不動産を相続した際に受けられる控除はいくつか種類がありますが、中でも「小規模宅地の評価減の特例」という言葉を聞いたことがあるという方が多いのではないでしょうか?
小規模宅地の評価減の特例とは、簡単に言うと「ある要件を満たしている場合、評価額を50%から最大80%減額する」制度のことを言います。
この要件というのが若干複雑なのですが、大きな額の控除を受けることができるので、かなりの節税につながります。
今回は小規模宅地等の特例について、空き家の場合でも適用されるかにも触れながらご紹介します。
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そもそも小規模宅地の評価減の特例とは?要件や対象について
ご紹介しているように、小規模宅地の評価減の特例とは、「ある一定の要件」を満たしていた場合、相続税評価額を50%~80%減額できる特例のことを言います。
相続税は、この相続税評価額によって決まりますので、このような特例による控除を受けることで、相続税の節税につながります。
それではこの控除を受けるために満たす必要がある要件についてご紹介していきます。
小規模宅地の特例を受けるための要件①土地について
この要件には満たすべき点が2点あります。
●亡くなった方が住んでいた土地、あるいは生計が同じだった方が住んでいた土地であること
1点目はこちらです。
そもそも、対象となる土地が「亡くなった方本人」あるいは「亡くなった方と生計を同じにしていた」親族の方が住んでいた土地でなければなりません。
要するに控除の対象となる土地が、実際に使用されていた土地でないといけないということになります。
●その宅地等が建物又は構築物の敷地であること
2点目はこちらになります。
そもそも、対象となる土地に建物や建築物が立っている敷地である必要があります。
特例の名前自体が「小規模宅地」となっていますから、「宅地」、要するに建物が建っている土地である必要があります。
これら2点を満たす必要があるということを、まずは把握しておいてくださいね。
小規模宅地の特例を受けるための要件②取得者について
続いての要件は、控除を受けることができる人物に関するものです。
これは上記の要件のケースごとに異なってきますので、それぞれ確認していきましょう。
●亡くなった方が住んでいた土地の場合
亡くなった方が住んでいた土地の場合、以下の人物が対象となりますので、覚えておいてくださいね。
①被相続人(亡くなった方)の配偶者
②被相続人と同居していた親族
③被相続人と同居していないが以下の要件を満たす人物
・被相続人に配偶者がいない
・被相続に同居している相続人がいない
・被相続人がなくなる前の3年間、所有していた家屋に住んだことがない
●亡くなった方と生計が同じだった方が住んでいた土地
亡くなった方と生計が同じだった方が住んでいた土地の場合、以下の人物が対象となります。
①被相続人の配偶者
②被相続人と生計が同じだった親族
どちらの場合も、被相続人とそれ相応に近しい関係の人物のみ控除の対象となることがわかりますね。
これ以外にも、限度面積や減額の割合など、要件などがありますので詳しくは国税庁のホームページを確認してみてください。
詳しくはこちらNo.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
空き家であっても小規模宅地の評価減の特例は受けることができる?
ご紹介している小規模宅地の評価減の特例は、あくまで「宅地」に関する控除なので、建物の敷地が対象ということになりますよね。
しかし、要件の一つに実際に「亡くなった方が住んでいた」「亡くなった方と生計が同じ親族が住んでいた」という要件があるように、宅地であればなんでもよいというわけではありません。
それでは、この小規模宅地の評価減の特例は、相続した時点で空き家になっていたケースや申告期限時点で「空き家」になったケースは適用されるのでしょうか?
それぞれの場合について見ていきましょう。
相続開始時点に空き家だった場合
上記で触れたような「被相続人がなくなる前に空き家となってしまう」というケースは、少子高齢化が進んでいる現在の日本では決して珍しくありません。
このような現状をうけて、平成26年1月1日以後の相続からは、一定の要件を満たしていれば、空き家であっても被相続人が居住していたとみなされることになりました。
以下の2つの要件を満たしておく必要がありますので、確認してみてくださいね。
●被相続人が、亡くなる前に要介護認定等を受けていた
●被相続人が特別養護老人ホーム等に入居又は入所していた
どちらも、空き家になってしまう明確な理由が必要ということになりますね。
しかし、この要件を満たしていたとしても、老人ホーム入所後にその宅地を事業用として利用したり、新たに親族が住んだりした場合には、小規模宅地の評価減の特例を適用することができません。
つまり、明確な理由があって空き家になった場合に、また、とくにその他に利活用をしていなかった場合に、小規模宅地の評価減の特例を受けることができるということになります。
申告期限時点で空き家になった(なっていた)場合
続いて、相続した時点では空き家ではなかったけれど、相続発生後に申告をする時点で空き家になった場合、小規模宅地の評価減の特例を受けることはできるのかをご紹介します。
こちらは、相続人と被相続人の関係性によって異なってきますので、それぞれのケースごとにご紹介します。
●配偶者の場合
相続人が配偶者の場合は、対象となる建物が空き家であっても控除対象となります。
●被相続人と同居していた親族の場合
控除を申請する人物が「被相続人と同居していた親族」の場合は、以下の要件を満たしている必要があります。
①相続開始時点から相続税の申告期限まで、引き続きその建物に居住すること
②その敷地を相続税の「申告期限まで」所有していること
このため、「空き家」である場合は控除を受けることができません。
●被相続人と同居していない親族の場合
被相続人と同居していなかった親族の場合、「申告期限まで所有する」という要件は必要になりますが、「居住する」という要件はないため「空き家」であっても控除を受けることができます。
このように、小規模宅地の評価減の特例には、さまざまな要件が複雑に絡み合っています。
また、相続した建物が「空き家」であった場合も、その空き家が「どのタイミングで」空き家になったのか、あるいは「所有しているのか」「同居していたのか」といったように、いくつもの要素が絡んできます。
相続を控えている方にとっては、自身が相続する不動産がどのような要件なのか、被相続人と自分がどのような関係なのかなどを今一度確認しておくことをおすすめします。
小規模宅地の特例の申請での必要書類は?
小規模宅地等の特例を申請する際には、相続税の申告書に以下の3点を添付しておかなくてはなりません。
●被相続人の相続人全員が記載された戸籍謄本
●図形式の「法定相続情報一覧」
●遺言書の写し、もしくは遺産分割協議書の写し
●相続人全員の印鑑証明書
これらに加えて、被相続人が介護施設に入っていたケースでは、介護保険証や施設への入居契約書の提出を求められるなど、ケースによって必要書類が異なるため、注意が必要です。
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