近年、都市、地方問わずに空き家が増加しており、東京都でも一部自治体では空き家バンクを実施しています。
そのような空き家に悩む都市は東京だけではなく、大阪府でも空き家問題が深刻化しており、府全体でこの問題に取り組んでいます。
今回は大阪府の空き家の現状についてご紹介します。
大阪府でも空き家が増えている!?
2021年10月1日現在、881万人以上の人が暮らす大阪府は、西日本の中心都市と言っても過言ではないほど栄えている地域です。
とくに府庁所在地の大阪市は、キタの梅田・ミナミの難波や、心斎橋・道頓堀・天王寺など、観光地としても人気の大きな繁華街があるくらい賑わっています。
また、大阪市近郊の街もベッドタウンとして開発が進み、老若男女問わず暮らしやすい環境が整っています。
さらに、大阪府には関西国際空港や東海道新幹線が停車する新大阪駅もあって、国内外を問わずあちこちにアクセスしやすいのも魅力です。
そんな魅力たっぷりの大阪府でも、実は空き家に悩んでいるそうです。
総務省統計局が5年ごとに実施する「住宅・土地統計調査」の最新の統計である「平成30年住宅・土地統計調査」によると、大阪府の総住宅数468万200戸のうち、空き家数は70万9,400戸、空き家率は15.2%を記録しています。
「平成30年住宅・土地統計調査」での全国の空き家率は13.6%ですから、大阪府の空き家率は、全国平均を上回っていることになります。
また、昭和38年の空き家率は2.9%だったことを考えると、58年間で空き家率が5倍以上も上昇しているのです。
種類別の空き家の統計では、賃貸用住宅が45万3,900戸で、空き家全体の64.0%、売却用の住宅が3万5,800戸で5.0%となっています。
このほか、別荘やセカンドハウスなどを含む二次的住宅は1万600戸で1.5%、用途が定まっていない「その他の住宅」が20万9,200戸で29.5%となっています。
この結果からは、賃貸用と売却用など、不動産市場に流通している空き家が約7割を占めている半面、「その他の住宅」が空き家全体の3割もあることがうかがえます。
「その他の住宅」は、活用方法が決まっていないため、管理が行き届きにくく、周辺地域の環境に悪影響を及ぼす「特定空き家」となりやすいことが指摘されています。
そのような「その他の住宅」の空き家が20万戸以上、空き家全体のおよそ3割を占めているということは、大阪府にとって空き家問題が看過できない社会問題となっていると言えそうです。
大阪府が考えた空き家の現状を打開する取り組みとは
このように人口が集中する大阪府でも、増え続ける空き家が大きな問題となっています。
こうした現状を打開するため、大阪府は2016年(平成28年)12月に『空家総合戦略・大阪』を策定しました。
この戦略は、元より大阪府が策定していた『住まうビジョン・大阪』に基づき、空き家の適正管理や除去の促進、空き家の利活用による居住魅力の向上や、中古住宅流通市場の活性化に向けた取り組みでした。
大阪府はこれらの取り組みを通じて、府内各市町村の体制整備をはじめとした空き家対策の骨格がある程度完成したとして、2019年、新たに『空家総合戦略・大阪2019』を掲げています。
『空家総合戦略・大阪2019』では、これまでの成果と課題、そして平成30年の大阪北部地震と台風21号という災害の経験を踏まえ、『住まうビジョン・大阪』の実現に向けて2021年にかけての空き家対策の充実を促進することを目指しています。
具体的な施策としては、空き家の適正管理や空き家対策によるまちづくりの促進について、特定空き家等に対する措置や空き家対策のための公民連携、空き家対策によるまちづくりの取り組みを全市町村で実施することを目標としています。
また、中古住宅市場について、売買された中古戸建てのインスペクションの実施率を向上させたり、災害を教訓とした空き家対策を強化したりすることにも取り組んでいくとしています。
『空家総合戦略・大阪』のほかにも、大阪府では空き家対策として、空家実態把握調査の実施、空き家対策の計画の策定、空き家バンクの設置、大阪の住まい活性化フォーラムの実施、空き家に関する窓口相談などの取り組みを実施しています。
ここで、「大阪の住まい活性化フォーラム」について触れておきましょう。
「大阪の住まい活性化フォーラム」は、『住まうビジョン・大阪』の実現に向けて、おもに中古住宅の流通や、リフォーム・リノベーション市場の活性化を図ることを目的として立ち上げられました。
事業内容としては、府民や事業者への情報提供や中古住宅やリフォーム・リノベーション市場の環境整備、これらに関する調査や研究などが挙げられます。
これらの活動には、空き家や住まいに関する相談窓口の設置や、中古住宅流通を支える制度の紹介、地方自治体や公的機関による住まいの支援制度検索システムなどがあります。
続いて、大阪府内の空き家に関する相談についてもご紹介しましょう。
府内の各市町村の担当課では所有している空き家に関する一般的な相談について、「大阪の住まい活性フォーラム」では空き家の有効活用方法や中古住宅の売買、リフォームについて相談することができます。
大阪府内の空き家に関する相談は、各市町村の相談窓口および「大阪の住まい活性化フォーラム」にて受け付けています。
大阪府内で空き家の活用や中古住宅売買、リフォーム・リノベーションにお困りでしたら、活用してみてはいかがでしょうか。
(大阪府内各市区町村の相談窓口一覧:大阪府/所有している空家に関する相談窓口一覧 )
(「大阪の住まい活性フォーラム」相談窓口:相談窓口 | 大阪の住まい活性化フォーラム)
大阪版・空き家バンクがあります!
ところで、空き家問題を解決する代表的な取り組みとして、空き家バンクがあります。
現状では市町村などの自治体が主体となって運用しているケースが一般的ですが、大阪府では2017年(平成29年)3月に、市町村ではなく府として運用する空き家バンクをスタートさせました。
参考ページ:大阪版・空家バンク大阪版・空家バンク
大阪版では、府内にある空き家情報の登録や物件紹介だけでなく、空き家活用の参考例や街の魅力紹介などのコンテンツを設けて、より多くの人が利用しやすいようになっています。
たとえば、街の魅力紹介では、市町村別だけでなく子育て・仕事・自然・医療など、ジャンル別で知りたい情報から希望に合った街を探すことができます。
つまり、府外から引っ越してくる予定の人がこれらの情報を見て「この街に住みたい!」と興味を持って住む地域を決めることができるわけです。
住みたい地域が決まれば、その地域にある空き家情報を検索して気になる物件をチェックすることもできるので便利です。
各物件情報は、築年月・間取り・敷地面積などの基本情報から利用可能なライフライン情報まで掲載されているので、「この家に住みたい!」と思える物件を見つけやすいでしょう
大阪府が考える今後の空き家対策
大阪府では、現状ある空き家対策だけでなく、将来的な空き家対策にも力を入れています。
たとえば、現在市場に出回っている空き家は、インスペクションをおこなったり、民間賃貸物件のリフォームやリノベーションを進めたりするといった対策を目指しています。
一方、市場に出回っていない空き家は、「売る・貸す・解体する」のいずれかの方法で活用するか、管理サービスを利用して適切に維持するなどの方法があります。
また、空き家を放置しっぱなしの持ち主には、「どうして放置するといけないのか、放置し続けるとどうなるか」というポイントを解説したパンフレットの制作にも取り組んでいます。
今だけでなく、今後のことも見据えて対策をおこなえばきっと今より空き家の数も減って、さらに元気で活気のある大阪府となるかもしれませんね。
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