誰も住んでいない空き家を管理するには費用も手間もかかります。
取り壊して更地にするには解体費用がかかり、自治体から危険な特定空き家に認定されると固定資産税も高くなってしまうリスクもあります。
そのため処分に困っている人も多いでしょう。
売却しようとしても中古物件より新築物件の方が人気は高いので、せっかく改修しても上手く活用できるか不安に思うこともあるかもしれません。
今回は空き家をリノベーションして活用する際の、メリットデメリットを解説します。
空き家を活用するには、リノベーションや貸家、更地売却などがあります。空き家を放置できず活用したい方はぜひ参考にしてください。
01空き家の現状
総務省が5年ごとに行っている平成30年住宅・土地統計調査によると、2018年の空き家の数は 848 万9千戸と、2013年に比べて3.6%増加しており、総住宅数に対する割合は13.6%と過去最高の数字です。参考:
統計局ホームページ/平成30年住宅・土地統計調査 調査の結果
空き家が増えている原因は、相続や遺贈・都市部への人口集中・新築神話・農地からの転用などさまざまです。空き家で家が余っても、便利な都市部の新築住宅に人気が集中する傾向があり、有効活用が難しい場合があります。
活用できないうちに家が老朽化するとますます管理が難しくなり、売却も難しくなっていく悪循環が発生している状況です。
02空き家問題の解決策としてのリノベーション
空き家を放置すると老朽化のリスクがあり、費用と手間がかかり続けます。これを解決するには、空き家をリノベーションして活用するのが有効な対策です。ここでは、リノベーションして、賃貸や店舗・民泊などで活用する場合を説明します。
賃貸
空き家をリノベーションして最初に考えるのは、住居としての賃貸でしょう。貸家にできる見込みが立てばリノベーションする費用をかけることもできます。
ただし、日本では中古物件より新築物件の人気が高いのが実情です。
新築物件より魅力あるものとするには、賃料の安さが肝心です。
費用をかけずに空き家を賃貸できれば、賃料収入が得られるだけではなく、人が住むことで家の劣化も防げます。
もし賃貸が難しい場合は、空き家を取り壊して更地にするか新築することも考えましょう。
店舗
全国には空き家を店舗として活用する事例もあります。住居として賃貸するだけではなく、店舗として利用できるようにリノベーションしてするのもよいでしょう。
居住用に限らないので、賃貸対象が増えるのがメリットです。
もし住むには不便な場所でも、環境や景色がよい場合は、大きく改修しなくても店舗として利用できる場合があります。
店舗であれば、物販や飲食・カフェなどと用途も広がるでしょう。
店舗用にリノベーションすると住居としての利用は難しくなりますが、活用としては有力なので検討する価値があります。
民泊
空き家を観光客向けに改修する事例も増えています。新型コロナで低迷していた観光需要も高まり、今後増加が見込まれる外国人向けの宿泊施設としての需要もあるでしょう。
築年数の長い古民家であれば注目も集まり、条件をクリアすれば行政やNPOからの助成も受けられる場合があります。
民泊に参入するには必要な規制をクリアする必要がありますが、クリアできれば有力な収益物件となります。
03空き家リノベーションのメリット
空き家をリノベーションするメリットは、賃貸目的だけではありません。古い空き家の窓を改修して断熱対応したり、耐震補強したりすれば、家自体の資産価値が高まります。
今は全国のどこで地震が起こってもおかしくありませんし、安心して住めるメリットは大きいです。
また、光熱費の高騰も家計を直撃しています。
天井や壁・窓を断熱化すると、効果は高いでしょう。
電気効率の高いエアコンなどの電気機器や高効率給湯器を導入すれば、電気代は節約できます。
特定空き家に認定されるリスクが減るのもメリットです。
管理されておらず危険な空き家と見なされると、自治体により取り壊され費用を請求される場合があります。
特定空き家は固定資産税も6倍程度に増える可能性があり大変なリスクです。
見た目の老朽化は防犯上のリスクもあるので、リノベーションの効果は大きいと言えるでしょう。
04空き家リノベーションのデメリット
空き家リノベーションのデメリットは、なんと言っても費用がかかることです。築年数の多い物件は不具合も多く、改修するにしてもどこまでして良いか判断が難しいかもしれません。
