いまや不動産業界に関わる方以外にも知れ渡る社会問題。
それが空き家問題です。
空き家は「倒壊の危険性」「不審者が住み出すなどの防犯性」「ゴミの不法投棄による環境の悪化」「地域の景観を損ねる」などの点において問題があります。
人々の生活に悪影響を与えますから、空き家が増えることは望ましいとはいえません。
2020年現在、国の法令として空き家対策の計画がおこなわれているのをご存知ですか?
今回は、空き家問題に対する法令と、行政によりおこなわれる措置についてご紹介します。
空き家を所有している方、相続などで所有する可能性がある方は、ぜひ最後までお読みください。
関連記事:空き家の行政代執行とはどういうもの?解体費用は誰が払うの?
▼空き家に関する法令~空き家対策特別措置法について~
年々増え続ける空き家。
2013年には、全国の空き家が約820万戸となり「空き家問題」として世間に知れ渡りました。
空き家とは「使用されていない建物」のことで、十分な管理もされていません。
人の住まなくなった家が放置され続けると、防災上や衛生上問題があるとされています。
火事になったりごみ屋敷と化したり、不審者が住みついたり…。
これらの空き家問題は、地域住民の生活環境に影響をおよぼすことにつながります。
国はこの空き家問題を「どうにかしよう」と、法令を制定しました。
それが、2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」です。
この法令には、空き家の定義やガイドラインが定められています。
まずは定義について。
”「空家等」とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。”(第2条1項)
つまり「誰も使わず管理もされていない建物およびその土地」が空き家に含まれるということですね。
またこの法令では、空き家所有者と市町村の責任がそれぞれ定められています。
所有者:周辺の生活環境に悪影響をおよぼさないよう、空き家の適切な管理に努めること。
市町村:空き家対策計画の作成、対策の実施、その他必要な措置を適切におこなうよう努めること。
「空き家所有者が適切な管理をすること」を大切としつつ、地域住民に悪影響がおよばないよう「自治体が対策をおこなう」との認識でよいでしょう。
おおまかな流れとして、ガイドライン(基本指針)もご紹介します。
・空き家の実態を把握し、対策を計画する
・その対策の対象となる空き家の種類の説明や実施体制など、空き家対策計画についての方針を定める
・その他空き家対策の計画に必要な、当事者への理解促進や支援などをおこなう
国はこれら3つを基本的な指針とし、対策のこまかな内容については「空家等対策計画」で述べています。
▼法令で定められる「特定空き家」に認定されるとどうなってしまう?
ここからは空き家対策の計画について、もう少しくわしくお話したいと思います。
「空家等対策計画」のなかにある「特定空家等に対する措置」についてです。
「特定空家等」とは、空き家のなかでもこのような状態にあるものをいいます。
① 倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
② 著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理がおこなわれないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
「特定空き家」として認められると、空き家所有者に対し、行政から法的措置がおこなわれます。
1つ目は、固定資産税の軽減税率から外される措置です。
土地と建物にそれぞれ1.4%課される固定資産税。
土地分の税は、建物が建っていると最大で6分の1まで軽減されます。
「特定空き家」は、その建物の条件から外されるということになります。
つまり、空き家所有者は最大で通常の6倍の固定資産税を納めなければならなりません。
空き家を放置すると大変なことになりますね。
また、「特定空き家」を所有していると、他にも措置がおこなわれます。
行政がおこなう措置の内容はこちら。
・除却、修繕、立木竹の伐採など生活環境の保全を図るために必要な措置をとるよう助言または指導、勧告および命令をする
・空き家所有者がこれら措置の命令にしたがわないときは、行政代執行法により行政自ら措置をおこなう
空き家をきちんと管理するか処分するなどしないと、市町村から指導がきてしまうと…。
