建物は日常的に使われていなければ急速に老朽化が進むため、空き家を活用しなければ、管理費用や税金がかかってしまいます。
しかし、空き家を家賃など定期的に一定の収入を見込める収益物件として運用すれば、日常的に使ってもらえるために老朽化を防げる上、安定した利益を得ることが可能です。
ただし、安定した収益を確保するためには空き家の条件に合った活用方法や、そのリスクを知った上で事業計画を練ることが大切です。
そこで今回の記事では、空き家を収益物件として運用する方法について、収益物件の種類やメリットおよびデメリットについてご紹介いたします。
空き家を収益物件とする際の運用形態は?①人気の民泊・シェアハウス・借主負担DIY型
収益物件とは定期的に一定の収入を見込める不動産のことを指し、空き家を収益物件として運用する場合にも民泊やシェアハウス、居住用賃貸物件など様々な形態があります。
収益物件として空き家を運用していく上で考えなくてはならないのは、安定した利益を生み出すためにはどのような形態がその空き家の条件に合っているかという点です。
たとえば、観光客が少ない地域で宿泊施設を経営しても安定的な利益は見込めませんし、空き店舗の多いエリアでは店舗用賃貸物件の需要は少ないでしょう。
そこで空き家を収益物件として運用する上での選択肢として、収益物件にはどのような種類があるのかを知っておく必要があります。
まずは、近年人気の民泊やシェアハウス、借主負担DIY型といった活用方法からご紹介していきましょう。
空き家を活用した収益物件の中でも近年注目を集めているのがAirbnbなどの民泊です。
民泊とは観光客などが一時的に滞在するための宿泊施設の一種で、その宿泊費が主な利益となります。
かつては旅館業法により宿泊施設として運営できるのはホテルや旅館などに限られていました。
しかし、2018年の民泊新法の制定により、年間180日間の稼働日数を上限として一般の住居を宿泊施設として営業する民泊事業が可能になったのです。
空き家が古民家と呼べるような日本家屋で、外国人観光客の多い地域にある場合には、特に需要が見込めるでしょう。
また、シェアハウスも近年注目が集まっている活用方法です。
シェアハウスは一つの物件に複数の入居者を受け入れ、個室は各自のプライベートな空間に、台所や風呂などは共用とする住居用賃貸物件です。
1つの物件を複数人でシェアするため家賃を相場より安く設定しやすく、学生などの需要を見込めます。
さらに入居者が見つかれば複数人から家賃収入があるため、1軒貸しよりも多くの家賃収入が得られる可能性もあります。
もちろん、住居用物件として1軒貸しするのも選択肢の一つです。
立地などの条件がよく、あまり老朽化していない物件であれば、大規模なリノベーションをせずに借り手が見つかるかもしれません。
ある程度のリノベーションが必要な空き家であれば、借主負担DIY型物件として貸し出すのも選択肢の一つです。
借主負担DIY型物件では、従来の物件のように貸し主が修繕をおこなうのではなく、借り主に住みながら物件の修繕をしてもらいます。
貸し主は手間や費用をかけずに物件を修繕してもらえますし、借り主は原状回復義務がない上に、貸し主との相談は必要ですが住居を自分好みに修繕できます。
空き家を収益物件とする際の運用形態は?② 店舗やトランクルームにも!
空き家の活用方法の中でも近年人気が高まっているものをご紹介してきましたが、ここからはそれ以外の活用方法にも目を向けてみましょう。
立地条件が向いていれば、飲食店や事務所などの店舗用物件として貸し出すこともできます。
個人向けの住居用賃貸よりも家賃滞納のリスクが低いことがメリットとして挙げられます。
立地条件が事業内容に向いていて、原状回復義務を課さずに店舗や事務所向けのリノベーションが可能である場合は店舗用物件として活用するのもよいかもしれません。
また、空き家を収納スペース用賃貸物件であるトランクルームとして活用することもできます。
倉庫業の経営には国土交通省の許可が必要ですが、個人向けの小規模なトランクルームは建築基準法と都市計画法の基準を満たしていれば問題ありません。
さらに、住居用賃貸のように借家借地法による制限がないため、日当たりや面積などの条件が経営や需要に影響しにくく、狭い建物でも仕切りや物置などで個々のスペースを作れば、事業を始めることができます。
人口が過密な都市部であればレンタル収納スペースの需要が高いため、都市部に面積や日当たりの問題で住居用に向かない空き家の活用方法として向いています。
また、地方の古民家であれば、地方移住希望者向けのお試し移住用住宅としても活用できます。
移住希望者が本格的に移住する前に、現地での生活を体験するために短期間滞在するための住居となります。
入居者が希望すれば、そのまま長期の賃貸契約を結んだり、買い取ってもらったりといったケースもあるようです。
空き家をお試し移住用住宅として活用したい場合は、空き家のある自治体の役所などに問い合わせることになります。
空き家を収益物件として運用する際のメリット・デメリットとは?
最後に、空き家を収益物件として運営する際のメリットやデメリットについてご紹介いたしましょう。
まずメリットとして挙げられるのは、事業が軌道に乗れば定期的・継続的な収益が見込めるという点です。
特に住居用や店舗用の賃貸物件やトランクルームの賃料収入は、一旦契約を結べば契約期間内は毎月家賃収入が見込めるため、安定していると言えるでしょう。
また、将来空き家に住む可能性がある場合などに、空き家を手元に残しておけるのもメリットの一つです。
ただし、賃貸物件では正当な理由なく入居者をさせることはできませんので、一定期間のみの賃貸契約としたい場合には、限定的な期間のみの契約とする定期借家契約を結ぶことになります。
次に空き家を収益物件として運営するデメリットについて見ていきましょう。
まず事業計画を立てる際に注意しなくてはならないのは、空き家の状態や事業内容などにもよりますが、初期費用として設備投資する必要がある点でしょう。
基本的に老朽化した設備を修繕し、内装を綺麗にする程度のリフォームは必要な場合が多く、これに加えてシェアハウスや民泊、トランクルームとして活用する際にはそれぞれの用途に応じた改修工事をしなくてはなりません。
ただし、借主負担DIY型物件や店舗用賃貸物件の一部など、原状回復義務を課さない代わりに貸し主側が修繕しなくてもよいケースもあります。
また空き家を収益物件として運用するには、物件の管理や税金の申告など、事業を維持していくための費用や手間がかかります。
特に、賃貸物件の所有者は、居住者の生活を維持するために物件修繕する義務を負っているため、台風などの災害の際に思わぬ修繕を余儀なくされる場合があります。
また、空室が生じると収入が得られず、初期費用が回収できない事態となりかねません。
事業計画を立てる時点で、その事業形態の収益性やニーズをしっかりと見極め、収益の見込める資金計画を練っておきましょう。
さらに、賃貸物件の経営では入居者や近隣住民とのトラブルにも注意する必要があります。
起こりうるトラブルには家賃滞納など金銭の問題や、騒音などが挙げられます。
借家借地法といった契約関係の法律に関する知識や、起こりうるトラブルに関する情報を習得し、入居の際には物件の規則を入居者に明確に提示しておくとよいでしょう。