日本の社会問題の一つである、空き家。
総務省が公表した「平成30年住宅・土地統計調査」によると、日本における空き家の数は846万戸で、過去最大の数字をたたき出しています。
放置された空き家は、さまざまなトラブルの原因となってしまうため、早急な対策が必要です。
この記事では、日本で空き家の数が増え続ける原因について、わかりやすく解説します。
また、空き家問題の解決策には、どのようなことが行われているのかについてもあわせてご紹介します。
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▼空き家が増える原因その1少子高齢化と人口減少社会
総務省による「平成30年住宅・土地統計調査」では、居住世帯のある住宅が86.0%、居住世帯のない住宅が14.0%となっています。
居住世帯のない住宅の内訳をみると、一時現在者のみの住宅が0.3%、空き家が13.6%、建築中の住宅が0.1%であり、空き家の割合が高いことがわかります。
なぜ、日本では空き家の数が増え続けているのか、その原因を探ってみましょう。
空き家は年々増えている状況が続いていますが、そのもっとも大きな原因は、少子高齢化と人口減少によるものです。
<相続して放置される>
両親や祖父母、親戚が逝去し、家を相続したものの、自分たちはすでに都心に住居を構えており、田舎や地方の家には誰も住む人がおらず、そのまま空き家になってしまうというケースが多く、空き家増加の原因となっています。
高齢者が介護施設などへ転居したり、相続しないまま逝去したりすることも多く、その家に住む人がいなくなり、そのまま空き家になってしまうことも原因です。
<人口減少や少子化>
特に空き家は、立地条件のよくない田舎や地方にその数が多く、過疎化も空き家の数が増える原因の一つです。
都心部と比べて地方は物価が安いため、中古の空き家を再利用するよりも、新築を建てることを選ぶ人が多いのも、空き家が増える原因といえるでしょう。
また、核家族化や少子化により、昔ながらの広い日本家屋の家は住みにくくなっていることも、空き家が増える原因といえます。
<売却できず放置>
空き家を売却したいけれど、需要の少ない地方などでは、売却することができず、そのまま空き家になってしまうこともよくあります。
誰も住んでいない期間が長くなればなるほど、その家の価値は低くなってしまい、放置された空き家の数が増えてしまうため、空き家になったらできるだけ早い段階から、売却や賃貸、利活用方法などについて検討する必要があります。
空き家の数を減らす解決策は、空き家を売却したり、賃貸に出したりすることですが、それもなかなか難しいことが多いのも現状です。
・空き家問題の解決策は?
空き家を有効活用できる解決策として、国は空き家を売りたい、貸したい人と、買いたい、借りたい人をマッチングする「空き家バンク」サイトの開設や、「空き家活用ガイドブック」をつくり、空き家を流通させることを推進しています。
空き家をシェアハウスとして活用したり、別荘として貸し出したりする、さまざまな民間による空き家ビジネスも活発化しており、話題を集めています。
深刻な空き家問題を解消するためには、国や自治体と、民間団体が一緒になって、さまざまな支援や取り組みを行うことが今後の課題です。
▼【空き家が増える原因その2】固定資産税の対策になる
空き家のままでは売却することが難しくても、空き家を解体して、更地にすれば、売れる可能性が高くなります。
しかしながら、解体せずに、住み手のいない空き家をそのままの状態で残していることが多いのも事実です。
空き家の解体費用を準備することができないという原因も考えられますが、固定資産税が高くなってしまうため、空き家を解体しないというケースも多いようです。
ご存知のとおり、空き家を含め、不動産を所有していると固定資産税がかかります。
空き家が市街化区域内にあれば、都市計画税も課税されます。
固定資産税と都市計画税のふたつの税金は、「住宅用地の特例」により優遇されます。
この特例は、住宅1戸が200平方メートル以下の小規模住宅用地の場合、固定資産税が1/6、都市計画税が1/3に、住宅1戸が200平方メートル以上の一般住宅用地の場合、固定資産税が1/3、都市計画税が2/3に優遇されるというものです。
しかし、「住宅用地の特例」で優遇されるのは、住宅が建っていることが要件となります。
空き家を解体して、更地の状態にしてしまうと、「住宅用地の特例」を受けることができなくなり、固定資産税が、6倍にまで跳ね上がってしまうこともあるのです。
固定資産税が高くなるのを避けるために、利用されていない空き家をそのまま放置したままにしているケースも多く、空き家が増える原因のひとつになっているのです。
固定資産税を節税するために、空き家をそのまま放置している所有者もいますが、いずれにせよ、不動産の固定資産税は支払わなければなりません。
空き家を放置している所有者にはさまざまな理由がありますが、空き家を売却するなどして手放してしまえば、固定資産税を支払う義務もなくなり、面倒な空き家管理からも解放されることをしっかりと理解してもらうことが解決策といえるでしょう。
▼【空き家が増える原因その3】所有者の放置
放置された空き家は老朽化がすすみ、倒壊するリスクが高く危険であり、手入れされていない植木や雑草などにより地域の景観も乱してしまいます。
また、空き家は、ゴミが放置されていることも多く、ネズミなどの害獣の被害や悪臭により近隣住民に迷惑をかけてしまうこともあります。
不法侵入や不法占拠や放火などの犯罪を招く恐れも高くなり、放置された空き家は、さまざまな問題の原因となります。
年々増加するこの深刻な空き家問題解決へ向けて、国は平成26年に「空き家等対策特別措置法」を施行しました。
空き家が増える原因を根本的に排除する、厳しい内容となっています。
この法律により倒壊などにより著しく危険性が高い空き家、衛生的に著しく有害となる空き家、著しく地域の景観を乱している空き家、周辺環境保護のため放置しておくことが不適切な空き家などに該当する空き家は「特定空き家」に指定されます。
まず空き家の調査が行われ、その結果「特定空き家」に指定されると、改善や改修が求められ、自治体などから助言・指導が入ります。
それでも改善されない場合は、勧告・命令が下され、命令を無視し続けた場合は、行政代執行が行われます。
行政代執行とは、行政が空き家の所有者に代わって、空き家の解体や修繕、改修などを行うものです。
行政代執行によって行われた、空き家の解体や修繕、改修費用は、空き家所有者に請求されることになります。
行政代執行にかかった費用は、税金と同じ扱いになり、必ず支払わなければならない仕組みになっています。
費用を支払わなかった場合は、所有している不動産や車が差し押さえられて、売却されてしまうこともあり得ます。
空き家の所有者は、行政代執行は、もっとも避けたいことであることをしっかりと理解しておきましょう。
また、「特定空き家」に指定されると、固定資産税の優遇を受けることはできなくなります。
このように、「空き家等対策特別措置法」が施行されたことにより、もはや空き家を放置したままにしておくことはできない状況になりました。
「特定空き家」に指定されてしまうと、いいことはひとつもありませんから、普段から責任を持って、空き家の管理を行うことが重要です。
空き家の管理ができないのであれば、不動産会社に相談するなどして売却や賃貸することを検討してみましょう。
また、コストはかかりますが、空き家管理サービス業者に空き家の管理を依頼することもひとつの手段です。
▼まとめ
空き家が増える原因には、少子高齢化など現代の日本社会を反映する問題が背景にあります。
空き家の数をこれ以上増やさないためには、空き家を利活用していくことが有効であり、その手段や方法を広げることが今後の課題ですね。
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