近年戸建て住宅を中心に、空き家が社会話題になっていることをご存じでしょうか。
メディアやニュースでも取り上げられ、年々空き家問題が深刻化していることが分かるでしょう。
国土交通省では1980年より、5年おきに空き家の実態調査をおこなっていますが、調査目的に応じて調査対象と調査方法の見直しを図っています。
今回は空き家を所有している方にむけて、国交省が実施した空き家の実態調査について詳しく紹介しますので、ぜひご覧ください。
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▼空き家における実態調査の目的や経緯とは?
空き家とは人が住むことを目的として建てられた住宅に対し、住む人がいない家を指します。
空き家の数が増加傾向にある実態は、高齢化や人口の減少、ライフスタイルの多様化が理由とされ、今後も空き家が原因となるさまざまな問題が考えられます。
では空き家が増えることで懸念される問題とはどのようなことが挙げられるのでしょうか。
<防災性と防犯性の低下>
誰も住んでいない空き家は、防火性と防犯性が低下するといわれています。
家のなかや庭などにゴミが放置されていることも多く、放火される危険性があるからです。
空き家のため火災に気づきにくく、近隣世帯を巻き込む大規模な火災につながることもありえるでしょう。
またホームレスや犯罪者による不法侵入や盗難など、防犯性が低下するのも空き家の実態です。
<住環境の悪化>
空き家は誰も住んでいないがゆえ、多くの場合、建物や土地のメンテナンスがされないまま放置されています。
そのため周囲の景観が悪化し、周辺住宅の資産価値が下がってしまうかもしれません。
野良猫の住処になり悪臭を放ったり、庭の植物が伸び害虫が発生したりといった住環境の悪化も空き家がかかえる実態といえるでしょう。
このように、空き家とは犯罪の温床や環境の劣悪化を招く存在といえます。
そのため住所や状態、持ち主などを知り、空き家を減らして利活用に繋げようとする目的で、国交省は空き家の実態調査を実施することになりました。
空き家の実態調査は全国の空き家を調査する、住生活基本計画(国民が安心して暮らせる住環境の確保および向上を促進する計画)に基づいてチェックされます。
また、これまでの統計調査では内容が不十分だったシェアハウスやグループ住居、単身の高齢者といった、新たな居住形態や空き家の実態についても、現状が把握できるよう調査をおこないます。
▼空き家の実態調査をおこなった結果
では実態調査をおこなった結果、空き家の数はどの程度あったのでしょうか。
平成10年では総住宅数5,025万戸に対して空き家は578万戸、平成15年の時点で総住宅数は5,389万戸です。
それに対し空き家数は859万戸という結果が出ています。
平成20年は総住宅数5,759万戸に対し、空き家数は757万戸と若干減ったものの、平成25年には総住宅数6,063万戸に対し空き家数は820万戸という結果になりました。
また(平成26年11月~平成27年2月)における統計調査の対象住宅のうち、空き家から無作為に抽出した所有者を対象に、空き家等の状況や利用状況を調査しました。
<住宅の所有者>
対象の空き家の所有者とは誰なのか、住宅の所有者以外でも回答可能とした結果です。
・自分が所有している…80.6%
・自分は所有しておらず、親族が所有している…6.9%
・住宅を所有している法人の代表者…2.3%
・自分や親族は所有していないものの、管理はおこなっている…1.1%
上記の結果とともに、この住宅に心当たりがないという回答が1.8%でした。
<利用状況>
次に空き家の利用状況を調査した結果です。
・人が住んでいる…31.3%
・誰も住んでいない…65%
調査時点で全国にある空き家のうち、半数以上が誰も住んでいない状況で、全体の約30%が住んでいるという結果になりました。
その理由は以下の通りです。
・所有者または親族が引っ越してきた…30.4%
・賃貸で人に貸している…23.3%
・中古住宅として取得した…14.1%
・長期の入院や転勤などで不在にしていた居住者が戻った…3.7%
・無回答…28.5%
続いて利用状況のなかで、人が住んでいる空き家の建築時期を見てみましょう。
・昭和25年以前…23.1%
・昭和26年から35年…22.2%
・昭和36年から45年…24.8%
・昭和46年から55年…29.3%
誰も住んでいない場合、どの程度の期間空き家になっているかを調査した結果は以下の通りです。
・10年以上…21.1%
・5年以上10年未満…15.3%
10年以上空き家になっている住宅は築年数が古い傾向にあり、その割合は昭和25年以前に建築された住宅で36.7%です。
また大都市の圏内外を地域別に調査したところ、昭和25年以前に建築された住宅のなかで、大都市圏よりも大都市圏以外にある空き家は、建築時期が古いという結果になりました。
・大都市圏以外の市…15.1%、
・大都市圏以外の郡部…19.2%
地方の方が古い空き家が多くあるということが分かりますね。
また空き家の腐朽と破損の状態を調査した結果も出ています。
・建物の主要部分における不具合(柱の傾きや屋根の変形)があるもの…16.8%
・全体的な腐朽や破損があるもの…1.3%
・部分的な腐朽や破損があるもの…23.8%
この状況を居住状況別に調査したところ、人が住んでいない場合で48.9%、住んでいる場合は31.2%という結果になりました。
人が住んでいない空き家ほど、建物の劣化や資産価値の減少があるといえます。
空き家の実態調査で分かった人が住まなくなった経緯
空き家の実態や調査目的、結果をお伝えしていきましたが、なぜここまで空き家が増えてしまったのでしょうか。
人が住まなくなった経緯として、以下のような調査結果が出ています。
・最後に住んでいた人が亡くなった…35.2%
・新居の購入などにともない引っ越しをした…27.9%
・老人ホームなどの施設に入った…14%
・入院や転勤による長期不在…4.7%
・建て替えや増築による一時的な退去…0.6%
最後に住んでいた人が亡くなったという理由がもっとも多く、次いで引っ越しや新居の購入が理由として挙げられます。
最後に住んでいた人は、全体の30%が所有者の親です。
親の年齢は50歳から74歳の割合が全体の40%を超えています。
また現在の所有者の自宅から、空き家の距離をそれぞれ調査したところ、以下のような実態であることが分かりました。
・車や電車を使って3時間以上かかり日帰りが不可能…57.6%
・車や電車を使って1時間から3時間…49%
・車や電車で1時間以内…34.3%
・徒歩圏内…20.2%
この結果を見ると、空き家に足を運ぶために3時間以上もかかり、日帰りが不可能というケースが半数以上を占めています。
空き家に人が住まなくなった経緯として、空き家の所在地が大きくかかわっていることがお分かりいただけるでしょう。
相続が経緯となって実家を所有することになった方も多く、メンテナンスや定期的な掃除をおこなえずに空き家になってしまうケースも少なくありません。
また人が住まなくなってからの期間は、以下の通りです。
・10年以上…31.1%
・5年以上10年未満…22.9%
・1年以上3年未満…17.3%
・3年以上5年未満…15.7%
老朽化により人が住める状態ではなくなるのも、人が住まなくなった経緯として挙げられます。
▼まとめ
今回は空き家を所有している方にむけて、国交省が実施した空き家の実態調査をテーマに、実態調査の概要と目的を、調査結果とともに見ていきました。
人が住んでいない戸建て空き家の状態や、利用状況、人が住まなくなった経緯などをお分かりいただけたでしょうか。
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