日本国内では、特に地方での空き家の件数増加にくわえ、管理や財産分与など多岐にわたって問題となっているのは周知の事実でしょう。
空き家を減少させるために、利用を希望する人に物件情報を提供したり、民泊施設として利用したりと、さまざまな取り組みが行われています。
有効活用の事例のひとつに、空き家をアート作品の展示に利用する、地域型アートイベントがあることをご存じですか?
空き家とアートは、一見何の関係もないように思えますが、実は空き家を有効活用する方法のひとつとして、自治体や都道府県を巻き込んだプロジェクトが行われています。
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▼空き家をアートに活用!空き家にアートを展示させる試みとは?
長年使用されていない空き家をアート展示するためには、まずリノベーションからスタートしなければならず、時間や手間がかかってしまいます。
しかし、アーティスト自身がリノベーションに携わり、空き家自体をアート作品として用いることもあり、空き家とアーティストどちらにもメリットがあるといえるでしょう。
空き家にアート展示する試みについて紹介します。
<地域活性化に役立つ空き家アート>
空き家アートは、空間内にアート作品を展示したり、空き家そのものをアート作品にしたりと、アーティストの個性を存分に生かせるとして、今注目が集まっています。
近年では、アート作品の展示するためにその地域の特色を生かせるエリアそのものを会場にする、地域型アートイベントが増加しています。
なかでも、岡山県・香川県に面する瀬戸内海の島々を舞台とした、瀬戸内国際芸術祭は100万人の来場者が訪れている大イベントとして有名です。
多くの来場者が訪れることは地域活性化となり、社会貢献につながっています。
空き家はマイナスなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、歴史と文化をそのまま残してあること、都会にはない雰囲気が味わえることなど、捉え方によっては多くのプラスを見つけられるのです。
地域型のアートイベントは、同じエリアで定期的に開催されることが多く、イベントの知名度が高くなれば、年々来場者が増えさらなる進化を見せてくれるでしょう。
<街の再生とアーティストの活躍>
地域によっては空き家が点在し、多くの空き家が放置されたままであることも少なくありません。
空き家を住居として利用する方が増えれば街の再生としてベストですが、簡単にはいかないのが現状です。
アートイベントなどで空き家を利用することは、多くの人を呼び、認知度アップ、地域内での経済活動があることから、街の再生として大きく貢献している事例のひとつです。
まちづくりの一環として、市や県が費用の一部を助成することがあり、大きなプロジェクトとして空き家対策、若者へ空き家問題の認知度アップも期待できます。
また、アーティストが自分の作品を展示するための機会を増やすことにつながり、街とアーティスト、どちらにもプラスとなる取り組みといえるでしょう。
<空き家のリスクを軽減できる>
空き家には、地域の景観を損なったり犯罪に利用されたりと、さまざまなリスクがあります。
もし空き家が多い地域で、イベントやプロジェクトが定期的に行われていれば、管理されていない物件と比べ、リスクが軽減につながるでしょう。
リスク軽減には、結果的に空き家がなくなることがベストですが、このようなことに使用されることもひとつの対処法といえるかもしれません。
▼空き家とアート事情に迫る!空き家とアートイベント
日本では、国内外のアーティストが参加する地域型アートイベントが開催されています。
そのイベントでは、空き家をはじめとする廃校や古民家とアートを結びつけ、美術館とは違う地域性の高いイベントで、開催されるたびに賑わいを見せていました。
イベント開催期間以外にも、1年を通してアート作品が展示されており、ツアーや旅行のようにアート作品を楽しめるでしょう。
ここでは、空き家を有効活用している3つのアートイベントについて紹介します。
<香川県直島 家プロジェクト>
香川県香川郡にある直島町では、家プロジェクトと称し直島・本村地区でアートプロジェクトを展開しています。
