日本の空き家対策は空家等対策特別措置法を中心に法整備が進んでいます。
一部では効果を上げているものの、課題や問題点も浮かび上がってきました。
国も国土交通省を中心に空き家対策の現状と課題を把握しようとしています。
空き家対策の現状とその課題についてまとめてみました。
01市町村が抱える問題点
空き家問題を解決しようと最前線で活動しているのは市町村の担当者です。役所の担当者とはいえ、万能ではありません。
市町村も限られた人員と予算の中で活動しています。
市町村が抱える空き家対策の問題点を、国土交通省の資料から読み解きます。
マンパワー不足
国土交通省は令和4年10月に「国土交通省空き家政策の現状と課題及び検討の方向性」を取りまとめました。この資料によると6割以上の市区町村でマンパワー不足、つまり人手が足りないと返答しています。
多くの市町村では総務課や税務課の担当者が空き家問題を担当しています。
十分な人員を確保できていない、他業務との兼ね合いで空き家対策に時間を割くことができない、といった現状が垣間見えます。
担当者の知識不足
空家等対策特別措置法が制定されてからまだ10年足らず。以前から問題視されていたとはいえ、空き家問題は比較的新しい問題です。
また、税務課で固定資産税でも担当していなければ、家屋への知識が乏しい担当者もいます。
不動産に関わるには不動産独自の制度や法令への理解が必要です。
慣れない業務への知識と経験の乏しさが空き家対策には立ちはだかっています。
外部へ委託
国交省の資料によれば、市区町村の3割近くが空き家対策の業務の一部を外部へ委託しています。アウトソーシング自体は問題ありません。
外部のノウハウを導入して空き家の調査や有効活用を模索することはメリットです。
特にマンパワー不足の市町村ではむしろ積極的に活用すべきでしょう。
その反面、外部に頼っているといつまでたっても市町村やその担当者の経験が増えていきません。
外部委託にはメリットとデメリットが存在します。
02所有者が抱える問題点
市町村が人手不足や知識不足で苦労している中で、空き家の所有者も同じように苦労しています。多くの人は思いがけず空き家の所有者になっているはずです。
空き家は所有しているだけでも維持費や税金がかかります。
当事者のひとりである所有者が抱える問題もみていきましょう。
維持管理が困難
空き家は所有しているだけでお金と手間がかかりもの。固定資産税は毎年かかり、庭があれば草木の手入れも必要です。
空き家が近所であればまだしも、空き家と自宅が離れていると管理するだけでも大変です。
使う予定のない空き家、相続などで思いがけず手にした空き家では管理のモチベーションもあがりません。
経済的にも心情的にも空き家を維持していくのは困難が伴います。
解体費用が高額
空き家をなくすためには売却か解体が一般的。売却ができないとなると解体が検討されます。
ところが、この解体費用は毎年のように上昇しています。
解体費用も近年の人件費の上昇やゴミの分別と無関係ではないのです。
また、建物を除却すると土地の固定資産税が上昇する問題もあります。
高額な解体費用と固定資産税の問題から解体に二の足を踏んでしまうのです。
そもそも把握していない・問題意識が希薄なこともある
空き家問題が取りざたされていても、そもそも自分が空き家の所有者であることを把握していない場合もあります。相続登記が適正になされていない所有者不明不動産の問題です。
空き家が遠く離れていると空き家への問題意識が希薄になることもあります。
03問題点を克服する解決策は
空き家問題は国全体の問題です。とはいえ、対策をしなければどんどん悪化していきます。
国も空家等対策特別措置法を改正する動きをみせており、対策もとられつつあります。
空き家問題を克服するためにはどのような解決策が必要なのか、みていきましょう。
空き家発生の予防
そもそも空き家を発生させなければよい、という考え方です。神戸市では所有者の啓発のため、相続時に案内文を送付しています。
税制としても早期に空き家を売却、除却した場合に譲渡所得から3,000万円を控除する制度もあります。
空き家発生の予防は少しずつですが進捗中です。
活用促進
空き家バンクや空き家相談センターの設置がこれに該当します。空き家を減らすには空き家を活用したい人に情報を提供することも必要です。
空き家バンクはこの5年間で参加市町村が約2倍、掲載物件数は4.7倍になっています。
空き家に関する情報が蓄積しつつあります。
管理の適正化と除却の推進
空き家の所有者への啓発活動、空き家になる前段階での相談などが該当します。個々の空き家を管理しているのは所有者。
市町村はすべてをカバーできません。
除却も推進したいところです。
ただ、除却には高額な費用がかかります。
補助金などで一部を補助してくれる制度などが期待されます。
04まとめ
空家等対策特別措置法が制定されておよそ10年。空き家問題自体は多くの人が知るところとなりました。
一方で市町村や所有者の問題点も浮かび上がっています。
限られた人員と予算の中でどういった手段が効果的なのか、試行錯誤の連続です。
市町村独自の取り組みも多くあることから、その中から全国的に通用する制度の登場が待たれます。
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