空き家の処分に必要な譲渡所得の基礎知識!有利な税制優遇措置を活用しよう

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空き家の管理方法
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空き家対策の有効な手段に売却があります。
売却によって得られる譲渡所得には、3,000万円の特別控除が受けられる場合があります。

通常の不動産の売買取引よりも有利な特例措置なので、しっかり内容を理解しておきましょう。
令和5年度税制改正で変更された内容も解説するので、知らずに損をすることのないようぜひ参考にしてください。

01空き家を売却したら税金はかかる?

空き家を売却すると所得税が課税されることがあります。
不動産を売却して得られる利益は譲渡所得に分類され、所有期間の長さによって税率も変わります。

ただし、譲渡所得の計算には、収入から差し引ける経費や特別控除などがあり、これらをうまく活用すれば税負担を抑えられるのです。まずは、譲渡所得の基本的な考え方を説明します。


土地や家屋を売却した際にかかる譲渡所得とは

譲渡所得とは、土地や建物・株式・車・宝石などの資産を譲渡することによって生ずる所得をいいます。
このうち土地や建物・株式等は、分離課税として給与などとは分けて課税されるのが特徴です。
土地や家屋などの譲渡所得は次の計算式で求めます。

収入金額 ー( 取得費 + 譲渡費用) ー 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

それぞれについて説明を加えていきます。


収入金額

収入金額は、建物や土地を売却したことによって売主が得られる金額です。


取得費

取得費は、売却を行う建物や土地の購入代金です。もともと建築にかかった代金や手数料、設備費や改良費なども含まれます。
なお、建物の取得費の場合は、購入代金等から所有期間中の減価償却費相当額を差し引きます。
No.3252 取得費となるもの|国税庁


譲渡費用

譲渡費用は、建物や土地を売るためにかかった費用のことを指します。
具体例は次のとおりです。
 1.建物や土地を売却するために支払った仲介手数料
 2.売主が負担した印紙税
 3.建物の売却のために、借家人に家屋を明け渡してもらうための立退料
 4.土地などを売却する際に土地上の建物を取り壊した場合は、その取壊費用と建物の損失額
No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁


特別控除額

建物や土地を売却する際には、条件により特別控除を受けられます。特別控除の一例は次のとおりです。

 ・公共事業等により建物や土地を譲渡した場合 ・・・ 5,000万円
 ・居住用のマイホームを譲渡した場合     ・・・ 3,000万円
 ・被相続人の空き家を譲渡した場合    ・・・ 3,000万円

なお、建物や土地の譲渡所得から差し引ける特別控除額の限度額は、年間で5,000万円です。


長期譲渡と短期譲渡

建物や土地を売却した際に適用される税率は、譲渡した年の1月1日現在の所有期間により異なります。
長く所有した不動産の方が税率が低いのが特徴です。

譲渡した年の1月1日現在
での所有期間
税率
(所得税+住民税)
長期譲渡所得 5年を超える 20.315%
短期譲渡所得 5年以下 39.63%


長期譲渡所得は、建物や土地を譲渡した年の1月1日現在での所有期間が5年を超える場合で、税率は20.315%です。
一方、所有期間が5年以下の短期譲渡所得の場合は、39.63%も課税されます。
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02相続空き家の発生を抑制するための3,000万円特別控除とは

相続した空き家を売却した場合は、一定の条件を満たせば3,000万円の特別控除を受けられます。
この制度を利用すると、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除額を差し引けるので、課税されないのがメリットです。

ここでは、特別控除を受けるための条件と手続き、令和5年度税制改正の内容を解説します。
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁

相続空き家の3,000万円特別控除を受けるための条件

被相続人(亡くなった人)の居住用財産(空き家)を売ったときの特例を受けるためには、条件を満たす必要があります。

主な条件は次のとおりです。

特例の対象となる居住用家屋とは

特例の対象となる居住用家屋は、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
 ・昭和56年5月31日以前に建築されている
 ・マンションなど区分所有建物登記がされていない
 ・相続時に被相続人以外に住んでいない

なお、要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所していた場合でも、一定の条件を満たせば被相続人居住用家屋と見なされます。


特例を受けるための条件

次に適用を受ける場合の条件です。以下の要件を満たす必要があります。
 1.売却した人が、相続等で被相続人居住用家屋等を取得したこと
 2.相続した人が、被相続人居住用家屋等を売却するか、家屋等の全部を取壊し等をした後に敷地等を売ること
 3.相続の開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
 4.売却代金が1億円以下であること


相続空き家の3,000万円特別控除を受けるために必要な書類

被相続人(亡くなった人)の居住用財産(空き家)を売ったとき、特例を受けるために必要な書類には次のようなものがあります。
相続した人が確定申告の際に、申告書に添えて提出が必要です。

 1.売却した資産(建物や土地)の登記事項証明書等(申告の際に作成する明細書に、不動産番号を記入することで省略できる場合あり)
 2.売却した資産(建物や土地)について、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」
 3.耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し(建物の売却の場合)
 4.売買契約書の写しなどで売却代金が1億円以下であることがわかるもの


令和5年度税制改正で変更された内容

ここまで説明してきた内容は、令和5年12月31日までに売却した場合です。
令和5年度税制改正では、これ以降に売却した場合について見直されました。
(令和5年3月28日に参院本会議で成立)令和6年1月以降に譲渡した場合に適用されます。

改正のポイントは次のとおりです。

改正後
(令和6年1月以降)
改正前
譲渡期限 令和9年12月末 令和5年12月末
耐震リフォーム期限 譲渡翌年の2月15日まで 譲渡した日まで
家屋の取り壊し期限 譲渡翌年の2月15日まで 譲渡した日まで
特別控除限度額 3,000万円
(ただし、相続人が3人以上の場合は、2,000万円)
3,000万円

これまでの特別控除では、令和5年12月末までに譲渡したものに限られていましたが、今回の改正で令和9年12月末に延長されました。
また、特例に必要な耐震リフォームや家屋の取り壊し期限は、譲渡した日から翌年の2月15日までに緩和されたのが特徴です。
さらに、これまで特別控除額は3,000万円のみでしたが、令和6年1月以降に譲渡した場合、相続人が3人以上いる場合の1人当たりの控除額は2,000万円と引き下げられます。
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03特別控除をうまく利用して譲渡所得を抑える

相続した空き家を売却した際に譲渡所得が発生した場合は、確定申告が必要です。

ただし、相続後に誰も住んでいないなどの条件を満たせば、相続空き家の3,000万円特別控除の特例を受けられる場合があります。
この特例を利用すれば、税負担を抑えられるので、ぜひ検討してください。
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04まとめ

いかがでしたでしょうか。
空き家の売却前には、制度の詳細について事前に税務署や税理士に確認が必要です。

今回の記事が、空き家の譲渡を考えている方の参考となれば幸いです。


<出典>
No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
No.3252 取得費となるもの|国税庁
No.3255 譲渡費用となるもの|国税庁
令和5年度税制改正の大綱(1/10) : 財務省
所得税法等の一部を改正する法律案:参議院

<参考>
空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3000万円特別控除)について
住宅:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) - 国土交通省
空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除) 横浜市
空き家の発生を抑制するための特例(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除に係る被相続人居住用家屋等確認書の交付)について|鳥取市
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