家プロジェクトでは、空き家などを改修して空間そのものを作品化しており、地域を散策しながらアートを楽しめるのが特徴です。
同地区で暮らす人たちの生活圏内に点在する空き家を巡り、来島者と住民の出会いが生まれています。
宿泊施設や銭湯など、地域全体でもアートが楽しめることが特徴で、アートに関心のある若い世代にも、島の歴史と空き家の有効活用事例を知ってもらえるでしょう。
<新潟県 大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ>
新潟県十日町市と津南町からなる越後妻有地域を舞台に、約200のアートが点在しています。
大地の芸術祭の代名詞として、空き家・廃校を利用したプロジェクトがあり、作品として再生する取り組みが行われていることが特徴です。
もともとは廃墟同然であった古民家を、長い時間をかけて再生して、建物そのものを作品としている空き家もあります。
芸術祭期間以外では、空き家を宿泊施設として利用できる施設もあり、住みながらアートを体験できるのは、大地の芸術祭ならではの魅力です。
<【兵庫県】下町芸術祭>
兵庫県神戸市の長田区・兵庫区を中心とした下町エリアで開催される下町芸術祭では、古民家や空き家に現代アート作品を展示するプロジェクトが行われています。
長田区は、神戸市にある9つの区のなかでも空き家率が高い一方で、昔ながらの歴史ある住宅や商店街が残っている魅力的な街です。
芸術祭期間内は、空き家や古民家を有効活用したアートが展開されたり、リノベーションした施設をイベント利用したりと、廃墟であった建物の再生を間近で実感できます。
芸術祭では、空き家意外にも写真展示やワークショップ、街歩きが楽しめるため、地域全体の活性化に大きく役立っているといえるでしょう。
▼空き家をアートに活用!海外ではどうなっているの?Inドイツ
世界には、日本以上に空き家問題を抱えている国や地域があります。
今回紹介するドイツのライプツィヒは、これまでにない空き家問題の解決方法を見いだし、ドイツ国内外で注目を集めています。
<第二次世界大戦後に衰退した街
ライプツィヒ>
ドイツのザクセン州にあるライプツィヒは、1930年代に人口を70万人まで増加し、産業都市としてベルリンに次ぐ人口の多い地域でした。
第二次世界大戦後は東ドイツに組み込まれ、徐々に産業が衰退、1989年のベルリンの壁崩壊後、多くの人口が西側へと流出してしまいます。
この結果、人口の減少と空き家の急増が大きな社会問題となりました。
市全体の空き家率は20%弱、一部地域では空き家率50%となり、空き家は放置されていたのです。
<歴史的価値のある建物のリノベーション推進>
ライプツィヒにある空き家は築100年以上のものが多く、歴史的価値が高い建物が多く存在しています。
街の歴史が失われることに危惧したライプツィヒの人々は、空き家となった建物を活用するためにハウスハルテン(市民団体)を設立、市民や有識者を集め、空き家を有効利用する救済方法を模索していました。
ハウスハルテンは、物件に住みながら最低限のメンテナンスをしてもらうセルフリノベーションを原則として、そのぶん安価で自由な空間を提供するアイデアを立案します。
このことから、若年層やアーティストを中心に多くの人が集まってきました。
<人口増加による不動産市場の成長>
ハウスハルテンの行ってきたプロジェクトは成功を収め、ライプツィヒでは2000年頃から人口が増加し始めています。
人口減少と空き家増加の問題点は徐々に改善されて若者の文化が発展しており、ハウスハルテンのプロジェクトは成功を収め、今でもライプツィヒでは発展を続けているようです。
このことからライプツィヒエリアの家賃や資産価値は上昇し、新たな価値と文化を生み出し続けています。
▼まとめ
空き家は活用方法によっては、文化を発信する若い世代に多く利用してもらえるチャンスがあることをご紹介しました。
そのひとつして、空き家とアートを結びつけたイベントやプロジェクトがあり、SNSなどのメディアを通じて情報が拡散されています。
空き家を利用した人に住んでもらうのが最もよい活用法ではありますが、その土地の文化や歴史を知ってもらう方法としては最適かもしれませんね。
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