空き家を相続する際に知っておくべきリスクと対策を解説

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空き家を相続すると、単に管理の負担が増えるだけでなく、税負担などのリスクも発生します。

また、相続の機会は何度もないのでどうしてよいか戸惑うことがあるかもしれません。

本記事では相続の基礎知識と行うべき対策を解説します。空き家の相続で活用できる制度も紹介するので参考にしてください。

01空き家を相続する理由

日本中で空き家が増えています。
賃貸用や売却用を除き個人が住まなくなった空き家の数は30年で2倍以上です。

空き家となる原因は、住んでいた人が亡くなったり引っ越ししたりすることや、故郷の実家を相続した子などが住まないことなどがあります。

子どもは独立して親元を離れると、自宅を取得したり賃貸住宅に住むことが多いので、実家に住むがいなくなると空き家になってしまいます。
そのため、親が亡くなると住んでいた家が空き家になってしまうことは十分に考えられるでしょう。

現在は親が健在でも、将来起こりうることとして考えておかなければならないことでもあります。
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02相続登記の申請の義務化

空き家の相続でまず考えなければいけないのは、登記の問題です。

令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。
相続や遺言によって不動産を取得した場合は、相続したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

正当な理由がなく申請しない場合には、10万円以下の過料が科されます。
相続した不動産を登記せずに放置しておくことはできなくなりました。
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03空き家を相続する際のリスク

空き家はただ相続しておけば良いものではありません。
適切に管理しないとリスクが発生する恐れがあります。

空き家を相続する際のリスクには次のものがあります。

1.近隣住民に迷惑をかける
2.特定空き家に認定される
3.固定資産税などの負担が増える




1.近隣住民に迷惑をかける

空き家になることにより、草木が生い茂ったり家屋が壊れたりすると、周囲の景観に悪影響を与えます。
また、害虫や野良犬猫が住みつく可能性もあるでしょう。

周囲の住民に迷惑をかける事態となると、適切な管理を求められ、損害を与えてしまった場合には賠償費用が発生する場合があります。



2.特定空き家に認定される

管理の行き届かない空き家は、空家等対策の推進に関する特別措置法により特定空き家に認定される恐れがあります。

特定空き家に認定されると、自治体から所有者に対し適切に管理をするように助言や指導が行われ、それに従わない場合は勧告や命令ののち最大50万円以下の過料に処される場合があります。
また、特定空き家は、次に述べるように特例が受けられず固定資産税などの負担が増える可能性があるので注意が必要です。



3.固定資産税などの負担が増える

特定空き家に認定されると、固定資産税などの税負担が増えます。
土地を所有すると固定資産税や都市計画税などがかかります。

一定の面積以下であれば住宅の敷地には負担を軽減する特例制度があり、これは実際に住んでいるかどうかは問われません。
しかし、空家法で特定空き家に認定されたり、適切な管理がされないと認められたりする場合は、この特例が適用されないのです。

まず、それぞれの税率は次のとおりです。
・固定資産税の税率は原則1.4%
・都市計画税の税率は最大0.3%


都市計画税は都市計画区域内で自治体が定めるエリアでのみ課税されます。
また、それぞれの税率は自治体によって異なる場合があります。


参考:総務省|地方税制度|都市計画税

また、住宅用地の特例をまとめると次のようになります。
住宅用地の特例
区分 固定資産税の減額割合 都市計画税の減額割合
一般住宅用地
(200平方メートルを超える部分)
固定資産評価額の1/3 固定資産評価額の2/3
小規模用住宅用地
(200平方メートルを以下の部分)
固定資産評価額の1/6 固定資産評価額の1/3

特定空き家に認定されると、この特例が適用されないので固定資産税が約6倍に、都市計画税が約3倍になる場合があります。
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04空き家を相続したときにすべき対応

相続財産は、金銭や権利・不動産のみではありません。
借金など債務があればこれも相続の対象となる点に注意が必要です。

相続する人が不利にならないため、手続きには次の3種類があります。

1.単純承認(すべての財産をそのまま引き継ぐこと)
2.限定承認(財産の範囲内で債務を引き継ぐこと)
3.相続放棄(すべての財産を相続しないこと)


限定承認と相続放棄は、相続が発生したことを知ってから3か月以内に手続きが必要です。
また、相続放棄すれば空き家の管理責任を免れるわけではありません。

注意しなければならないのは、相続を放棄しても空き家の管理責任は残ることです。
ほかに相続する人がいなければ、空き家の管理責任は無くなりません。
相続放棄したら終わりではないのです。

