本メディアのなかで空き家を放置しておけない行政による執行行為として、行政代執行という言葉をよく耳にします。
本来空き家は私有地(私有物件)のため行政が解体をできない前提ですが、行政権として一線を超えるにはどのような条件が必要なのでしょうか。
また行政代執行に関連するあらたな法改正も出てきていますので、判明している部分を解説します。
実際の行政代執行の手順についても触れながら、リスクを分析していきましょう。
01空き家対策特別措置法を再確認
空き家対策特別措置法は平成26年に制定されました。全国には誰も居住しておらず、劣化などの理由で衛生的・治安的に周辺環境の悪化を導く物件を「特定空き家」の対象とします。
特定空き家に指定されると行政から助言・指導が行われ、それでも問題が解決しない場合には行政による解体指示に進みます。
行政代執行までのプロセス
行政代執行までは以下のプロセスで進んでいきます。空き家の実態調査 | 行政は空き家の実態調査を進めることができます |
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空き家の所有者へ適切な管理の指導 | 行政は空き家の管理において、所有者に指導することができます |
空き家の跡地における活用促進 | 行政は跡地活用について活用促進のアドバイスをすることができます |
特定空き家の指定 | 行政の権限で特定空き家の指定をすることができます |
特定空き家に対する助言・指導・命令 | 特定空き家について助言・指導・命令ができます |
特定空き家に対する罰金・行政代執行 | 助言や指導をしても状況の変わらない |
このなかで特定空き家を指定する条件は、以下の3点です。
倒壊のリスクがある
建物に倒壊のリスクがある場合です。建物自体のみならず、屋根の瓦や窓ガラスなどが通行者に怪我をさせるリスクもあります。
景観の阻害
雑草や樹木が道にはみ出したり、建物自体が老朽化しているケースです。ゴミの散乱や火災のリスクなどから判断されます。行政の判断とは別に、町内会から話が持ち込まれるケースもあるようです。
特に亡くなった親が居住していた物件は要注意です。
管理の不十分
現時点の所有者が居住する物件の近くに空き家があればいいですが、相続物件のように距離的に遠いと管理がおよばない物件になりがちです。特定空き家の指定を受けないように、管理業務を外注するなどの対策を考えましょう。
02行政代執行まで至ったときのデメリット
一定の土地所有者にとって、行政代執行の対象物件を解体できないのは理由があります。実家など想い出の建物だから解体する気になれない、家族のなかに解体に反対する人がいるなどの感情的な部分を除くと、多いのは「解体する費用がない」という理由です。
ならば言い方は悪いですが行政が勝手に解体してくれる行政代執行は、渡りに船ではないのでしょうか。
行政代執行の費用は土地所有者持ち
当然ながら、行政代執行の費用は土地所有者持ちです。行政当局が選んだ業者の費用が後ほど請求されます。
支払を拒んだとしても、差押による強制力を持った請求となるので注意しましょう。
この費用はもちろん底値とは限らず、割高な費用を支払うことになる可能性があります。
管理不全空き家制度により厳格化の見込み
2015年の制定依頼、空き家対策特措法により200件を超える行政代執行が行われても、空き家問題は根本的な解決を見せていません。なお、この200件は所有者が明らかな行政代執行と、所有者が不明な略式代執行を含みます。
より根本的な制度設計を検討していた国は2023年6月、参議院による決議で空き家対策特措法の改正案が可決・成立しました。
改正法では放置すれば特定空き家になるおそれがある物件をあらたに「管理不全空き家」として指定し、状況が改善されない場合に固定資産税や都市計画税の減免対象から外します。
特定空き家との大きな違いは、これまでは行政による支援や指導があり、はじめて特定空き家に認定することができました。
管理不全空き家では、特定空き家への指定可能性があるとすぐに固定資産税等が減免される可能性が示唆されています。
もちろん実務上のスピード感は不明です。
ただ、土地所有者にとって管理できていない空き家は早急に対処することが求められます。
これは行政の担当者の保護も兼ねています。
私権侵害に対し、裁判も辞さない態度で行政代執行の濫用を訴えてくる事例も跡を絶たないようです。
行政代執行を巡る動きが、段階的に大きく変わることになるでしょう。
新聞報道によると、改正案の施行は約半年後、2023年年末までを予定しているとのことです。
私権である土地の所有権に対し行政の「詰め方」には少々驚きますが、それだけ空き家問題が喫緊の課題と認識されていることを示しています。
具体的な情報が出てくれば、土地所有者の取るべき対処方法もより具体化してくることでしょう。
土地所有権という私権を侵食する行政代執行は、行政にとって伝家の宝刀です。
執行した暁は土地所有者と行政の関係性も、健全な距離感では無くなることも多いです。
強制的な方法で解除とならないように、土地所有者としては行政の対応にも気を配っていきましょう。
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