日本は、人口の割に住宅のストックが多い「住宅過剰社会」と言われています。
住宅過剰社会は空き家が増える原因でもあり、問題視されています。
そこで今回は、住宅過剰社会と空き家問題、空き家が負動産になる理由や解決策について解説します。
空き家を所有している方は、ぜひ参考にご覧ください。
住宅過剰社会と空き家問題について
日本は少子高齢化により人口が減少しているにも関わらず、住宅が多い「住宅過剰社会」です。
そのため、年々空き家も増え続けています。
では、なぜ日本は住宅過剰社会となってしまったのでしょうか?
住宅過剰社会の背景
日本は、1950年代~1970年代の高度経済成長期において住宅建設が盛んにおこなわれました。
そのときに建てられた住宅は今もなお残っており、国土交通省の「空き家所有者実態調査」によると、築40年を超える空き家は69.1%と大きな割合を占めます。
古い家が空き家として残るのは、少子高齢化による人口減少や引き継ぐ方がいないことが原因で、放置されていることが挙げられるでしょう。
日本の人口は2008年の1億2,808万人をピークに減少に転じ、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2048年には1億人を切ると予想されています。
一方で、都心部や地方都市の農地エリアでは次々と新しい住宅が建てられ、宅地開発が進んでいるのはご存知でしょうか?
人口減少にも関わらず新築住宅が建てられるのは、新築物件を好む消費者が多いことや低金利政策により新築住宅を購入しやすくなっている点にあるでしょう。
日本の都市計画の問題点
住宅過剰社会となるのは、日本の都市計画にも問題があります。
これまでの日本の都市計画は、バブル崩壊後の経済対策として容積率等の規制緩和を推進し、新築住宅を建てやすくしてきました。
日本は海外と比べても建築規制が弱く、人口減少に反して都心部や地方都市ではいまだに宅地開発が続いています。
また、消費者にとっても住宅ローン減税や補助金制度などで新築が購入しやすい状況にあります。
そのため、諸外国と比べても住宅の供給過多が起こり、中古住宅があまり流通せずに空き家問題にまで発展しているのです。
ただし、政府も空き家問題を深刻にとらえ、近年は中古住宅の流通を促進するためにさまざま取り組みがおこなわれています。
たとえば、リフォーム工事費用の補助金や空き家バンク制度など、空き家の活用や流通を促進するための取り組みが各自治体でおこなわれています。
住宅過剰社会で空き家が負動産になる?
日本の住宅過剰社会の背景がわかったところで、具体的に私たちにどのような影響を及ぼすのでしょうか?
考えうる影響は、以下の3つです。
①住環境の悪化
住宅過剰により放置される空き家が増えていくと、住環境が悪化することが懸念されます。
実際に、放置された空き家の老朽化による倒壊の危険性や、衛生環境の悪化が各地で問題視されています。
また、空き家が地域のあちこちに点在することで、行政サービスの効率の悪化や公共インフラのコストが増加する恐れもあるでしょう。
たとえば、空き家が増えると水道の提供や道路の維持管理・清掃などの効率が悪くなってしまいます。
また、交通アクセスも人口減少により縮小化せざるを得ず、空き家が点在する地域の交通はどんどん不便になっていくでしょう。
②3軒に1軒が空き家になる
野村総合研究所の2015年の調査によると、2033年に空き家率は30.2%になると予測されています。
つまり、このまま住宅過剰社会が続けば、3軒に1軒は空き家となってしまうのです。
空き家が増えると、所有者は空き家を売りにくい状況となり、政府の援助も受けられなくなる恐れがあります。
③空き家が負動産になる
負動産とは市場価値が低く、所有しているだけで固定資産税などの金銭的負担がかかる不動産のことを指します。
前述のとおり、人口減少や住宅の供給過多で空き家が増え続けると、需要がなくなり市場価値が低下します。
しかし、空き家は所有しているだけで管理費や維持費がかかるため、処分できずに所有者の負担ばかりが増えていってしまうのです。
現在においても負動産が各地に存在し、早く手放したいがために無料同然の価格で売られている物件もあります。
現時点で空き家を所有していない方も、両親から相続した実家が負動産になる可能性はありうるため、他人事ではないと言えるでしょう。
実際に、2013年の総務省「住宅・土地統計調査」によると、都心から20~30㎞離れた郊外では「空き家予備軍」と呼ばれる65歳以上の高齢者のみが住んでいる一戸建てが2割~3割もあります。
すでに空き家になった実家を処分済みの方も、今住んでいる住宅が将来負動産となって子や孫の負担になる可能性はあるでしょう。
そのため、住宅過剰社会は日本国民全員が直視しなければいけない問題なのです。
住宅過剰社会と空き家問題を解決するには?
では、住宅過剰社会と空き家問題を少しでも解決するために、すぐにできる対策とはどのようなものがあるのでしょうか?
政府の対策と個人でできることを解説します。
政府の対策
国土交通省は、住宅ストックの増加と人口減少という社会経済情勢の著しい変化を受けて、2006年に「住生活基本計画」を策定しました。
住生活基本計画の策定によって、住宅の「量の確保」から住生活の「質の向上」へと政策の舵を切ることになり、新たな住宅政策への転換となっています。
住生活基本計画では、計画期間を10年間として策定し、おおむね5年ごとに見直し・変更をおこなうこととされています。
2011年には「多様な居住ニーズに応じた住宅の確保の促進と需給の不適合の解消」を目標に掲げ、2016年には「急増する空き家の活用・除却の推進」を目標としました。
2021年には「脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成」が新たな目標として加わり、既存住宅の質の向上と流通の活性化に向けた取り組みがおこなわれています。
具体的には、耐震性・省エネルギー性能・バリアフリー性能等を向上させるリフォームや建替えの助成制度や税金の軽減措置制度が挙げられます。
また、空き家については「空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進」が目標に掲げられました。
これら施策が、住宅過剰の解消と空き家増加の歯止めになることを期待したいところですね。
個人でできること
空き家問題は、住む街の暮らしにも大きな影響を与えるため、国民1人ひとりが意識しなければならない問題でもあります。
空き家を所有している方は放置せずに、適切な管理をおこない有効活用をし、使用しないのであれば処分をするなどの対策を講じましょう。
これからマイホームを購入する予定の方については、長期的に安心して長く住める家を選ぶようにすれば空き家対策になります。
中古住宅を所有している方については、耐震性やバリアフリー性能などを向上させるリフォームをおこなえば、安心して長く住める家となるでしょう。
住宅の性能を向上させるためのリフォームや古い空き家の除去については、自治体によってかかる費用の一部を補助する制度もあります。
愛する地元の地域活性化のためにも、使える補助制度を上手く利用して、空き家問題の解決にともに取り組んでいきましょう。
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まとめ
日本は、人口に対して住宅のストック数が多い「住宅過剰社会」です。
住宅過剰社会が続くと、空き家が負動産になったり、住環境が悪化したりと、日々の暮らしに悪影響を及ぼします。
住宅過剰社会と空き家問題を解決するには、政府任せにせずに国民1人ひとりも意識していくことが大切です。
ぜひ、この記事を参考に空き家の利活用をご検討ください。
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