近年は、道路、橋梁、水道などの公共インフラが老朽化し、維持・修繕に莫大な費用と時間がかかることが問題視されています。
さらに地方都市では空き家も増加し、インフラを維持するのは困難との声も上がっています。
この記事では、インフラの老朽化問題と空き家への影響、空き家の増加による都市のスポンジ化や空き家とインフラ維持の両方を解決するコンパクトシティについて解説します。
空き家を所有している方は、ぜひ参考にご覧ください。
インフラが老朽化?空き家はどうなる?
インフラとは日々の生活を支える基盤のことで、たとえば公共施設や水道、道路などのことを指します。
日本では、1950年代から70年代の高度経済成長期にインフラ整備に力を入れてきました。
インフラが整ってから30年以上経った現在、老朽化が進んだ公共施設や設備が増加し、維持管理だけでも費用がかさみ財政を圧迫している状態です。
インフラの老朽化問題とは
インフラの老朽化による最大の問題は、莫大な費用がかかる点です。
2017年の筑波大、高知工科大の報告によると、道路橋の老朽化にともなう架け替えを含めた修繕費は、今後50年間で約27兆円にものぼるとあります。
水道施設においては2017年の土木学会の推計によると、老朽化対策のために2040年までに水道事業を営む団体の91%が水道料金の値上げを迫られるとあります。
公共インフラでとくに老朽化が深刻なのが下水道施設です。
2018年の大阪府北部地震の際は、老朽化した水道管が破裂し、大阪府高槻市、箕面市などで多くの住宅が一時断水に追い込まれました。
大阪だけでなく、全国でも老朽化による水道管の破裂や道路陥没事故が多発しており、大きな問題となっています。
インフラの老朽化による空き家への影響とは
前述のとおり、インフラの維持管理費には莫大な費用がかかるため、小規模な自治体ほど財政が圧迫するでしょう。
そのため、過疎化が進む地域の空き家問題にまで行政の手が回らなくなる恐れがあります。
現在は、空き家問題の対策としてさまざまな自治体が空き家の解体費用や修繕費用につき費用の一部を補助する取り組みをおこなっています。
しかし、財政が圧迫されれば、空き家活用の補助制度もいつまで続くかわかりません。
現在空き家の活用を検討している方は、制度が充実している今こそチャンスと言えるでしょう。
空き家問題でインフラ維持が非効率に?都市のスポンジ化
近年は、少子高齢化、人口減少によって地方都市の空き家・空き地が増加し「都市のスポンジ化」が起きていると言われています。
前章で述べたインフラの老朽化問題だけでなく、都市のスポンジ化により、さらに公共インフラの維持がむずかしくなる可能性があります。
都市のスポンジ化とは?
都市部において時間的・空間的にランダムに数多くの空き家や空き地が発生し、スポンジのように人口密度が低下することを「都市のスポンジ化」と言います。
平成29年の国土交通省の「都市のスポンジ化について」によると、多くの都市で都市のスポンジ化が顕在化しつつあるとされています。
都市のスポンジ化の問題点は、空き家・空き地がランダムに発生することによる人口密度の低下とまちの魅力の低下にあります。
人口密度が低下すると、生活サービスが縮小・撤退し、公共インフラの維持管理も非効率となるでしょう。
まちの魅力が低下すると、地価の下落や治安の悪化につながります。
そうなると経済活動がさらに停滞して税収が減り、行政サービスも低下する恐れがあります。
つまり、都市のスポンジ化が起きると、都市の衰退が加速してしまうのです。
都市のスポンジ化が発生する例とは?
では、なぜ地方よりも人口の多い都市部にも関わらず空き家・空き地等がランダムに発生するのでしょうか。
空き家・空き地等の発生過程の例としては、以下のようなものがあります。
●実家を相続するも自身にも居宅があるため、当面のあいだ利用予定もないから空き家となっている
●高齢化した商店主が閉店するも、売却・賃貸せずに空き店舗のままにしている
●土地所有者が節税等の観点から空き地等を活用してアパートを建設・経営するも、入居者が埋まらずに空き家となっている
このように活用する予定がないにもかかわらず、処分には手間暇がかかるなどの理由で、とりあえずそのままにしておくことが空き家等の増える原因となっています。
空き家は今後も増える?
民間シンクタンクによる推計によると、新築住宅の建築が減少しても、それを上回るスピードで世帯数が減少することを予測しています。
また、既存の住宅の除却や有効活用が進まなければ、2033年の総住宅数は約7,100万戸へと増大し、空き家数は約2,150万戸、空き家率は30.2%に上昇すると予測。
そのため、しっかりと空き家問題の対策を取らないと今後も空き家は増加し続け、行政サービスの充実やインフラ整備に支障をきたしてしまいます。
空き家とインフラの維持問題を解決するには?
空き家問題とインフラの維持問題の解決策として今注目されているのが、コンパクトシティ政策です。
コンパクトシティ政策とは?
コンパクトシティ政策とは、人々の居住地や都市機能を中心市街地に集約することで、公共インフラを効率化し、住みやすいまちづくりを目指す政策のことです。
コンパクトシティを実現することで、公共インフラを小規模に抑え、維持管理費のコストを削減できるメリットがあります。
人口を中心地にまとめることによって人口密度が上がり、空き家を減らす効果も期待できます。
また、コンパクトシティは高齢者にとってもメリットが大きいです。
高齢者にとって、郊外での生活は買い物施設までの距離が遠く、車がないととても不便に感じるでしょう。
その点、コンパクトシティ政策によって中心市街地に住めば、車がなくとも近隣にお店がたくさんあるため、買い物に困ることはありません。
日本では、これからますます少子高齢化が加速していくため、コンパクトシティのメリットは大きいと言えます。
コンパクトシティの成功事例とは?
実際にコンパクトシティ政策を実施し、成功事例として有名なのが富山市です。
富山市は、2007年に「第1期中心市街地活性化基本計画」を策定し、国から中心市街地活性化法における認定中心市街地の第1号認定を受けたコンパクトシティの先駆けとなる都市です。
富山市は、人口減少・少子高齢化による都市スポンジ化を解決するために、2050年までに公共交通を軸にしたコンパクトシティを目指す「富山市環境未来都市計画」を策定。
LRTと呼ばれる次世代型路面電車で交通の利便性を図り、駅やバス停から徒歩圏内のエリアには割安な家賃の市営住宅の建設や居住支援の補助金などを用意しました。
その結果、富山市は人口減少・少子高齢化が進む現在においても、2006年ごろから一定の水準の人口を維持することに成功しています。
コンパクトシティ政策によって人口が大きく増加したわけではありませんが、LRTによって高齢者の外出機会は増え、地域経済の活性化に貢献していますよ。
今後、そのほかの地方都市においてもコンパクトシティ政策によってどのように変化をしていくのか注目したいところですね。
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まとめ
空き家問題と同様に、水道管や道路などの公共インフラの老朽化問題は深刻です。
少子高齢化で財政も圧迫していくなか、これからますます空き家は放置せずに利活用していくことが求められています。
現在空き家を所有している方は、ぜひこの記事を参考に、空き家の利活用をご検討ください。
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