そしてその指導も無視すると、空き家自体が取り壊されてしまうのですね。
行政による取り壊しの費用はもちろん所有者に請求されます。
空き家所有者はデメリットが大きいといえますね。
「特定空き家」の状態にあてはまるからといって、すぐにこれらの措置がおこなわれるわけではありません。
空き家所有者のなかには、さまざまな事情の方がいます。
・遠方に住んでいて自分の空き家の現状を把握していない方
・相続による取得で、自分が所有者だと認識していない方
など
これらの可能性も考え、自治体はまず空き家所有者に連絡をとります。
現状を伝え、改善するよう処分や活用についての話をするんですね。
連絡をとって所有者に事情があると分かれば、また措置は見送られます。
・改善したい気持ちはあるが、対処法がわからない
・遠くに住んでいて、自ら改善することができないなど
この場合行政は、相談窓口や活用できる助成制度を紹介するなどして、空き家問題の解決をおこなうこともあります。
このように、すぐに執行されるのではなく救済の手順があるのです。
そのため所有者は、何をすればいいか分からないからと勝手に無視してはいけませんよ。
空き家による周辺への危険が迫っているにもかかわらず、行政からの連絡を無視し続けた場合は、速やかな措置がとられるでしょう。
空き家所有者が行政から連絡や指導を受けたときは、ちゃんと対応すべきということですね。
必要な対応をすれば「特定空き家」の認定は取り消されます。
▼空き家の法令で可能になった行政代執行ってどのような処分なの?
空家等対策特別措置法第14条により「特定空き家」に対する行政代執行が認められています。
行政代執行とは、所有者が行政からの指導を無視し、必要な措置をおこなわない場合に、行政自らその措置をとることですね。
さきほどお話した、空き家の取り壊しも行政代執行のひとつです。
空き家の場合「期限までに必要な措置がとられなければ、行政が取り壊しをします」との通知が、何度か戒告されます。
必要な対応ができれば「特定空き家」から除外されるといいましたが、措置をとらなかった場合はどうなってしまうのか。
「空き家の処分を行政がしてくれるってこと?」と軽く考えてはいけません。
空き家所有者にとってはデメリットになることを説明しますね。
<行政代執行がおこなわれると費用がかかる>
行政代執行法第5条は「代執行に要した費用の徴収については、実際に要した費用の額及びその納期日を定め、義務者に対し、文書をもつてその納付を命じなければならない」と定めています。
つまり、行政代執行による空き家の取り壊しにかかった費用は、すべて所有者が負担するということ。
行政からの徴収になりますので、費用は税金として扱われます。
そのため、払えなければ「税の滞納」となるのです。
滞納したら所有者の同意に関係なく、不動産や車などの財産を「差押え」され、公売にかけられます。
空き家取り壊しの費用を支払うことができなければ、今住んでいる家が差押えされる可能性もあるということです。
「取り壊しの費用ってそんなにかかるものなの?」
と疑問に思った方もいるでしょうか。
一般に建物の解体をする際、さまざまな情報を調べて、安く済む業者に依頼しますよね。
しかし、行政がそのような手間をかける時間はありません。
そのため、通常より費用が高くなる傾向にあるといえます。
行政代執行によりかかった費用の事例がこちら。
・木造戸建の解体 約150万円(神奈川県横須賀市)
・ゴミの撤去 約200万円(東京都品川区)
・木造アパートの解体 約510万円(大分県別府市)
・木造戸建の解体 約800万円(北海道室蘭市)
※2016年8月時点
行政代執行は、空き家所有者に対する最終手段です。
空き家を適切に管理していないと行政代執行がおこなわれ、このような費用が請求されるでしょう。
▼まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回は空き家に関する法令やその指針、行政がとる措置についてまとめてみました。
管理されていない空き家は、地域住民に迷惑や損害がかかるだけの話ではありません。
空き家は法令に定められているため、場合によっては法的に対処され、所有者にデメリットを与えます。
もし空き家を所有していれば、すみやかに活用や処分を考えた方がよいでしょう。
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空き家で何かお困りのことがありましたら、ぜひご利用ください。