年々深刻化する空き家問題を受け、2015年、国は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。
それ以降、多くの自治体が空き家対策計画を策定し、空き家問題に対する様々な取り組みをおこなっています。
2021年となった現在までに、こうした努力の成果がすでに垣間見えている自治体もあれば、依然として空き家が増え続けている自治体もあります。
そこで、今回の記事では、2021年の空き家問題の現状について、「住宅・土地統計調査」の統計結果なども取り上げながらご解説いたします。
2021年空き家の現状を知る前に!なぜ空き家が増えると問題なの?
まずは、空き家問題とはなにかを知るために、そもそも、なぜ空き家の増加が社会的な問題とされるのか、その理由について触れておきましょう。
空き家の増加が問題とされるのは、十分に管理されていない空き家は、所有者だけでなく、その周辺地域に悪影響を及ぼし、周辺住民の生活環境を脅かすためです。
このことは、「空家等対策の推進に関する特別措置法」においても指摘されており、管理不全により周辺地域に悪影響を及ぼす可能性のある空き家は「特定空き家」に指定され、行政措置の対象となることが規定されています。
ここで、管理不全の空き家が周辺地域にどのような悪影響を及ぼすのか、具体的に見ていきましょう。
家屋の老朽化などにより、地域の安全を脅かす
このような建物は日常的に人が出入りし、使用していなければ、急速に老朽化していきます。
つまり、空き家はある程度の管理がなされていても老朽化しやすい状況にありますので、適切な管理を怠れば、老朽化の進行に拍車がかかることになります。
老朽化が進んだ家屋は、その一部が剥離して落下したり、全体または一部が倒壊したりする可能性が高まります。
台風や地震などの自然災害時には、その危険性はさらに高まることになります。
このように、家屋の一部が飛散する、または建物が倒壊すれば、通行人や周辺住民が巻き込まれることが考えられ、周辺地域の安全を脅かすことになるのです。
治安の悪化を招く
定期的に管理されていない空き家は人の出入りがないとわかりやすく、不法侵入や放火などのターゲットとされる可能性が高まります。
不法侵入された場合には、薬物に関する犯罪や性犯罪の温床となることも考えられます。
このように、空き家を放置すると、周辺地域の治安の悪化の原因となるケースがあります。
周辺の衛生環境を悪化させる
長期間にわたり空き家を放置し、清掃を怠っていると不法投棄されやすくなります。
また、庭など敷地内の樹木や植物の手入れを怠ると、草木が生い茂って敷地内の通気が悪くなり、積もった落ち葉が腐ったり、周辺に飛散したりする原因となります。
このような状態自体が不衛生であると同時に、害虫や害獣が繁殖しやすくなり、さらなる衛生状態の悪化を招きかねません。
不衛生な状態で放置された空き家は、周辺地域の衛生環境にも悪影響を及ぼし、近隣トラブルの原因となることもあります。
周辺地域の景観を乱す
このように適切な管理を怠り、空き家を放置しておくと、家屋の老朽化や敷地内の荒廃は免れません。
荒廃した空き家の外観は周辺地域の景観を乱し、地域全体のイメージの低下につながりかねません。
地域のイメージが悪くなれば、人が寄り付かなくなり、その地域全体の治安などを脅かすこともあります。
このように、適切に管理されていない空き家が地域内に増えると、安全・治安・衛生・景観の面で地域全体に影響を及ぼし、コミュニティ全体が衰退していきます。
そのような事態を避けるためにも、国や自治体は空き家問題を社会的な課題として取り上げ、様々な取り組みを始めているのです。
2021年空き家問題の現状は?住宅・土地統計調査の統計をご紹介
総務省統計局は5年毎に「住宅・土地統計調査」と呼ばれる、住宅や土地に関する統計調査を実施しています。
2018年にその最新の調査である「平成30年住宅・土地統計調査」がおこなわれ、2020年には一部のデータが更新されています。
ここからは、「平成30年住宅・土地統計調査」と更新されたデータを基に、2021年時点での、日本の空き家の現状をご紹介いたします。
全国の空き家数・空き家率
まず、全国の空き家数と空き家率についてですが、「平成30年住宅・土地統計調査」で公表された2018年の全国の空き家数は848万9千戸、空き家率は13.6%と、空き家数・空き家率ともに過去最高となりました。
前回調査である2013年の調査結果は空き家数が819万6千戸、空き家率が13.5%でしたので、空き家数は29万3千戸(3.6ポイント)、空き家率は0.1ポイントの上昇となっています。
ただし、2018年の統計で明らかになった空き家数・空き家率ともに過去最高で、かつ増加傾向にあるものの、増加のスピードに歯止めがかかりつつあるとも言えそうです。
空き家の種類別の空き家の数
次に、空き家の種類別の統計を見ていきましょう。
「住宅・土地統計調査」での空き家の種類は以下の通りに分類されています。
●賃貸向けの住宅
●売却用の住宅
●別荘やセカンドハウスなど、一時的な住居として使用される二次的住宅
