世界的にみても空き家率の高い日本ですが、中古住宅の多いヨーロッパの空き家事情も気になるところでしょう。
日本よりも空き家率の低いヨーロッパの空き家事情を知ることで、日本の空き家対策の課題や解決策が見えてきます。
そこで今回は、ヨーロッパの空き家事情と政府の取り組み、画期的な空き家対策の成功事例をご紹介します。
ぜひ、参考にご覧ください。
01ヨーロッパの空き家事情とは?日本との違い
地球上の7つの大きな州の1つであるヨーロッパは、54か国で構成され歴史的な建造物の多い観光地としても知られます。とくに、フランスやイギリス、ドイツはヨーロッパのなかでも旅行先として人気の国です。
そんなヨーロッパですが、空き家率はどれくらいなのでしょうか?
ヨーロッパの空き家率
近年におけるヨーロッパ全体の空き家数は約1,100万戸に及び、そのなかでも空き家率の高い国は以下のとおりです。●キプロス:12.48%
●ハンガリー:12.35%
●フィンランド:10.73%
反対に、ヨーロッパのなかでも比較的に空き家率の低い国は以下のとおりです。
●ドイツ:1%
●イギリス:2.5%
●フランス:8.3%
いずれの国においても、日本の2018年の空き家率13.6%に対して、低い値となっています。
日本との違い
それでは、なぜ日本はヨーロッパと比べて空き家率が高いのでしょうか。各国における空き家事情や要因は異なりますが、日本においては以下の3つが空き家増加の3大要因となっています。
●少子高齢化
●住宅供給量
●法規制
日本は、世界1の超高齢化社会です。
実際に総務省統計局の調査によると、2018年の日本の高齢化率は28.1%と、世界でもっとも総人口における65歳以上の高齢者の割合が高い国です。
少子高齢化が進むと、人口減少によって空き家が増える要因となります。
また、人口が減少しているのにも関わらず新築住宅の供給量が多い点も、他国と比べて空き家数が増加する要因でしょう。
所有者不明の空き家や空き地が増えていることも問題です。
日本と諸外国では不動産の所有権に対する考え方が異なり、法規制も異なります。
外国人や不動産所有者に対して厳しい法規制がある諸外国に対し、日本の法律は登記が任意であったり建物の建築や解体が届出制であったりと、法規制が緩いといわれています。
このように、所有者不明土地の問題に対する法律が整っていない点も、空き家増加の要因であると問題視されているのです。

02ヨーロッパの空き家対策とは?
それでは、ヨーロッパではどのような空き家対策をおこなっているのでしょうか。ヨーロッパのなかでも比較的に空き家率の低いドイツ、イギリス、フランスの空き家対策をご紹介します。
ドイツの空き家対策
日本と同様に少子高齢化が進むドイツですが、空き家対策として以下の取り組みをおこなっています。●土地登記の義務化
●管理不全・利用不全に対する規制
●エリア再生
ドイツは日本と異なり、土地の登記が義務化されています。
そのため、不動産の権利関係が明確になり、所有者不明土地問題が解消されるのです。
また、適切に管理されていなかったり、適切に利用されていなかったりする不動産に対して規制をかけることで、空き家が放置されることを未然に防いでいます。
さらに、空き家が多い地域は特定エリアとして指定し、エリアごとに再生することで空き家の利活用を促進しています。
このように、ドイツは、厳しい法規制と都市計画も含めた空き家対策で、効果的に空き家の増加を防いでいるのです。
イギリスの空き家対策
イギリスでは移民や難民によって人口が増加しており、空き家数は2008年をピークに減少傾向にあります。そんなイギリスにおける空き家対策は以下の3つです。
●空き家管理命令
●新築住宅補助金
●地方税付加
空き家管理命令とは、2年以上空き家のままである場合に、自治体が空き家を占有し改修したうえで、第三者に貸し出すことができる制度です。
また、6か月以上経過している空き家が自治体において再利用された場合に、政府は自治体に対して新築住宅補助金を交付します。
さらに、自治体は 2年以上の空き家所有者に対して、通常の地方税に付加税を課すことで、空き家の発生を抑止しています。
フランスの空き家対策
フランスの空き家率は、2005年の6.3%に対し、2016年は8.3%に上昇しています。一方で、都市部においては人口増加による住宅不足が問題となっており、空き家の流通を促進する対策がおこなわれてきました。
おもな空き家対策は以下の2つです。
●空き家税
●明白放置財産収用制度
空き家所有者に空き家税を課税することで、空き家の利活用を促進する取り組みをおこなっています。
また、放置や放棄された空き家については明白放置財産収用制度によって、所有権を所有者から市町村などに移す取り組みをおこなっています。
このように、フランスでは空き家の発生を防止するとともに、住宅不足の解消のために空き家所有者に対して法規制を強化しているのです。

03ヨーロッパの空き家対策の画期的な成功事例とは?
ヨーロッパの空き家率の低い主要3か国における空き家対策がわかったところで、具体的な成功事例も知りたいところでしょう。ヨーロッパの画期的な空き家対策の成功事例は、以下の2つです。
1ポンド住宅
1ポンド住宅とは、イギリスのリバプール市における空き家対策です。リバプール市は過去10年間にわたって人口が増加し続けている一方で、貧困世帯が多い都市です。
そんなリバプール市は、イングランド全体からみると高い空き家率となっており、原因となる社会的な貧困と質の低い住宅が問題となっていました。
そこで、リバプール市では空き家の流通を促進するために「1ポンド住宅」の取り組みを実施しました。
市が買い上げた空き家を1ポンド(約160円)で購入希望者に売却し、購入者は安い価格で買う代わりに空き家を自費で改修します。
さらに、1ポンド住宅では最低5年間はその家に住むこと、その住宅を賃貸に出してはいけないことが条件となっています。
このようにリバプール市では空き家を1ポンドで売却することで、長期の空き家を減らすことに成功しました。
ちなみに、フランスのリール市においても1ポンド住宅にならって「1ユーロ住宅」の取り組みをおこない、空き家再生に成功しています。
アルベルゴ・ディフーゾ
アルベルゴ・ディフーゾとは、北イタリアの小さな村での地震復興のプロジェクトをきっかけに発案された分散型ホテルの仕組みのことです。地域に点在する空き家を改修して、1つの分散型ホテルとすることで空き家再生と地域活性化に貢献でき、世界中から注目を集めている空き家対策です。
実際に、アルベルゴ・ディフーゾの取り組みによって、イタリアの小さな港町であるテルモリは、宿泊客の途絶えない人気観光地へと生まれ変わりました。
日本でも、2018年に岡山県小田郡矢掛町の「矢掛屋」がアルベルゴ・ディフーゾ(分散型ホテル)の仕組みを利用して、官民一体のまちづくりに取り組んでいます。
このように、空き家再生だけでなく地域活性化にも貢献できる仕組みは、真似したいところですね。
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04まとめ
今回は、ヨーロッパの空き家事情と政府の取り組み、画期的な空き家対策の成功事例をご紹介いたしました。ヨーロッパの空き家率は日本に比べて低く、とくにイギリスは2.5%、ドイツは1%とかなり低い値となっています。
日本とヨーロッパの空き家対策の大きな違いは、法規制と中古住宅の流通量にあります。
ぜひ、ヨーロッパの画期的な空き家対策を学んで日本にも活かしたいところですね。
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