住民票に登録された住所は原則的に自宅の所在地となりますが、例外的に実際の住居と住民票に登録された住所とに相違があるケースがあります。
行政はそのような事例の存在を念頭に置き、空き家関連の調査をおこなう際、住民票を居住の事実の根拠として扱うことには慎重な姿勢をとっています。
今回の記事ではそのようなケースについて取り上げ、空き家と住民票の関係についてご解説いたします。
01住民票は住民と住宅の居住関係の証明にならない?空き家と住民票の関係
はじめに、住民票や空き家とは何かについて触れながら、なぜ住民票が住民と住宅の居住関係を判断する際の根拠とならないのかについてご説明しましょう。住民票とは、国内の市区町村が住民基本台帳法に基づき、住民について記録する公簿を指し、住民についての居住関係をはじめとした個人情報が個人単位や世帯単位でまとめられています。
そのため、様々な手続きや申請の際には、役所の窓口で発行された住民票の写しが住所をはじめとした個人の居住関係の公的な証明として用いられます。
通常、実際に住んでいる場所と住民票に登録された住所、および身分証明書や公共料金支払い明細などに記載される住所は一致しています。
転居により居住地の変更があった場合には、14日以内に異動届を提出しなくてはなりません。
ただし、例外として就学や単身赴任による引っ越し、病院への入院、老人ホームへの入所など一時的に居住地が変わる場合には、異動届を提出しないことが認められており、住民票に記載された住所と実際の居住地が異なるケースもあります。
しかし、住民票の住所と実際の居住地に相違があると、選挙や公的身分証の更新、税金申告など、自治体を通した各種申告や手続きにおいて、不都合が生じる場合もあります。
このような事情から、行政が住宅に居住者がいるか判断する際、あるいは住民の実際の居住地を調査する際には、住民票に記載された住所はそれほど重視されません。
人の出入りやライフラインの使用の有無、公共料金支払いの実態や郵便物などをもとに調査がおこなわれます。
空き家の定義については空家等対策特別措置法に定められており、1年以上居住や使用がない家のことを指しますが、この場合も住民票ではなく、実際の居住の有無を調査します。
総務省による住宅・土地統計調査では、2016年4月から2017年9月にかけて72の自治体がおこなった空き家の所有者の特定方法を調査しています。
こちらの調査では、対象となった1万1,500戸の空き家のうち、所有者が判明したのは95%、調査のために参照された情報は23,000件にも上ります。
参照された情報は固定資産税が1万件、登記と戸籍が5,000件ずつ、住民票3,200件となっており、住民票の比重の低さがうかがえます。
このように、住民票は原則的には住民の実際の居住地を反映していますが、例外も存在するため、行政は空き家の調査などで住宅と住民の居住関係を明らかにしたい場合、その根拠として住民票をさほど重視しないのです。
02空き家と住民票の関係って?空き家に係わる譲渡所得の3000万円特別控除とは
ここからは、空き家関連の調査で住民票が実際の居住の証明とならない例として、空き家に係わる譲渡所得の3000万円特別控除についてご紹介いたしましょう。まずは、制度の概要について見ていきましょう。
国内の空き家は年々増加する傾向にあり、現在全国の空き家数は848万9千戸にも上ります。
空き家は放置しておくと空き家そのものやその所有者だけでなく、周辺地域にまで様々な悪影響を及ぼすため、国は放置空き家を減らし、空き家の活用を促進するための対策作りに乗り出しています。
そうした対策の一つに、空き家に係わる譲渡所得の3000万円特別控除があります。
譲渡所得の3000万円特別控除とは、元来、被相続人が相続により取得した自宅を売却した場合に認められていた譲渡税の控除制度です。
空き家の活用促進を目的として、この制度が空き家の売却時にも適用されるようになったのが、空き家に係わる譲渡所得の3000万円特別控除です。
この制度の導入により、空き家を3,000万円で売却した場合には、譲渡税の課税が免除されるようになりました。
これらの控除制度を適用せずに、戸建て物件を3,000万円で売却した場合の譲渡税について計算してみましょう。
譲渡税は譲渡所得の20%となりますので、譲渡税を算出する前に譲渡所得を計算します。
譲渡所得の計算式は以下の通りになります。
譲渡所得額=売却価格-(取得費+譲渡費用)
物件を買い取った際の価格が不明の場合、取得費は売却価格の5%として計算しますのでこの場合は取得費150万円、さらに仲介手数料や登記費用などの譲渡費用に100万円かかったと仮定すると、以下のような計算式となります。
売却価格3,000万円-(取得費150万円+譲渡費用100万円)=譲渡所得2,750万円
譲渡所得2,750万円×20%=譲渡税550万円
このように通常であれば、3000万円の戸建て物件を上記の条件で売却すれば、譲渡税が550万円かかることになります。
一方、自宅や空き家を3,000万円で売却する場合には譲渡所得2,750万円から特別控除額の3,000万円が差し引かれ、譲渡所得がマイナスとなるため譲渡税は非課税となります。
03住民票よりも生活の本拠地が重要!空き家に係わる譲渡所得の3000万円特別控除
このように、空き家に係わる譲渡所得の3000万円特別控除とは、空き家を3,000万円で売却した場合には、譲渡税の課税が免除される制度です。ただし、この制度の適用を受けるには様々な要件があります。
まず、この特例の対象となる物件の売却期限は、相続時点より3年経過した年の年末までと定められています。
また、相続税を支払って相続した不動産の売却時に適用される取得費加算の特例を利用する際には、譲渡所得の3000万円特別控除は適用されません。
そして対象物件の条件としては、昭和56年5月以前に建てられた家屋であり、かつ現在の耐震基準に適合することや、相続が発生した時点から売却に至るまで空き家であったこと、また売却する際の価格が1億円以下であることなどが挙げられます。
さらに、耐震基準に適合しない家屋については、売却前に撤去または改修工事を施すことが求められます。
こうした要件の一つとして挙げられるのが、被相続人が対象となる空き家に相続直前まで居住し、生活の本拠としていたことです。
ここで注目すべきは、対象物件となるのは生活の本拠であったものに限るとされている点です。
つまり、空き家が制度の対象となるかの判断基準は、生活の本拠地がどこであったかということであって、住民票で登録された住所は制度適用の根拠とはならないわけです。
たとえば、被相続人が老人ホームに入所している場合、住民票に空き家の住所が自宅として記載されていても、生活の本拠は老人ホームですので制度の対象外となってしまいます。
ただし、相続時に被相続人が要介護認定されているなどの事情があれば、生活の本拠が相続した空き家でなくても制度の適用が受けられる例外が認められています。
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04まとめ
このように、行政手続きや様々な申請をおこなう際、住民票に記載された住所が実際の住所として認められるとは限りません。今回ご紹介した空き家に関する調査や空き家に係わる譲渡所得の3000万円特別控除でも、住民票よりも生活の本拠地がどこであるかが重視され、人の出入りやライフラインの使用の有無、公共料金支払いの実態や郵便物などによって判断されます。
空き家に関する申請をおこなう際には注意しましょう。
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