●上記の住宅のような用途が定まらないその他の住宅
「平成30年住宅・土地統計調査」では、これらの住宅のうち、「賃貸用」が432万7千戸、「売却用」が29万3千戸、「二次的住宅」が38万1千戸、「その他の住宅」が348万7千戸でした。
前回調査と比較したときの増減は、「賃貸用」が3万5千戸の増加、「売却用」が1万5千戸の減少、「二次的住宅」が3万1千戸の減少、「その他の住宅」が30万4千戸増加でした。
これらの中でも、「その他の住宅」は用途が決まっていないため、十分に管理が行き届かずに、周辺地域の生活環境を脅かすような状態に陥る可能性が高いと言われています。
そのような空き家が空き家全体の40%以上を占め、5年間で30万戸以上も増加しているという現状ですから、空き家数・空き家率の増加スピードがゆるやかになってきているとはいえ、日本の空き家問題はまだまだ看過できない状況であると言わざるを得ません。
建て方別の空き家数
最後に、一戸建て、長屋建て、共同住宅など建て方別での空き家数を見ていきましょう。
「平成30年住宅・土地統計調査」での建て方別の空き家数は、一戸建てが317万戸、長屋建てが50万戸、共同住宅は475万戸となっています。
共同住宅とは賃貸アパートやマンションなどを指し、これらの共同住宅の空き部屋が空き家としてカウントされています。
空き家問題と言えば、地方の戸建ての空き家が多いというイメージをお持ちの方も少なくないでしょうが、近年では都市部の共同住宅の空き家の増加が新たな社会問題となりつつあるのです。
2021年空き家の現状は?国や自治体による空き家対策はどうなっている?
ここまでは空き家問題とはなにか、また、最新の空き家の現状についてお伝えしてきました。
日本では空き家が増加し続けており、深刻な社会問題となっていることがお分かりいただけたでしょうか。
一方で、政府や自治体は様々な空き家対策を実施しています。
最後に、国や自治体がおこなう空き家対策についてご紹介いたします。
空き家対策特別措置法
上記ですでに述べましたが、2015年、国は空き家問題への対策の一環として「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。
この法律では、自治体は十分に管理されておらず、安全・治安・衛生・景観などの面で周辺地域に悪影響を及ぼすと判断された空き家を「特定空き家」に指定し、行政措置の対象とすることができる、と定められています。
「特定空き家」に対する措置としては、自治体によって助言・指導・勧告・命令、そして行政代執行などがあります。
所有している空き家が「特定空き家」となってしまった場合、罰金が科せられる、固定資産税の軽減措置から除外されてしまうなど、様々な不利益をこうむることになります。
空き家バンク
空き家バンクとは、地方自治体などがホームページ上で、当該地域内の空き家についての情報を提供し、空き家の所有者と、空き家の購入・賃貸希望者を仲介する仕組みです。
空き家の流通を目的とした制度で、自治体や地方公共団体が非営利で運営していることが一般的です。
このため、不動産仲介業者に依頼した場合とは異なり、原則的に所有者と利用希望者の直接取引となることが多い反面、業者が取り扱わないような様々な物件が掲載できることが特徴です。
相続空き家の3,000万円特別控除
空き家が増加する原因の一つに、相続により取得した空き家は購入価格がわからないケースが多くあり、売却の際に税金がかかってしまうため、売却を躊躇してしまう方が多いことが挙げられます。
このようなケースを減らすために設けられたのが、「相続空き家の3,000万円控除」です。
不動産を売却した際に出る利益は譲渡所得と呼ばれ、税金がかかります。
譲渡所得とは、不動産の売却額から、購入価格から建物の減価償却費を引いた取得費、そして仲介手数料など売却にかかった経費を引いた金額です。
譲渡所得がマイナスであれば税金はかからないことになります。
この特例を活用すれば、譲渡所得の計算時に売却額からさらに最大3,000万円までを引くことができます。
ただし、2016年4月1日から2023年12月31日までの相続のみが対象となり、そのほかにも空き家や譲渡についても様々な適用条件があります。
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まとめ
今回の記事では、空き家問題の概要と2021年現在の空き家の現状をご紹介しました。
全国の空き家の統計は空き家数・空き家率ともに過去最高となったものの、その増加スピードは緩やかになりつつあります。
一方で、管理不全で周辺地域に悪影響を及ぼすような状態になる可能性の高い「その他の空き家」は、空き家の中でも多く、増加傾向にあります。
国や自治体では、空き家増加対策のために様々な施策を講じていますが、それでもなお、空き家は大きな社会問題の一つとなっているので、我々も空き家問題に関心をもってよりよい地域にできるようにしていきましょう。
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