総務省の「平成 30 年住宅・土地統計調査」によると、日本の空き家は848万9千戸にものぼります。
その数は、平成25年と比べると3.6%(29万3千戸)も増加しており、総住宅数に占める空き家の割合は13.6%と、過去最高となっています。
1958年から年々右肩上がりに増加している空き家数と空き家率ですが、どうして空き家が増えているのでしょうか。
そこで、今回は空き家が増える理由と、固定資産税との関係について、理由ごとの対策を解説します。
ぜひご参考までにご覧ください。
空き家が増えている理由は3つ!
空き家が増える理由として、よく挙げられるのが「少子高齢化問題」です。
人口が減少すれば、もともと人が住んでいた家は住む人がいなくなるため、当然空き家は増えていきます。
しかし、空き家が増える理由はそれ以外にも3つあります。
理由①新築住宅の供給過多
日本は欧米諸国と異なり、新築住宅の人気が高いです。
そのため中古住宅の流通量が少なく、空き家が増える原因の一つとなっています。
国土交通省が平成17年に調べたデータをもとに、中古住宅と新築住宅の割合を日本と欧米諸国で比較してみましょう。
●日本:新築住宅88%、中古住宅12%
●アメリカ:新築住宅23%、中古住宅77%
●イギリス:新築住宅11%、中古住宅89%
●フランス:新築住宅29%、中古住宅71%
上記結果を見ると、欧米諸国に比べて日本は新築住宅の供給が多いことがわかりますね。
ちなみに、平成25年においては中古住宅の流通シェアは約14.7%と増えていますが、それでも欧米諸国と比べると6分の1程度となり、依然として中古住宅の需要は低い水準にあります。
理由②相続問題の発生
空き家所有者の個別の理由として、もっとも多いのが相続問題でしょう。
相続人が一人であればとくに問題ありませんが、複数人いる場合は、誰が不動産を引き継ぐかで争うケースがあります。
遺産分割の争いで裁判にまで発展すると、長期間にわたって所有者が決まらず、結果として空き家になってしまうのです。
また、共同で相続することが決まった場合でも、共同で所有する人全員の同意がなければ売却することができないため、住む人がいなければ空き家となってしまう可能性が高まります。
理由③固定資産税の増加対策
固定資産税は、更地の場合と住宅が建っている場合では、税額が大きく異なります。
更地の場合は、通常の計算式で固定資産税がかかりますが、土地に住宅が建っている場合は特例が適用され、固定資産税が安くなります。
そのため、人が住めないような建物であっても、解体すると固定資産税の特例が受けられなくなることから、空き家のまま保有する方が多いのです。
しかし、平成27年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」により特定空き家に指定された場合は、上述の特例が使えなくなります。
詳しくは次の章で解説します。
空き家が増える理由に固定資産税はどう関係してくる?
先ほどご紹介したように、空き家が増える背景には新築住宅が人気だったり、金銭的な問題や権利関係の問題だったりと、さまざまな要因が重なっています。
また、空き家を処分するにしても、その手続きが複雑で、時間・労力・お金がかかるため、それを理由に仕方なく空き家を放置している方もいるでしょう。
そこで放置された空き家を減らすために、政府が平成27年に施行したのが前章でも述べた空家特措法です。
この法律には「特定空き家に指定された場合は固定資産税軽減措置から除外する」という厳しいルールが盛り込まれています。
通常、土地の上に住宅が建っている場合は特例の対象として、その土地にかかる固定資産税を6分の1に抑えることができます。
ただし、前章でも述べたとおり、家を取り壊して更地にしてしまうと、この特例対象から除外されてしまい、固定資産税がこれまで支払ってきた金額よりもぐっと高くなってしまいます。
解体費用もかかるうえに、更地にしたことで税金も高くなってしまうとなると、空き家でも残しておいたほうが良いと考えてしまいますよね。
しかし、そういう理由で放置されている空き家が多いため、対策として設けられたのが空家特措法なのです。
ちなみに特定空き家とは、放置することが不適切な状態にある建物のことを言い、たとえば以下のような建物に当たります。
●倒壊等著しく保安上危険となる恐れがある空き家
●著しく衛生上有害となる恐れがある空き家
●適切な管理がおこなわれていないことで著しく景観を損なっている状態にある空き家
また、空家特措法では所有者が不明の空き家を、最終的に行政が取り壊すことができると言う定めもあります。
実際、法律施行後は神奈川県横須賀市や大分県別府市、東京都葛飾区、兵庫県明石市など、既にいくつかの自治体で行政による取り壊しが実施されました。
固定資産税を理由に、空き家をそのままにしている方は「特定空き家」に指定されないよう、しっかりと管理をおこないましょう。
空き家が増える理由ごとの対策とは?
空き家が増える理由を3つご紹介しました。
最後にそれぞれの理由について、どのように対策を取れば良いかをご紹介します。
リフォームして有効活用
新築住宅の供給過多で空き家が増加しているという理由については、空き家を積極的にリフォームして、欧米諸国のように既存住宅の流通を促進することが対策になるでしょう。
実際に、政府も既存住宅市場の活性化に向けて、既存住宅流通・リフォーム市場の環境整備を進めていくとしています。
また、国土交通省は「既存住宅・リフォーム市場の活性化に向けた支援策」として、たとえば以下のような取り組みをおこなっています。
●消費者が安心してリフォームができる市場環境の整備
●検査と保証がセットになった既存住宅・リフォーム用の保険制度の整備
●住宅リフォームの推進のための税制措置
「消費者が安心してリフォームができる市場環境の整備」については、リフォームに関する電話相談や、各地の弁護士会における専門家相談制度の取り組みなどを進めています。
「検査と保証がセットになった既存住宅・リフォーム用の保険制度の整備」では、専門家による建物検査(インスペクション)と保証がセットになった保険制度を用意することで、消費者が安心して既存住宅を購入したり、リフォームしたりできるようにしています。
「住宅リフォームの推進のための税制措置」では、住宅のリフォームにあたって、所得税や固定資産税等の各税制の特例措置を講じています。
相続トラブルは早めに専門家に相談
相続トラブルが理由で相続した家が空き家になりそうな場合は、相続人同士で話がこじれる前に専門家に相談することをおすすめします。
地域によっては、相続に関する無料相談会を定期的におこなっている自治体もありますので、問い合わせてみると良いでしょう。
また、令和6年には相続登記が義務化されるのにともなって、土地が共有状態とならないようにするために新たな制度が創設される予定です。
法改正によって、今後は相続問題による空き家の発生は少なくなることが期待できるでしょう。
適切に管理する
前章でも述べたとおり、空き家を処分せずに放置していると特定空き家に指定され、結果的に納税しなければならない固定資産税額が上がります。
特定空き家に指定されないようにするためには、空き家を適切に管理する必要があります。
空き家の管理とは、たとえば家が傷まないように換気や通水・掃除をしっかりおこなうことや、庭の草木を手入れすることです。
とはいえ、遠方に住んでいたり、体力的な問題で自己管理ができなかったりするといった事情もあるでしょう。
そうした場合は、費用はかかりますが、空き家管理を専門とする業者にお願いすると良いでしょう。
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