所有者が認知症になった空き家は売却できる?家族信託の活用を検討してみよう

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空き家の管理方法
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所有者が認知症になった空き家は売却できる?家族信託の活用を検討してみよう

現在、日本の社会問題の一つとなっている空き家問題ですが、親が高齢となってくると、多くの方が直面する身近な問題でもあります。
親から相続した実家が空き家になってしまい、管理や処分の方法に困る、といったケースを耳にしたことがある方は少なくないのではないでしょうか。
その他に近年問題となっているのが、実家の所有者である親が認知症により施設に入所したけれど、所有者に意思能力がないために空き家となった実家を処分することができない、といったケースです。
そこで今回の記事では、そのような事態に備えるための空き家対策として「家族信託」について解説いたします。

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認知症による資産凍結で空き家が増加?対策として注目される家族信託とは?

はじめに、空き家対策に家族信託がどのように役立つのかについて、解説いたしましょう。
総務省統計局が実施した「平成30年度住宅・土地統計調査」では、2018年時点での日本の空き家数は848万9千戸、空き家率は13.6%と過去最高を記録しました。
このように、日本では空き家の増加が深刻な社会問題となっています。
その要因は様々ですが、とくに地方で顕著なのが、資産価値の低下や立地の悪さにくわえ、空き家の需要が供給を下回るために、売却希望の物件がなかなか売れないという現実があります。
一方で、近年では立地条件に関しては問題がなく、住宅需要の高い都会においても売却したくてもできない物件が増加し、空き家問題が深刻化していると言われています。
その要因の一つが、空き家所有者の認知症です。
空き家所有者が認知症を発症すれば、その程度にもよるものの、意思能力がないと判断され、契約などを含む法律行為が無効となってしまうことがあります。
つまり、所有者が認知症を発症すれば、売買契約の締結が必要な空き家の売却ができなくなってしまうわけです。
これは、その空き家の名義が共有名義の場合でも同様で、名義人のうちの一人が意思能力を喪失した時点で、売却は不可能となってしまうのです。
現在、このような「認知症による資産凍結」のために売却することのできない空き家が増えているのです。
高齢化が進む日本では高齢者の2割が認知症になるとされ、その財産管理が社会的な問題となっています。
こうした状況下で、高齢者の財産管理対策として有効な手段とされているのが、「家族信託」なのです。
家族信託は信託法と呼ばれる法律に基づき、自分の財産を自ら管理することが難しくなった場合に備えて、あらかじめその管理権限を家族に与えておく制度です。
空き家を例にとりますと、空き家の所有者はその空き家を自由に活用したり処分したりする権限を有し、その管理を誰かに委託することができます。
空き家の家族信託では、空き家の所有者がその管理権限を自身の家族に委託するわけです。
家族信託の仕組みは「委託者」、「受託者」および「受益者」の3者によって成立し、財産を管理する「委託者」が、財産管理人である「受託者」に財産を預けて管理や運用をしてもらい、利益が出た場合には「受益者」にその利益が渡る、という仕組みになっています。

空き家対策としての家族信託のメリット

家族信託が空き家対策としてどのように有効であるか、家族信託の仕組みにも触れながら解説してきました。
ここからは、空き家の管理に家族信託を活用するメリットについて、より具体的にご紹介していきましょう。

●成年後見制度を利用した場合に比べ、受益者に与えられる財産管理の自由度が高い
すでに述べたとおり、高齢化社会において、認知症発症による資産凍結が問題となっています。
財産所有者が認知症を発症した場合の財産管理対策としては、成年後見制度があります。
ただし、後見人に選ばれるのが親族とは限らないうえに、対象となる財産を管理する権限が制限されるケースもあるため、活用が難しいという側面がありました。
その理由の一つが、成年後見制度では、財産所有者の財産の運用を含まない管理や財産そのものの保護をすることに主眼が置かれているためです。
このため、空き家の所有者が認知症を発症して、後見人が空き家を活用した事業などをおこないたい場合、成年後見制度では、財産に損害が生じる可能性がある投資は認められないのです。
一方、家族信託では、委託者の意向に沿ってさえいれば、受託者は自由に信託された財産を運用することができます。
家族信託は財産を子ども名義として、財産継承者により大きな権限を付与できる点が、成年後見制度と比べた際のメリットと言えるでしょう。

●家族信託の遺言効果は、遺言を用いた場合よりも、委託者の意思をより自由に反映できる
家族信託締結時に財産の継承者を指定することで、遺言のような効果を得ることができますが、遺言とは異なり、家族信託では二次相続の際の後継者まで決めることができます。
この方法を活用すれば、相続人全員がとりおこなう遺産分割協議が不要となるため、相続人同士でトラブルが生じたり、相続人に認知症が発症して、協議が停滞したりといった事態を心配することなく、よりスムーズな相続が可能となります。
このように、家族信託を活用することで、財産所有者には遺言以上の権限が与えられる点も家族信託のメリットの一つです。

●家族信託には倒産隔離機能がある
家族信託には、倒産隔離機能と呼ばれる機能があり、信託された財産は委託者からも受託者からも独立した財産になるという原則が存在します。
このため、委託者や受託者が破産した場合でも、信託した財産が差し押さえられる心配はありません。

空き家対策として活用できる!家族信託の手続き方法とは?

最後に、家族信託の手続きについてご説明しておきましょう。

●契約締結
はじめに、財産所有者である委託者と、財産を委託する受託者との間で家族信託の内容を決め、契約書を交わします。
契約の具体的な内容としては、信託する財産の範囲や、管理方法にくわえ、家族信託をおこなう目的や受益者となる方などについて決めておくことになるでしょう。
ただし、家族信託の契約内容に決まったルールがあるわけではありませんので、後のトラブルを避けるためにも、弁護士など専門家に相談したうえで、契約書を作成することをおすすめします。
さらに、公証役場で契約書を公正証書にしておくことも、後日のトラブル回避のポイントとなります。

●口座開設
契約書を交わせば、その家族信託専用となる銀行口座を開設するとよいでしょう。
これは必須ではありませんが、財産を委託される側の受託者には、自分の財産と委託される財産を分けて管理する義務があるため、新たな口座を用意することをおすすめします。
信託財産を賃貸物件とした際の賃貸収入を管理する場合などに活用できます。
信託銀行では、家族信託向け口座を開設することもできます。

●信託登記
さらに、空き家など不動産の信託財産については、法務局で名義を受託者へと変更する信託登記をおこなう必要があります。
こちらは煩雑な手続きとなるため、司法書士など専門家への依頼をおすすめします。

●運用開始
口座の開設および信託登記の完了をもって、家族信託の運用開始となります。

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まとめ

今回の記事では、認知症による空き家をはじめとした資産凍結対策としての家族信託について解説いたしました。
家族信託は、あらかじめ契約を交わしてさえおけば、成年後見制度や遺言よりも、法の制限を受けずに、当事者の意思を反映することができるメリットがあります。
不動産をはじめとした財産管理に不安をお持ちの方は、ぜひ一度、家族信託の利用についてご検討されてみてはいかがでしょうか。
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