令和6年4月1日から相続登記が義務化されます。
相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請しないと、10万円以下の過料が科されてしまいます。
これは所有者が不明な土地の問題や空き家問題が背景です。
相続登記が義務化されると、空き家の管理の責任所在が明確になります。
管理不全で相続人の固定資産税が約6倍になることのないように、親族間で対策を話し合うことが大切です。
01相続登記が義務化された背景
全国で登記が古いため、土地の所有者が不明となっている問題があります。その面積は九州よりも広く、国土の約22%(平成29年度国土交通省)にも及びます。
今後、少子高齢化が進んでいくと、さらに所有者不明土地が増えていくと予想されています。
所有者不明土地が生じる原因は次のとおりです。
・相続の際に、土地の名義を変更する登記が行われないこと
・所有者が転居で住所が変わったときに、変更の登記が行われないこと
所有者が不明か相続で分かりにくい状態が続くと、土地が管理されず放置され、環境悪化や治安上の問題を引き起こし、近隣の住民に不安を与え迷惑をかけることになりかねません。
また、豪雨災害などの防災対策工事やその他の公共事業などが必要になっても所有者が分からないために、時間がかかってしまいます。
所有者不明土地の問題は、土地の有効活用を妨げる要因になります。
参考:政府広報オンライン|なくそう、所有者不明土地!所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わります!
02相続登記義務化の内容
令和6年4月からの義務化される相続登記のルールでは、相続(遺言をむ)によって土地や家屋などの不動産を相続して取得した人は、取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなりません。義務化は、これまで既に相続が発生していて不動産を取得している場合も含みます。
また、遺産分割協議を行った結果話し合いがまとまった場合には、遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた登記が必要です。
この2つの義務に正当な理由がなく違反した場合は、10万円以内の過料が課されることになります。
03相続人申告登記
相続に時間がかかることはよくあります。遺産分割協議に時間がかかる場合には、救済措置が設けられました。
協議に時間がかかりそうな場合は、個人でも猶予の手続きができます。
また、法務局に対し次の申し出を行えば、相続登記の申請義務を履行したことになります。
・登記簿上の所有者が亡くなり相続が開始したこと
・自らが相続人であることを申し出ること
この相続人申告登記の申し出を行うと、申し出をした相続人の氏名と住所が登記されることになります。
ただし、取得した不動産の持分割合は登記されない点には注意しましょう。
なお、相続人申告登記では、相続により権利を取得したことまでは公示されません。
しっかり所有権を登記する相続登記とは異なることは押さえておきましょう。
04住所等の変更登記の義務化(令和8年4月までに施行)
登記簿に記載されている不動産の所有者は、住所や氏名が古いことがあります。これでは現在の所有者にたどり着くのが困難な場合があります。
このため、令和8年4月までに住所や氏名が変更されれば、その都度変更登記の申請が義務化されることになりました。
正当な理由がなく申請をしない場合には、5万円以下の過料が課される可能性があります。
これも不動産の所有者をできるだけ容易に把握しようとするための措置です。
05相続登記と免税
国は相続登記を税制面からも支援しています。相続登記に必要な登録免許税を令和7年3月末まで減免しています。
その条件は次のとおりです。
・相続により土地を取得した人が相続登記をせずに死亡した場合、現在の相続人が行う相続登記
・不動産の価額が100万円以下の土地にかかる相続登記(所有権保存の登記を含む)
税制面からも、登記の後押しがされているのです。
06空き家問題で固定資産税や撤去費用の負担が増大
国は所有者不明土地や空き家問題を解決するために、特定空き家や管理不全空き家に認定されると固定資産税の軽減措置を受けられない措置を実施予定です。宅地の軽減措置が適用されず固定資産税が6倍になるなど負担が重くのしかかります。
また、空き家の適正な管理に関する指導や勧告に従わない場合は、最終的に行政により撤去が行われ所有者に費用が請求される場合があります。
空き家を放置していることは大きなリスクと言わざるを得ません。
空き家と固定資産税の特例措置について詳しく知りたい場合はこちらをお読みください。
空き家にかかる固定資産税の仕組みと特例措置を解説
07空き家の管理はまったなし
令和6年4月から相続登記が義務化され、空き家の所有者が明確になります。今後は、引っ越しや結婚などで、住所氏名が変更になった場合にも変更登記が義務化される予定です。
この結果、登記後にもし相続した空き家を放置しておくと所有者の特定が容易に行われてしまいます。
所有者がはっきりすれば、空き家の適切管理を求められたり、行政代執行で撤去される場合にかかった費用の代弁を求められたりすることが増えるでしょう。
そうならないためには、空き家の適正な管理が必要です。
相続で取得した空き家はこれまで以上に管理していかなければなりません。
また、相続登記の義務化は、これから相続が発生する不動産だけではなく、既に相続で取得した物件にも適用されます。
相続して未登記の物件があれば、早急に登記の手続きを依頼し、特定空き家や管理不全空き家などに認定されないような対策を考えましょう。
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今空き家管理でお困りの方は、ぜひ全国空き家管理ナビを利用して、自分に合う専門業者を探して相談しましょう。
出典:
政府広報オンライン|なくそう、所有者不明土地!所有者不明土地!所有者不明土地の解消に向けて、不動産に関するルールが大きく変わります!
法務省 あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
法務省 所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)