実家を相続により受け継いだものの、「住む予定がない」「現在住んでいるところから離れた場所に実家があり、管理に苦労している」などの事情で、実家の扱いにお悩みの方がいらっしゃいます。
相続した不動産の扱いに関する選択肢は、大きく分けると「そのまま所有するか」もしくは「売却などで手放すか」の2択となるでしょう。
いずれのケースでも元の建物をそのまま維持するのか、リフォームやリノベーションを施すのか、解体してしまうのか、といった点についても決めなくてはなりません。
一般に、国内の木造住宅は築20年ほどで建物としての価値がほとんどなくなってしまうため、空き家の場合には解体するか、リフォームなどを施さず古家付き土地として売却するとよいと言われています。
しかし家屋を解体してしまうと、固定資産税が多くかかるなどのデメリットもあるため、どの方法をとるのがベストなのかは、空き家の状態や所有者の希望によって異なってきます。
リフォームやリノベーションを施すことを選ぶ場合、さまざまな改修工事のなかでも、空き家にとってメリットが大きいのが、耐震改修であると言われています。
そこで今回の記事では、空き家の耐震改修のメリットについて、解体工事をした場合との比較やあわせて活用できる補助金についても解説いたします。
空き家の耐震改修のメリット①資産価値が高まる
それでは、空き家に耐震改修を施すことのメリットについて、見ていきましょう。
一つ目のメリットとしては、耐震改修を施すことで、空き家の資産価値を高めることができる点が挙げられます。
日本の建物の資産価値については、新しいものほど価値が高く、古くなるほど価値が下がるのが一般的です。
たとえば、固定資産税を決定する際に基準とする不動産評価額の計算においても、家屋の経年に応じて評価額が減少するような計算方法が採用されています。
不動産市場における需要についても、近年、中古住宅の需要が高まりつつあるとはいえ、マイホームの購入と言えば、新築というイメージがまだまだ根強く残っていると言えるでしょう。
日本では住宅の多くが木造という事情があるとはいえ、欧米では中古住宅の需要が高く、築100年以上の建物に高額の売却価格が付けられるケースがあるのとは対照的です。
国土交通省がまとめた統計でも、2008年の時点で、国内に流通している全住宅のなかで中古住宅が占める割合は13.5%と、欧米のおよそ1/6程度にとどまっています。
日本で、空き家を含む中古住宅の需要がとくに低くなってしまう要因の一つが、住宅の耐震性能にあります。
日本は地震が多い国ですので、耐震性能は住宅の安全性にとって重要なポイントの一つであり、建築基準法により建物の耐震性能についての基準が定められています。
現行の耐震基準は、昭和56年の建築基準法改正の際に定められたものであり、旧耐震基準との最も大きな違いは、震度6から7の地震においても倒壊しないという条件を加えた点にあります。
すなわち、昭和56年以前に建築された建物は、震度6から7の大規模地震により倒壊する可能性があるということでもあります。
このような事情が、安全面で空き家など中古住宅の価値を下げてしまう一因となっているわけです。
しかし裏を返せば、耐震改修により中古住宅の安全性を向上させることで、資産価値を高めることが可能だといえます。
空き家の耐震改修のメリット②固定資産税など税金の軽減措置
空き家に耐震改修を施すその他のメリットとしては、解体よりも場合によってはコストがかからない点が挙げられます。
土地や建物などの不動産を所有していると、税金や管理費などの費用がかかります。
空き家に耐震改修を施した場合に、活用できる税金の軽減措置について見ていきましょう。
耐震改修に関する特別措置を活用
国土交通省による「耐震改修に関する特別措置」は、耐震改修を促進し、良質な住宅を次世代に残すことを目的とした制度です。
要件に当てはまる耐震改修をおこなった場合に、工事の完了した年の固定資産税が軽減される制度ですので、耐震改修をすることを検討する場合は、ぜひ一度確認してみてください。
「耐震改修に関する特別措置」では、一定の要件を満たせば、耐震改修をおこなった翌年度の家屋についての固定資産税の1/2が控除されます。
工事に関する要件としては、旧耐震基準で建てられた住宅を新耐震基準に適合させる工事であること、改修工事にかかる費用が50万円を超えていることなどがあります。
さらに、住宅については、昭和57年の1月1日以前からある建物であることが条件です。
解体しないことで、土地に対する固定資産税を節約
固定資産税の軽減措置の一つに、「住宅用地の特例」と呼ばれるものがあります。
この特例により、人が住むために建てられている建物の敷地として利用されている土地の固定資産税は、最大で1/6までに軽減されます。
空き家を解体した場合、建物に対する固定資産税を支払う必要はなくなりますが、「住宅用地の特例」については要件から外れるため適用されなくなります。
一方で、空き家に耐震改修を施して家屋を残しておけば、「耐震改修に関する特別措置」や「住宅用地の特例」の対象となるため、空き家を解体するよりも税金を軽減できる可能性があるのです。
空き家の耐震改修のメリット③補助金の活用
空き家に耐震改修を施した場合のコスト面でのメリットとしては、税金の軽減措置以外にも、補助金が活用できることが挙げられます。
安全性の高いまちづくりや、空き家対策の一環として、多くの自治体が空き家の耐震改修に対する補助金制度を設けています。
一例として、愛知県岩倉市の令和3年度「木造住宅の耐震改修費等補助」制度について見てみましょう。
こちらの制度では、市による耐震診断で倒壊等の危険があると診断された木造住宅について、その耐震改修費用の一部を市が補助していました。
対象となる工事は、木造住宅耐震改修、段階的耐震改修、耐震シェルター整備、解体などで、工事の種類に応じて、40万円から110万円の補助金が支給されます。
空き家の大きさにもよりますが、一般的な耐震改修工事には100~150万円ほどかかると言われていますので、補助金を活用できれば、コスト面でそれなりの負担軽減が期待できます。
自治体により要件の詳細は異なりますが、多くの自治体がこのような補助金制度を設けていますので、空き家の耐震改修のコストを抑えたい方は、空き家がある自治体の制度について調べてみるとよいでしょう。
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まとめ
今回の記事では、空き家の耐震改修のメリットについて、資産価値やコストの面からご紹介いたしました。
日本の中古住宅は資産価値が低いため、活用や売却の際には解体したほうがよいというイメージが強いかもしれません。
しかし、耐震改修をはじめとした適切なリフォームやリノベーションを施すことで、資産価値を高め、コストを削減できる場合があります。
また、次世代に良質な住宅を残すことを目的とした国の制度により、空き家の改修に対する補助金が設けられています。
空き家をどうするかお悩みの方は、補助金の要件に合っているかどうかの確認もあわせて、一度耐震改修を含めたリフォームやリノベーションの可能性についてもご検討されてみてはいかがでしょうか。
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