新型コロナウイルスは2020年に世界的な大流行を引き起こし、2021年を迎えてもいまだ収束を迎える兆しが見えていません。
このような状況下で、これまで主流とされてきたオフィスに通勤する働き方が見直され、リモートワークやテレワークなどと呼ばれる、新たな働き方が社会に浸透しつつあります。
これに伴い注目を集めているのが、利活用の方法を見出すことが急務とされてきた空き家(特に地方の空き家)をオフィスとして活用する方法です。
今回の記事では、オフィスとしての空き家活用のあり方について、活用事例と共にご紹介いたします。
コロナ流行が生み出した新たな空き家の利用方法とは?サテライトオフィスってなに?
新型コロナウイルスの流行により、新たな働き方が求められているいま、空き家をオフィスとして活用することへのニーズが高まっています。
はじめに、空き家をオフィスとして活用する意義についてご解説していきましょう。
このような傾向の背景としてあるのが、年々深刻化する空き家問題です。
国内の住宅や土地の現状に関する統計調査として、総務省統計局が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」があります。
最新の調査である「平成30年住宅・土地統計調査」では、国内の空き家数は約849万戸、空き家率は13.6%と、日本の空き家は増加を続けているとの結果が出ており、さらに増加していくとの予測も発表されています。
空き家の増加に対する予防策として2015年に施行されたのが「空き家対策特別措置法」で、管理不全により周辺地域に害を及ぼすと判断される空き家を「特定空き家」として行政措置をとることが可能になりました。
「空き家対策特別措置法」には管理不全の空き家に対して法的に罰則などを設けることで、空き家の発生を制限するという意図があります。
一方で、より積極的に空き家の発生に歯止めをかけるためには、空き家の利活用の方法を模索していくことも欠かせません。
コロナ禍以前から地方自治体や民間企業により、空き家バンクやサブリースによる賃貸転用など、様々な空き家の活用方法が提案されてきました。
たとえば、株式会社ジェクトワンによる「アキサポ」も空き家活用に向けたサービスの一つです。
「アキサポ」では、借り受けた空き家を「アキサポ」の費用負担でリフォームし、住居やオフィス、ガレージなど物件にあった形態でサブリースをおこないます。
このように様々な空き家活用法が提案される中、2020年の新型コロナウイルス流行により注目を集めたのが、「サテライトオフィス」としての空き家の活用です。
国は新型コロナウイルス感染予防対策として、いわゆる3密を避けるための「新しい生活様式」の推進を奨励しています。
これに応じて企業が導入したのが、各社員がオフィスに通勤せず、自宅などでインターネットなどを通じてコミュニケーションをとりながら勤務する「リモートワーク」や「テレワーク」といった働き方です。
「サテライトオフィス」とは、「リモートワーク」や「テレワーク」が推奨される中で自宅での勤務が困難な社員が業務に利用できる、自社オフィスとしての機能を持つ場所を指します。
コロナ禍で通勤時やオフィス内での3密を回避するために導入された「リモートワーク」や「テレワーク」ですが、利便性や生産性の面でも様々な利点があるとの認識が広まりつつあります。
企業としては、都市部の中心地にオフィスを構えるための費用や維持費の節約になりますし、働く側も通勤にかかる手間や時間が省ける上、職場へのアクセスを気にせずに居住地を選ぶことができるわけです。
そのため、コロナ流行の収束後も「リモートワーク」や「テレワーク」といった働き方が主流になっていくことが予想されており、費用を抑えながら実現できる「サテライトオフィス」の獲得・整備に乗り出す企業も増えてきています。
このような需要の変化から、家賃などの費用を抑えつつ、働く側の要望にも合致しやすい地方や郊外の空き家が「サテライトオフィス」として注目を集めているのです。
新型コロナウイルスの流行により働き方についての価値観が変容したことで、新たな空き家の活用方法が生まれたと言ってよいでしょう。
空き家をサテライトオフィスとして活用するメリット・デメリットとは?
