日本では空き家の増加が社会問題となっていますが、海外の空き家事情はどうなっているのでしょうか。
ヨーロッパでは空き家率が高い国でも5%以下、それより空き家率の高いアメリカでも10%程度であるのに比べ、日本の空き家率は13,6%と日本の空き家率は世界的に見ても高い数値となっています。
そこで今回の記事では、日本と海外の空き家に対する考え方の違いに触れながら、海外の空き家事情や空き家の活用方法をご紹介いたします。
日本の空き家事情は海外とどう違う?新築住宅が好まれる傾向が顕著
はじめに、日本での空き家の現状や空き家が増加し続ける理由について見ていきましょう。
総務省統計局により5年ごとにおこなわれる「住宅・土地統計調査」によれば、2018年の日本の空き家数は846万戸、空き家率は13.6%となっています。
この結果を見ると前回調査に比べ、空き家数は179万戸、空き家率は3%増加したことになります。
富士通総研による海外の空き家率調査ではイギリスでは3~4%、ドイツでは1%程度、アメリカでも10%程度との結果が出ています。
日本ではなぜこれほどまでに、空き家が増え続けるのでしょうか。
その理由の一つに、少子高齢化により高齢者世代の持ち家が余る状態になったことが挙げられます。
現時点では、高齢者世代の9割近くが持ち家を保有している上、その被相続人となる子世代の6割以上が親の持ち家とは別の、自分の持ち家にすでに居住しているのです。
これは子ども世代が結婚したとすると、夫婦1組につき相続予定の持ち家が2つある状態です。
さらに孫世代が1人であれば、両親および祖父母の持ち家を合わせて1人で5戸もの持ち家を相続することになります。
子世代や孫世代が複数いる場合、持ち家率はこれより低くなりますが、少子化と都市部への人口集中という現代日本の社会的背景を考慮すると、地方にある祖父母世代の持ち家は空き家となってしまうケースが多いと考えられます。
少子高齢化に次ぐ大きな理由は、古い住宅を長く使う習慣が衰退してしまったことが挙げられます。
歴史的な流れを見てみますと、高度経済成長期の住宅建設において質より量を重視する風潮が強まりました。
このため、この時期に建設された住宅の多くは長期使用に耐えうるものではなく、この先使っていくためには大規模な改修工事が必要な状態となっています。
そのような工事には莫大な費用がかかるため、改修工事を経て居住を続けるよりは、売却・処分といった手段を選ぶ方が多いのが現状です。
さらに、空き家の増加が問題視されるようになって中古市場に注目が集まりつつあるとはいえ、日本ではいまだ新築物件を好む傾向が強いと言わざるを得ません。
そのため、地域によっては不動産価格の高騰が続いており、人気エリアでの開発と投資がおこなわれているのです。
このように日本では古い住宅を長く使い続けるよりは、新築物件が好まれる風潮が根強く、中古市場が成熟しない要因ともなっているのです。
海外の空き家事情は?新築より中古物件の流通が活発
日本で空き家が増加し続ける理由の一つに中古市場が未成熟であることを指摘しましたが、ここに海外の不動産市場との大きな違いがあり、この違いが日本と海外の空き家率の差にも反映されています。
そこで、ここからは海外で空き家がどのように扱われているかをご紹介していきましょう。
これに際してまず知っておきたいのが、土地や家屋などの不動産に対する認識の違いです。
日本ではこれらの不動産は個人に属する所有物という認識が強い一方で、海外では不動産は国民の共有財産と認識される傾向にあります。
そのため万一所有者がいなくなった場合、海外では国有となるか、不動産会社が買い取って流通市場へと算入されますが、日本では個人の所有物として簡単に手を付けるわけにいかないため、放置されるという結果になりがちです。
そして、物件の所有者がいる場合、海外では実際の借り手がいなくとも、売却または賃貸用の物件として常に市場に出回る状態が維持されるようになっています。
この流れを後押しするのが国の政策で、売却用として不動産会社などに長期間保有され、買い手がつかない不動産には一定額の税金が課されることになります。
こうした政策があれば、価格などが要因で買い手がつかない物件でも買い手のニーズに適合するよう調整され、結果として不動産市場における物件の停滞を回避し、活発な中古市場が維持されているのです。
より具体的に海外の中古住宅の流通について見てみますと、海外の住宅売買において中古住宅が占める割合は70~90%とも言われており、住宅取引の中心となっていると言っても過言ではありません。
一方、日本の中古住宅取引が占める割合は20%以下に留まっています。
この差の一端を担っていると思われるのが、住宅の耐用年数の差です。
海外の住宅の平均耐用年数はイギリスではおよそ75年、アメリカではおよそ44年であるのに比べ、すでに述べたとおり日本の住宅の平均耐用年数は短く、30年程度となっています。
このように、不動産に対する認識の違いが海外と日本の空き家率の差に反映されていると言えるでしょう。
海外の空き家活用方法は?売却だけでなくドミトリーやシェアハウスも人気
最後に、日本では空き家となってしまいがちな中古住宅が、海外ではどのように活用されているのかご紹介しましょう。
まず最も一般的なのは、物件を売りに出す際にはオーナー側が内装を綺麗にリフォームするという方法でしょう。
日本では、中古物件はそのままの状態で売りに出すか、大規模な改修工事をおこなうことが一般的ですが、海外では物件をできるだけ高い価格で売却するために、売却前に内装を綺麗な状態にしておくのです。
それ以上のリフォームは購入者が自分の希望に合わせておこないます。
また、アメリカにはフリッパーと呼ばれる不動産仲介業者が存在します。
フリッパーはマーケティングを通して買い手のニーズを熟知しており、購入した中古物件が高値で売れるようにリノベーションして売りに出すのです。
旅行者による一時的滞在を対象とした宿泊施設であるドミトリーも人気の活用方法です。
ドミトリーは学生寮のように相部屋となる代わりに安価に宿泊できることが売りですので、内装や建物の古さはさほど問題になりません。
宿泊費は安い代わりにリノベーションに費用をかけなくても需要が見込めるため、旅行者が多い地域では利益を出しやすい空き家の活用法と言えます。
1つの物件を複数名に貸し出して利益を得る方法には、シェアハウスもあります。
ドミトリーとの違いは、シェアハウスの場合は一時的に滞在する宿泊者ではなく、長期的に居住する人を対象とする点です。
寝室以外が共用スペースとなるため、個室が2部屋以上あれば、さほどリノベーションの必要はないでしょう。
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まとめ
海外では住宅は長年使い続けるものとして建設され、不動産市場では中古住宅の売買が活発におこなわれ、売却用物件としてだけでなく、ドミトリーやシェアハウスとして活用されています。
一方、日本ではすでに住宅が余っているにもかかわらず、新築住宅が好まれる傾向から新しい住宅が建設され続けてきましたが、近年では空き家の活用に注目が集まり、空き家を大切な資源とする考え方が広まりつつあります。
海外との事情の違いはありますが、住宅を長年大切なものとして使い続ける風潮がさらに定着すれば、日本の空き家問題も解消されていくかもしれません。
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