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づいて、その空き家を「特定空き家」として、法的な措置を検討・実施することになります。
こうしたケースでは、近隣住民の安全を守るために特に緊急に対応する必要があると認められた場合には、市が最低限の安全措置を講じます。
その上で、「空家等対策の推進に関する特別措置法」のガイドラインに則って、調査・検討を重ね、特定空き家と判断されれば、助言・指導、勧告、命令、行政代執行などの措置が取られることになります。
空き家に関する相談体制の構築
空き家についての相談内容は、管理や利活用に関するものから、相続、危険な状態と思われる空き家についての市民からの通報など、様々な分野に及びます。
このため、青森市は相談窓口を住宅まちづくり課としつつ、市の関連部署、青森県や各種関係団体と連携しての相談体制の構築をおこなっています。
たとえば、住宅まちづくり課は空き家に関する総合窓口として機能していますが、必要に応じて、固定資産税に関する相談は資産税課、移住・定住に関する相談は企画調整課などと情報共有し、庁内で連携して対応していく方針です。
さらに、庁内での対応が難しい案件については、青森県や不動産関連団体、弁護士会、司法書士会などの業界団体とも連携して、より適切な対応ができるような体制づくりを目指しています。
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まとめ
今回は、「青森市空家対策計画」の内容を中心に青森市の空き家問題と空き家対策についてお伝えいたしました。
青森市では、空き家数・空き家率ともに減少傾向にあるものの、空き家の所有者に高齢者が多く、解体や利活用の用途が定まらない空き家も多いことから、管理不全の空き家が増加していくことが懸念されます。
こうした状況を受けて、令和2年から令和5年にかけて実施される「青森市空家対策計画」では、空き家所有者に対する啓発活動や情報提供、県や様々な専門家団体と連携した相談体制の充実に取り組んでいくことが示されています。
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