かつて家や土地などの不動産は、親が子どもに遺したり、子どもも親から相続したりすることがごく当たり前でした。
しかし最近は、様々な事情で親が不動産を遺しても子どもが相続放棄をするケースがあるそうです。
せっかくの財産であるはずの不動産なのに、どうして相続放棄する人がいるんでしょうか?
そして、放棄された家はどうなってしまうんでしょうか?
相続放棄で多い理由は『空き家の管理』に関すること
親から実家を相続する場合、両親のどちらも亡くなって誰も住んでいない=空き家のケースが多いです。
子ども達の誰かが親と同居していたり、相続を機に実家へ戻るのであれば空き家になる可能性は低いですが、たいていは既にみんな独立して自分の家を持っています。
そうなると、自宅と実家の2件分の家を管理しなければならず、その負担は決して軽くありません。
家が傷まないように通水や風通し・掃除・修繕などを定期的に行うことはもちろん、固定資産税も納めなくてはいけないのです。
自宅の住宅ローンや教育費・生活費・老後に備えた貯金などを考えると、空き家になった実家の分までお金をかける余裕はないですよね。
そうした手間を考えて、空き家になった実家を相続放棄する人がいるのです。
空き家を相続人全員が相続放棄するとどんな問題が起きる?
通常、実家を含む財産は相続権を持つ人=相続人が引き継ぎます。
相続権には順位があり、1番目の相続権を持つ人が権利を放棄すると次の順位の人へと移ります。
しかし全ての相続人が放棄してしまうと、当然実家を相続する人はいません。
そうなると、一体誰が空き家を管理するのでしょうか。
相続人全員が空き家を相続放棄した場合、所有者がいない不動産は国が継承すると民法で定められています。(民法第239条第2項)
ですが、ここで「なんだ、国が管理してくれるなら助かった!良かった!」と安心してはいけません。
なぜなら、相続放棄された空き家は所定の手続きを踏まなければ国のものにならないからです。
所有者のいなくなった不動産を国に継承してもらうには、弁護士や司法書士などの第三者を相続財産管理人として立てる必要があります。
そして相続財産管理人の申請が認められれば良いですが、申請が受理されるためには以下の点に注意が必要です。
・家庭裁判所へ相続財産管理人の選任請求を行う
相続財産管理人を立てるための手続きは、まず家庭裁判所に選任請求を申し立てるところから始まります。
普段役所で行う申請などとは違い、慣れない裁判所への申請は簡単なことではありません。
・相続財産管理人が決まるまで空き家の管理責任は元相続人にある
なんとか家庭裁判所へ相続財産管理人の選任請求を申請してひと安心…かと思いきや、そんなことはありません。
実は、相続放棄をしてそのことが認められていても、空き家の管理責任まで放棄することを認められたわけではないんです!
民法では、相続財産管理人が決まるまでの空き家の管理責任は元相続人にあること、元相続人は自宅と同じように空き家を適切に管理することと定めています。(民法第940条第1項)
つまり、相続財産管理人が決まるまでの間に空き家が倒壊したり、もしくは放火や不法投棄などが発生して近所とトラブルになった場合、相続放棄をした人が責任を負わなければいけないんです!
空き家を相続放棄すると他の財産はどうなる?
ところで相続放棄を検討する場合は、空き家となった実家の他、親が生前作った借金などマイナスの財産があるケースが多いでしょう。
いくら親子といえども、そんなマイナスの財産は引き継ぎたくないですよね。
相続放棄をすると、そうした財産を引き継ぐ権利は消滅します。
ただし注意していただきたいのが、相続放棄はプラスの財産も含めて全ての財産を引き継ぐ権利を手放さなければいけないということです。
そのため、親が遺した預貯金・有価証券・貴金属類など価値が高いプラスの財産だけ引き継ぐという都合のいい相続はできないんです。
相続放棄は、マイナスの財産が多い場合に相続人の負担を軽減するために有効ですが、プラスの財産が多い場合は損をする可能性があります。
相続放棄を検討する時は、このことも念頭に置いてよく考えましょう。
空き家は相続放棄を決める前に不動産会社へ相談しよう
空き家の相続放棄は、一見すると不要な財産を手放せるメリットが大きいように見えますが、その裏には簡単に決断しにくい課題があります。
こうした空き家の相続放棄は、一人もしくは相続人である身内だけで悩むのではなく、空き家問題や相続に強い不動産会社へ相談することをおすすめします。
プロの知識とノウハウを基にアドバイスを受けることで、本当に相続放棄することがベストなのかそうでないかが分かりますよ。
また、相続放棄することを決めたら、相続財産管理人が決まるまでの間の実家の管理について相談することもできますよ。
空き家管理を請け負っている不動産会社へ依頼すると、自分でやる手間が省けて負担を軽減できるのでぜひ実践してみてください!
まとめ
空き家の相続放棄は一筋縄ではいかない課題が多く、個人ではなかなか決断しにくいこともあります。
そんな時は、不動産のプロへ相談することで選ぶべき道が見えてくるでしょう。