国内において年々増加する空き家ですが、とくに過疎化が進む地方で急増しており、深刻な社会問題になっています。
2015年の空家対策特別措置法の施行により、以前より空き家問題への注目度は増しましたが、依然として根本的な解決にはつながっていません。
実際に、総務省が発表した2018年の日本国内の空き家率は13.6%で、2013年に実施された前回調査時の13.5%を少し上回る結果となっています。
そこで今回は、地方で空き家が増える原因や増加による弊害、解決策についてご紹介します。
地方で空き家が増える原因とは?
地方で空き家が増える理由には、いくつもの要因が重なっています。
もっとも大きい要因は少子高齢化による人口減少です。
少子高齢化にくわえて核家族化が進み、若い世代を中心に地方から都市へ人口が移動しているのも要因として挙げられるでしょう。
仕事を求めて実家を出た子ども達は、新天地で生活の基盤ができると地元に帰らない選択をする方が多いです。
そのため、両親が亡くなったあとは実家を継ぐ相続人がいなくなり、やがて誰も住まないまま空き家として放置されてしまいます。
さらに、人口が減っているにも関わらず新築住宅が次々と建築されている点も空き家の増加につながっているといえるでしょう。
日本では住宅をリユース(再利用)する文化が浸透しておらす、新築を好む傾向があるからです。
欧米では古い住宅の流通が広く浸透していますが、日本は新しくきれいな住宅が建ち並び住宅供給が過剰状態となっています。
そのため、欧米に比べると中古住宅を購入しようとする方が少ないことが、日本における空き家問題の課題です。
また、これまでの固定資産税の制度の仕組みも空き家増加に拍車をかけていました。
住宅用地の特例制度により、土地に建物が建っていると固定資産税の軽減措置を受けられるため、古い空き家を解体せずに放置している方が多いのです。
古い空き家を解体すると、解体費用がかかるうえに固定資産税の軽減措置の特例が適用外となってしまいます。
そのため、所有者は空き家を取り壊すのに躊躇してしまい、結果として空き家の増加につながっています。
ただし、2015年に施行された空家対策特別措置法により、放置された空き家に課税される固定資産税は実質的に増えることとなりました。
関連記事:空き家を放置すると税金が高くなる?特定空き家と固定資産税の関係を解説
このようにさまざまな要因が重なって、地方の空き家はどんどん増加しているのです。
地方の空き家増加は自治体の破綻につながる?
空き家の増加は自治体の破綻にもつながり、一説によると財政破綻ラインは空き家率30%前後といわれています。
実際に、2007年に財政破綻をした北海道夕張市は空き家率が33%でした。
海外においても2013年に財政破綻をしたアメリカのデトロイト市では空き家率29.3%となり、北海道夕張市の事例と同様に空き家率が30%前後です。
現在の日本全国の空き家率は13.6%ですが、野村総研の調査結果によると、このまま対策がうまく進なければ2033年には30.2%になるとの試算もでています。
そうなると地方の自治体どころではなく、日本全体の財政が危機に陥る恐れもあるのです。
では、空き家率の増加がなぜ自治体の財政破綻につながるのでしょうか。
空き家増加が自治体の財政破綻につながる理由
空き家増加が自治体の財政破綻につながる主な理由は、以下の3つです。
●大幅な税収ダウン
●外部不経済
●機会損失
空き家が増加するということはそれだけ人口が減少しているともいえるため、自治体の税収が減り、財政悪化につながります。
また、空き家の増加は外部不経済をもたらし、自治体の財政を圧迫します。
外部不経済とは、経済学で使われる専門用語で、ある法人や個人の経済活動が、市場取引とは別で第三者に不利益・損害を与えることを指します。
所有者が空き家を放置すると、景観が悪化したり、ゴミの不法投棄がされたりなどで、周辺環境に悪影響を及ぼします。
所有者と連絡がつかなければ、行政が近隣住民から対応を迫られることになり、自治体の負担が増えるでしょう。
さらに空き家となっている土地や建物を有効活用できない点も、家主や自治体にとって機会損失となります。
自治体にとっての機会損失とは、空き家があることで住民税が減少し住宅施策が非効率となる点です。
このように、空き家の増加は地域活性化をも妨げるのです。
空き家が多い地方とは?
では、どの地方がもっとも空き家が多いのか気になるところでしょう。
2018年の総務省統計局「住宅・土地統計調査」によると、空き家率の高い都道府県は以下のとおりです。
●1位:山梨県21.3%
●2位:和歌山県20.3%
●3位:長野県19.5%
ただし、この空き家率には空き別荘や賃貸住宅の空き室も含まれます。
そのため、別荘の多い山梨県や長野県が全国平均よりも高くなっています。
地方の空き家増加への解決策とは?
では、地方の空き家増加を解決するには、どのような方法があるのでしょうか。
国や自治体、民間企業は空き家問題について以下のような取り組みをおこなっています。
空家対策特別措置法の制定
「空家対策特別措置法」は2015年に施行された法律で、危険な空き家を「特定空家等」に指定し、さまざまな対策を講じています。
この法律は、特定空家の所有者へ指導・勧告等をおこない自己解決を促すのが主ですが、指導に従わない場合のペナルティも規定しています。
実際に、所有者が行政指導に従わず、行政代執行によって強制解体した空き家もいくつかあるため、お気をつけください。
空き家バンクの運営
空き家バンクは、主に自治体が運営する「空き家所有者と購入または利用希望者をマッチングさせるサービス」です。
各地域の空き家バンク以外にも、全国の空き家を探せるサービスもありますよ。
より多くの空き家活用希望者に対して情報を発信できるため、空き家所有者にとって空き家バンクに登録するメリットは大きいでしょう。
また、近年は自治体独自の取り組みがおこなわれ、公共施設・福祉・観光など、地域に合った空き家の活用法が進んでいます。
民間団体による空き家対策の取り組みも徐々に増えており、モデル事業が各地で推進中なので、今後の空き家問題の解決につながることが期待できますね。
条例の制定や空き家解体費の補助制度
各自治体では空き家問題に関する条例を制定し、空き家対策を図っています。
内容は自治体によって異なりますが、たとえば空き家の解体費用の補助制度や転居用の住宅整備の条例などがあります。
空き家管理サービス
地方の空き家問題の解決策として、民間の空き家管理サービス業も挙げられます。
空き家は定期的な管理が必要ですが、忙しい毎日では継続させるのはむずかしいですよね。
そこで近年、需要が高まっているのが不動産会社等による空き家管理代行サービスで、所有者に代わって空き家を適切に管理します。
基本的な掃除や換気・通水をはじめ、溜まっている郵便物や家の周囲の見回りなど、さまざまなサービスを受けられますよ。
防犯とセットになったサービスもあり、空き家の状態や将来的な活用に合わせてプランを選択することができます。
依頼する空き家管理会社によりますが、基本的な内容であれば月額1万円程度で利用できるため、空き家を放置することによる損失を考えるとお得といえるでしょう。
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まとめ
地方における空き家の急増は、少子高齢化や核家族化など、さまざまな要因が考えられます。
現在は、少しずつ解決策も講じられており、地域によっては空き家率が改善しているケースもありますよ。
個人でできる解決策としては、空き家管理や活用法の検討が初めの一歩といえるでしょう。
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