空き家は所有者の資産の一つですが、資産といえば近年は新しい資産の形として「暗号資産(仮想通貨)」が生まれ、その情報を保管するために「ブロックチェーン」という技術が用いられていることをご存じでしょうか。
ブロックチェーンは不動産業界でも活用することができると、今注目を集めています。
たとえば、ブロックチェーンの技術を活用することには、不動産取引の円滑化や取引コストの軽減など、さまざまなメリットがあると見込まれています。
また、所有者不明で放置されている空き家問題の解決策としても、ブロックチェーンの技術は期待されているのです。
そこで今回は、ブロックチェーンの仕組みや、空き家問題にどう役立つか、活用事例をご紹介します。
ぜひご参考までにご覧ください。
空き家問題で注目のブロックチェーンとは?
ブロックチェーンとは、取引情報を記録するデータベース技術の一種です。
取引情報を「ブロック」という単位で管理し、そのブロック(取引情報)を鎖のように連結して取引履歴をデータとして保管します。
それぞれのブロックには直前の取引の内容を表すデータが書き込まれているため、過去の取引情報を改ざんしようとすると、それ以降の取引履歴もすべて改ざんしなければいけなくなるため、改ざん自体がむずかしく不正が発見しやすい仕組みになっています。
そのためブロックチェーンは、取引の記録をデータとして安全に保管することができる技術として、仮想通貨以外にもさまざまな業界から注目を集めています。
不動産業界においても、主に以下の理由からブロックチェーンの技術が注目されています。
●信頼性が担保される
●不動産投資のハードルが下がる
●取引コストが軽減される
前述のとおり、ブロックチェーン上に保存されたデータは改ざんがむずかしいため、取引履歴の信頼性が担保されます。
取引相手の情報や信用度もデータで管理することができるため、不動産詐欺などの犯罪や不正が起こりにくくなります。
また、不動産の権利移転もブロックチェーン上でおこなうことができるようになれば、簡単に取引できるようになり、不動産投資のハードルが下がります。
さらに、インターネット上で簡単に不動産取引ができるようになり、手続きにかかる手間や手数料などの取引コストの軽減も期待できるでしょう。
このように、ブロックチェーンの技術は不動産業界に大きな変革をもたらす可能性があります。
そして、ブロックチェーンの技術を活用して、空き家問題の解決に取り組む企業が増えています。
ブロックチェーンの技術で空き家問題はどのように解決される?
近年、所有者不明の空き家が増えており、社会問題となっています。
通常、不動産の所有者は法務局で管理している登記記録に記載されていますが、その登記がされていないと、所有者の特定がむずかしくなります。
未登記の空き家が増えている背景には「相続人がいない」「相続人や譲受人が権利移転の登記をせずに放置している」ことなどが挙げられます。
相続人が相続登記をせずに空き家を放置している問題については、2024年4月1日から実施される「相続登記の義務化」によって改善が期待されています。
出典|2024年から相続登記が義務化される?法改正の経緯や影響について解説
しかし、空き家の相続人や譲受人が登記をしない理由の一つである「権利の移転登記費用が不動産価値を上回る」というケースが存在しているという問題もあります。
何年も放置されている空き家は劣化が激しく、市場価値が著しく低くなっていることは珍しくありません。
そのような資産価値が低い空き家を譲り受けると、売りにくいうえに、さらに登記費用がかかるので、「とりあえず放置しておく」という選択をする所有者がいるのです。
また登記申請においては、専門的な知識やさまざまな必要書類を用意しなければいけないという手続きの煩雑さがハードルとなり、未登記の空き家が増える原因となっています。
そこでブロックチェーンの技術を活用すると、このような「権利移転にコストがかかる」「登記手続きが煩雑である」などの問題を解決することができます。
実際に、ブロックチェーンの技術を用いた不動産権利移転記録の実証実験をおこなっている企業があります。
この実証実験では、不動産取引の記録をデジタル上に低コストで記録・保存し、将来的に移転登記の代替として機能するかどうかの可能性を探っています。
具体的には以下のような流れで、不動産権利移転記録がされます。
1.登記簿などの権利証明に関する書類や情報をデジタル化
2.権利移転をおこなうためのアプリケーションを使って権利を買主に移転
3.権利移転に関する取引内容をブロックチェーン上に記録
4.取引内容が記録された権利証明書を発行し買主へ渡す
現在の登記実務では、役所などから権利証明となる書類を取り寄せる必要があり、手間がかかります。
権利証明がすべてデジタル化されたら、その手間が省けますね。
上記の流れであれば、権利移転に伴って新たに発行される権利証明書にも、ブロックチェーンの技術を用いて取引内容が記録されるため、権利証明書が改ざんされるリスクを減らすことができます。
ブロックチェーンの技術を活用することで、不動産取引のハードルが下がり、放置される空き家の問題の解決や、地方の空き家の流動化の促進に期待ができますね。
空き家問題でブロックチェーンを活用した事例とは?
実際に、ブロックチェーンの技術を活用して空き家問題に役立てた事例があるのかどうかも気になるのではないでしょうか。
最後に、岩手県釜石市にある長年放置されていた空き家の問題を解決した事例をご紹介します。
その空き家は相続発生後、7年間放置されてボロボロの状態でした。
物件の市場価値よりも移転登記費用のほうが高いことから相続登記がされず、無償譲渡も困難な、いわゆる負動産です。
そこで、名乗りを上げたのが前章でご紹介したブロックチェーンの実証実験をおこなっている企業です。
流れとしては、まずは所有者とブロックチェーンの技術を用いた権利の譲渡について合意を得て、その次にブロックチェーン上で空き家の権利の譲渡をおこないました。
権利移転の記録をブロックチェーン上に残すことで、移転登記をする手間やコストが省け、困難だった無償譲渡が可能になったのです。
ただし、登記の代わりにブロックチェーン上で権利移転をおこなうことには課題があります。
現在の法律では、公証性のある不動産登記をすることで、二重譲渡された場合の対抗要件を備えることができます。
ブロックチェーン上での権利移転においても、契約が持つ公証性を記録することはできますが、法的有効性がどこまであるかは現時点では定かではありません。
また、今回のような放置空き家の無償譲渡については二重譲渡の可能性は低いため、ブロックチェーン上での権利移転はコストの軽減に効果的ですが、すべてのケースに当てはまるかについては疑問の声もあります。
空き家問題を解決するためには、ブロックチェーンの技術を上手く活用するとともに、新しい技術に合わせた法整備が課題となるでしょう。
近年は、ブロックチェーンを用いた不動産取引の仕組みづくりを各社が進めており、海外においても複数の事例があります。
ブロックチェーンの技術が用いられることで、国内だけでなく効率的な不動産の国際取引の実現も期待できるでしょう。
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まとめ
今回は、空き家対策で注目のブロックチェーンの仕組みや、空き家問題にどう役立つか、活用事例をご紹介しました。
ブロックチェーンとは、取引情報を記録するデータベース技術の一種で、不動産業界においては権利移転を安全におこなうことができる可能性があると、注目を浴びている技術です。
ブロックチェーンの技術を活用することで、不動産登記にかかる費用やコストを軽減することができるため、空き家の所有者不明問題の解決が期待できます。
実際に、ブロックチェーン上で権利移転をおこなうことで、ネックとなっていた登記費用を解消し、放置空き家の無償譲渡を成立させた事例もあります。
不動産取引が効率的にできるようになれば、空き家の譲渡も容易になり、流動化や有効活用が期待できますね。
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