相続などで空き家を所有したまま放置して、対策を先延ばしにしていませんか。
これまでは空き家を所有しても固定資産税の負担も少なく、あまり問題になりませんでした。
しかし、全国で空き家問題がニュースとなり、税制上の優遇措置も見直されようとしています。
今後の対策を考える上で、まずは現在の優遇措置を整理しておく必要があるでしょう。
最新の動向を踏まえて今からできることも解説するので、ぜひ参考にしてください。
01空き家問題とは
年々増え続ける空き家の管理が行き届かない問題に対し、平成27年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されました。この法律では、倒壊など保安上危険となる恐れがあり周辺環境に悪影響を及ぼす等、管理の行き届いていない空き家に対し、「特定空家等」の認定ができるようになりました。
特定空家等には、現実に著しく保安上危険または衛生上有害な状態にあるものだけでなく、そのような状態になると予想されるものも含まれます。
特定空家等に認定されると自治体から所有者に、次のような行政処分がされます。
1.所有者に適切に管理をするよう助言や指導
2.改善が見られない場合は勧告や命令
3.命令に従わなければ、最大50万円以下の過料
このような処分があるため、空き家の所有者は取り壊しなどの費用負担が発生し、後述するようにこれまで享受してきた固定資産税の減額も受けられないなど、金銭的負担が増える可能性があります。

02税制の優遇措置
現在、空き家などに対しては固定資産税の減額などの税制上の優遇措置が設けられています。この措置は全ての場合で受けられるものではないので、条件をしっかり確認しておく必要があります。
また、空き家を売却する際の特別控除制度は、今後税制改正が予定されているので、その内容も押さえておきましょう。
税制優遇措置には、次の2つがあります。
1.固定資産税等の住宅用地の特例
2.空き家の譲渡所得3千万円の特例(令和5年度税制改正)
1.固定資産税等の住宅用地の特例
土地や家屋を所有していると、固定資産税や都市計画税が課税されます。これらは都や市町村へ納める地方税で、住宅用地には次のような特例制度が設けられています。
区分 | 内容 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき 200平方メートルまでの部分 |
課税標準額×1/6 | 課税標準額×1/3 |
一般住宅用地 | 小規模住宅用地以外の 住宅用地 |
課税標準額×1/3 | 課税標準額×2/3 |
住宅用地は、住宅1戸につき200平方メートルまでの部分の固定資産税の課税標準額は1/6に、都市計画税は1/3に減額されます。
また、200平方メートルを超える場合の割合は、固定資産税の課税標準額は1/3、都市計画税は2/3です。この制度では実際に住んでいなくても固定資産税等が減額されるため、空き家が放置される原因となっているといわれています。
しかし、平成27年の税制改正により、空家対策措置法による勧告の対象となった特定空家等に係る土地は、この特例の対象から外されることになりました。
これからは特定空き家に認定されると、固定資産税等が最大6倍になる可能性があるのです。
2.空き家の譲渡特別控除3千万円の特例(令和5年度税制改正)
次は、相続した空き家などを売却する際の特例措置です。一定の条件の空き家の譲渡には、特別控除3千万円の特例があります。
通常、土地や家屋を譲渡した際には、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、所得税と住民税をあわせて約20%の税率がかかります。
例えば、3千万円の譲渡所得に対して20%の税率をかけると、次のとおり約600万円の税負担が発生するのです。
3,000万円×20%=600万円
もしこの特別控除を活用できれば、6百万円分の税負担が軽減されます。
この制度は、相続で取得した空き家が放置されないように売却を容易にする目的で設けられました。
適用期間は令和5年12月末までだったのですが、令和4年末に発表された税制改革大綱では、令和9年末までに延長されました。
この制度により、相続などで取得した居住用の家屋や敷地等を売却する際の譲渡所得から、最大3千万円まで控除することが可能です。
令和5年度制度改正後の主な条件は次のとおりです。
1.相続開始の直前(老人ホーム等に入所の場合は入所の直前)まで被相続人が住んでいて、被相続人以外は住んでいなかったこと
2.相続開始から譲渡の時までに事業や貸付け、また居住のために使用されていないこと
3.耐震基準を満たした家屋、または取壊した後の土地を譲渡していること
4.昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること
5.相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したこと
6.譲渡価格が1億円以下であること
7.譲渡年の翌年2月15日までに取壊し、または耐震補強しても特例が受けられる(改正前は譲渡時まで)
8.相続人が3人以上いる場合の特別控除額は2千万円とする(新設)
なお、7と8の改正内容は、令和6年1月1日以降に行う売却に関して適用されます。

03今しておくべき対策
固定資産税等の減免見直しや制度改正された譲渡の特例を踏まえて、今できることがあります。すぐに売る予定がないからといって何もしていないと後で困るかもしれません。
ここでは5つの対策を紹介します。
・特定空き家に指定されないように、片付けや清掃など管理をする
・売買の際に権利関係が複雑にしないため、相続登記する
・売却する場合は、賃貸したり居住したりしない
・耐震リフォームが行われていない家屋は、取り壊して更地にする(自治体補助制度などを活用)
・売却しない場合は賃貸を検討する
空き家問題では周囲に悪影響を与えるなど世間の注目が集まり、行政も対策に乗り出そうとしています。
処分や活用をする際に不利にならないように、最新の情報を収集して早めに対策を取りましょう。
<出典>
住宅 - 国土交通省
年々増え続ける空き家! 空き家にしないためのポイントは? | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
固定資産税・都市計画税(土地・家屋) | 税金の種類 | 東京都主税局
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