気になるところをすべてに手を入れると費用がかかり過ぎるのがデメリットです。
自己資金やローンで対応しても、具体的に貸出しや売却の見込みがなければ踏み切れない場合もあるでしょう。
費用がかかりすぎるといってもそのまま放置しておくことも出来ないので、特定空き家に認定されない程度の改修は必要となります。
空き家改修や取り壊しには国や自治体から助成が受けられる場合があるので、普段から情報収集を怠らないことが大切です。
また、賃貸目的であれば、住居か事業用かも決めてからリノベーションしましょう。
この際売却するにしても耐震基準を満たしているかどうかは大きな判断材料となるので、自治体の助成を得て診断をうけるのもよいでしょう。
05空き家リノベーションの費用相場
空き家のリノベーション費用は、改修範囲によって大きく変わります。戸建て住宅での相場は500〜1,500万円と幅があります。
どのくらい建物が傷んでいるか、どこまで性能アップをするかで変わるからです。
トイレやキッチンなど水回りの改修や、床や内壁の貼替えなど部分的な改修であれば比較的安価に行えます。
しかし、耐震化や屋根・外壁などの大規模な改修、高機能キッチンやランドリールーム・無垢フローリングの導入など高価な設備を導入すると、費用がかかってしまいます。
リフォーム業者などと打ち合わせを行い、見積もりをもらってから進めましょう。
06空き家リノベーションに使える助成金
国や自治体からもらえる支援もさまざまです。空き家バンクは全国的に見られますが、空き家リノベーションに対する助成金に統一されたものはなく、自治体ごとに確認する必要があります。
ここでは助成金の一例を紹介しましょう。
住宅省エネ2023キャンペーン
国土交通省と経済産業省・環境省が三省連携して、「住宅省エネ2023キャンペーン」を行っています。このキャンペーンは、断熱窓や高効率給湯器の導入のほか、外壁や屋根・天井または床の断熱改修、太陽熱利用システムや節水型トイレ ・高断熱浴槽 ・高効率給湯器 ・節湯水栓・蓄電池など幅広く使えます。
参考:
住宅省エネ2023キャンペーン
住宅除却補助制度
全国の自治体で耐震改修や空き家解体の補助制度があります。横浜市では、耐震性が不足する木造住宅等の除却工事費用に対して市から助成を受けることが可能です。
工事費用に対して、課税世帯なら20万円以下、非課税世帯なら400万円以下の補助が受けられる場合があります。
一定の条件を満たせば、確定申告の際に空き家を譲渡する3,000万円の特別控除とも併用可能です。
参考:
住宅除却補助制度 横浜市
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
同じ横浜市では、木造の個人住宅の耐震改修工事費用の一部を市が補助する制度があります。
一般世帯では100万円、非課税世帯では140万円が補助限度額です。
参考:
横浜市木造住宅耐震改修促進事業のご案内
また、空き家活用ビジネスに対する補助金もあります。
大阪市の空家利活用改修補助事業ではさまざまな助成が可能です。
例えば、地域まちづくりに資する改修工事の助成が大きく、補助率は1/2で、限度額は300万円となっています。
参考:
空家利活用改修補助事業
このほかにもさまざまな助成制度があるので、市区町村に問い合わせをしてみましょう。
07まとめ
今回は、空き家の有効活用としてリノベーションする際のメリットやデメリット、利用できる助成金などについて解説しました。空き家を放置しておくと、特定空き家に指定され固定資産税の負担が増えることも考えられます。
適切に管理し機を見て売却するか、可能であればリノベーションして賃貸するなど活用を考えましょう。
相続などで空き家を持っていて活用方法に困っている場合は、国や自治体に有利な制度がある場合が多いです。
制度が変わることがあるので、定期的に問い合わせるなどして情報収集しましょう。
今回の記事が、空き家対策でリノベーションを考えている方のお役に立てば幸いです。
参考:
空き家リフォームの費用相場と7つの使える補助金|空き家を放置するリスクも解説│ヌリカエ
【2023年最新版】リフォーム減税の制度を税理士が徹底解説! | 株式会社千葉興業銀行
【ホームズ】これからも増え続ける空き家。リフォームやリノベーションで中古住宅に新たな価値を | 住まいのお役立ち情報