どの相続手続きをするか判断するには、まず不動産の資産価値を確認して対策を考える必要があります。
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05資産価値がある場合の対応

土地や家屋などの不動産を相続したら、まずは資産価値を確かめることが大切です。
近くの不動産会社やネットでの情報・近所での口コミなどで売買の実績があるかを確認するのがよいでしょう。

資産価値と判断される場合は、次のような対応ができます。

1.売却する
2.賃貸する


資産に価値がある場合は、そのまま売却や賃貸ができる可能性があります。
また、売却価格や賃貸料金のアップが見込めれば、必要な箇所を修繕したり別の用途用にリノベーションしたりするのもよいでしょう。

部屋の間取りを変更しての店舗用物件や民泊施設などにするなど用途の変更も考えられます。
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06資産価値がない場合の対応

資産価値がないと判断した場合の対応は次のとおりです。

1.解体する
2.寄附する
3.相続放棄する


建物の老朽化が激しかったり立地条件が悪かったりして売却や賃貸が難しい物件は、資産価値がないと判断されます。
この場合は、建物を解体しての立て直しや駐車場やコンテナハウスにして活用することも考えなければなりません。

また、解体費用をかけたくなければ、自治体などに寄付することも考えられます。
ただし、自治体が必ずしも寄附を受けてくれるわけではない点には注意が必要です。

もしも、解体や寄附の目処がたたず活用できないのであれば、相続放棄することになります。
この場合でも、ほかに相続する人がいなければ管理責任は残ってしまうのは前述したとおりです。
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07空き家の相続対策で利用できる制度

最後に、空き家を相続する際に利用できる制度についても押さえておきましょう。
税制上の優遇制度や相続した土地を国が引き取る制度があります。

1.相続税の小規模宅地の80%軽減特例
2.譲渡所得税の3,000万円特例
3.相続土地の国庫帰属制度


順番に解説していきます。



1.相続税の小規模宅地の80%軽減特例

相続税の小規模宅地等の特例とは、相続した土地の相続税評価額を80%まで減額できる制度です。

たとえば、亡くなった人が住んでいた土地の評価額が2,000万円だった場合は、条件により評価額を400万円にまで引き下げられます。
相続税を計算する上で非常に有利な特例です。

特例の内容は、亡くなった人の土地が事業用だったか居住用だったかによって異なります。
それぞれの軽減内容は次のとおりです。
相続時の利用区分 上限面積 減額割合
自宅の土地などの居住用 330平方メートル 80%
工場や店舗などの事業用 400平方メートル 80%
駐車場やアパートなどの貸付用 200平方メートル 50%
国税庁サイトより著者作成


参考 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁



2.譲渡所得税の3,000万円特例

譲渡所得の3,000万円の特例とは、相続などによって取得した空き家や敷地を売却した場合に、一定の要件を満たしていれば最大3,000万円の特別控除を受けられる制度です。
土地や家屋の譲渡は、次の算式で計算されます。

譲渡課税所得金額 = 収入金額 ー 取得費 ー 譲渡費用 ー 特別控除額

売却する際に発生する譲渡益が3,000万円以下であれば課税されないので有利です。


参考:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁



3.相続土地の国庫帰属制度

相続した土地が遠くにあって管理できない場合や管理に負担がかかりすぎる場合には、他に使用者がいない、抵当権が設定されていないなど一定の要件を満たせば、国に引き渡せるようになりました。

相続土地国庫帰属制度は、土地が放置されたり所有者不明となることを防ぐ目的で、令和5年4月27日からはじまった制度です。


参考:法務省:相続土地国庫帰属制度について
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08まとめ

本記事では空き家を相続した際に発生するリスクと対応などについて解説しました。
令和6年4月から相続登記の義務化が予定され、空き家を放置しておけない状況になっています。

放置するリスクは次の3つでした。

1.近隣住民に迷惑をかける
2.特定空き家に認定される
3.固定資産税などの負担が増える



空き家を相続したら、資産価値の有無によって売却賃貸するか、解体寄附するかなど対策を考える必要があります。
また、空き家には次のような特例があります。

1.相続税の小規模宅地の80%軽減特例
2.譲渡所得税の3,000万円特例
3.相続土地の国庫帰属制度


空き家を相続したら放置せず、税負担などのリスクを避けるために資産価値を見極めた上で早めの対策を取りましょう。


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出典
国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報 - 住宅
政府広報オンライン 年々増え続ける空き家! 空き家にしないためのポイントは?
法務省 相続土地国庫帰属制度について
法務省 あなたと家族をつなぐ相続登記 ~相続登記・遺産分割を進めましょう~
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