次に、企業が空き家をサテライトオフィスとして活用する際のメリットや注意すべき点をご紹介しましょう。
まず、空き家をサテライトオフィスとするメリットとして挙げられるのが、経費を抑えやすいという点です。
たとえば、従来の都心部のオフィスビルに事務所を構えて、社員全員がそこに通勤するという形態では、家賃も高くつきますし、従業員の通勤交通費も負担する必要があります。
空き家をサテライトオフィスとすれば、これらの経費を削減することができるでしょう。
また、空き家をサテライトオフィスとしてリモート勤務に切り替えた場合、業務効率が向上し、従業員数を抑えつつ、取引を拡大することも期待できます。
営業職を例にとりますと、自宅から職場、職場から取引先といった移動時間を節約し、その分を事務職と兼任することや、国内の遠方や海外との取引も可能になり、人件費を抑えつつ、販路開拓ができるかもしれません。
このような、企業側の効率や生産性向上に加え、社員にとっても通勤先が都心のオフィス街でなく、郊外や地方の空き家をオフィスであることはメリットとなります。
自宅近くのサテライトオフィスに勤務することができれば、通勤にかかる負担が軽減され、仕事とプライベートの両立を図りやすくなるのです。
一方で、空き家をサテライトオフィスとする場合には、注意すべき点もあります。
まず、空き家を利活用する場合には、築年数が古く、修繕や改修が必要となる場合も多くあります。
特に、オフィスとして建物を利用する場合には安全性が重要となりますので、十分な耐震・耐久性を確保しておく必要があります。
空き家をサテライトオフィスとする際には、修繕やリノベーションにかかる費用をあらかじめ見積もっておくとよいでしょう。
また、サテライトオフィスとする空き家の立地が従業員の自宅から離れていれば、通勤に手間や時間がかかり、利便性を欠いてしまうケースも考えられます。
そのような事態に陥らないためにも、サテライトオフィスとなる物件の立地を十分に配慮することをおすすめします。
さらに、生産性や利便性の面で利点の多いサテライトオフィス勤務ですが、従業員同士のコミュニケーションが減少することで、会社への帰属意識が低下する可能性もあり、仕事へのモチベーションや責任感が欠如してしまうことも考えられます。
そのような事態を回避するため、社員の意識を高めるためのレクリエーションなどの方法を考えておく必要があるでしょう。
サテライトオフィスを活用する企業の事例や自治体の支援策をご紹介!
最後に、サテライトオフィスを活用する企業や、自治体の誘致助成の事例をご紹介しましょう。
サテライトオフィス勤務は、新型コロナウイルス流行以前から、富士通やリクルートホールディングスなど一部のIT系企業を中心に実施されてきました。
そして、コロナ禍をきっかけとして、サテライトオフィスを拡大したり、新たに導入したりといった動きはさらに活発になりつつあります。
たとえば、東芝はサテライトオフィスを倍増させるべく整備を進めていますし、サッポロビール株式会社や、株式会社LIXILなどのIT系でない企業もサテライトオフィス導入を検討・実施しています。
また、株式会社LIFULLは「LivingAnywhere Commons」として、空き物件となったアパートやホテルをオフィス機能を備えた宿泊施設へと再生する事業を展開しています。
これらの民間企業によるサテライトオフィスや空き家を利用したリモートワークの動きに加え、このような流れを後押しする地方自治体や政府の取り組みも始まっています。
富山県上市町では、町内の空き家を対象として補助金制度を創設し、東京のIT企業の誘致支援を実施しました。
また、総務省が実施する「お試しサテライトオフィス」事業では、サテライトオフィスの誘致に取り組む地方公共団体に対し、企業とのマッチング支援や、誘致に関する経費についての特別交付税措置を講じるなどして支援しています。
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まとめ
2020年に始まったコロナ禍は社会・経済的に多くの危機的状況を引き起こした一方で、コロナ収束後も利便性・生産性の向上が期待できる「リモートワーク」や「テレワーク」などの働き方が広く受け入れられるきっかけともなりました。
そして、「リモートワーク」や「テレワーク」の浸透は、「サテライトオフィス」としての空き家の新たな需要を生み出しており、政府や地方自治体はこの動きを後押しすべく、様々な支援策を打ち出しています。
コロナ禍という危機的状況から生まれた新たな空き家の活用方法に期待が集まっています。
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