空き家を所有しているにもかかわらず、所有者自身がその空き家を使わない場合、その空き家をただ管理するだけでは、手間や時間、費用がかかり続けることになります。
また、きちんと管理を続けていても空き家は老朽化していきますので、それに伴って資産価値は下がっていきます。
ですので、空き家を所有して使う予定がない場合、できるだけ早めに売却するか、または活用するかを決定することがおすすめです。
特に、売却は空き家の処分方法として最も一般的な手段の一つですが、どれほどの費用や税金がかかるのかは気になるところでしょう。
そこで、今回の記事では、空き家を売却する場合について、その際にかかる税金や節税対策として使える特例などを中心にご紹介いたします。
空き家の売却にかかる税金にはどんな種類がある?
はじめに、空き家を売却する方法とその際にかかる税金について、ご解説していきましょう。
空き家を売却する方法には、以下の3つの方法があります。
●建物を取り壊さずに、空き家と土地を売却
●建物を取り壊して、更地として売却
●買取制度を利用して、不動産会社に売却
それぞれの方法にメリット・デメリットがありますので、空き家の築年数や立地条件などに合わせて、その空き家に合った方法を選ぶとよりよい条件で売却しやすくなるでしょう。
たとえば、空き家の築年数がそれほどたっていなかったり、頑丈な構造であったりする場合には、建物を取り壊さず、空き家付きの土地として売却してもよいでしょう。
一方、空き家の老朽化が進んでいたり、住宅地としてのニーズがあまりない地域にある空き家は、解体してから更地として売却したほうがよいかもしれません。
また、なかなか購入希望者が現れない、早く売却したいなどのケースでは、不動産会社に買い取ってもらうことが多いようです。
これらの売却方法のいずれをとってもかかる費用が税金です。
空き家の売却にかかる税金としては、利益が出た場合にかかる「譲渡所得税」と、手続きにかかる「登録免許税」、「印紙税」があります。
それでは、それぞれの税金について、ご解説していきましょう。
譲渡所得税
空き家を売却したとき、その空き家を売却することで得た金額が、空き家の購入にかかった金額を上回れば、それは不動産を売却した利益ということになります。
このように不動産を売却した際に出る利益は「譲渡所得」または「売却益」と呼ばれます。
この「譲渡所得」に対してかけられる税金が「譲渡所得税」です。
「譲渡所得」は以下の計算式によって導かれます。
譲渡所得=売却金額-取得費-売却時の経費
ここで言う「売却金額」とは空き家の売却価格、取得費とは空き家の購入価格、売却時の経費とは、空き家を売却するにあたってかかったリフォーム代金や不動産会社に支払った仲介手数料を指します。
このうち、取得費については、建物の劣化などを金額として算出し、「減価償却」として空き家の購入価格から差し引く必要があります。
また、取得費が不明の場合については、売却額の5%を取得費として計算する概算ほうが用いられます。
このようにして算出した「譲渡所得」に対して、既定の税率を掛けた金額が、「譲渡所得税」となりますが、既定の税率には空き家の所有期間に応じて、「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」の2種類があります。
5年を超えて所有していた不動産により得た利益は「長期譲渡所得」となり、税率は所得税15.315%、住民税が5%として計算され、合わせて20.315%の税率となります。
所有していた期間が5年以内であれば、売却により得た利益は「短期譲渡所得」ですので、税率は所得税30.63%、住民税9%で、合計39.63%の税率となります。
なお、相続により得た空き家であれば、被相続人が所有していた期間も相続人が所有していた期間として計算されます。
つまり、相続直後の空き家を売却した場合でも、その空き家が被相続人により5年以上所有されていた場合には、税額の計算に「長期譲渡所得」の計算式が適用されることになります。
登録免許税
不動産の所有者が代わり名義を変更するには、相続登記と呼ばれる手続きが必要となりますが、この手続きに際して支払うのが登録免許税です。
登録免許税として支払う金額は、固定資産税評価額証明書上の不動産の評価額を基準として算出され、税率は0.4%となります。
この際に必要な不動産の評価額は、毎年不動産の所有者に送付される固定資産税納税通知書や、各自治体の役場にある固定資産課税台帳で確認できます。
なお、登記手続きを司法書士に依頼した場合の費用相場は7万円から10万円程度となります。
印紙税
印紙税とは、金銭の授受を伴う取引に際して作成される契約書や領収書などに課される税金のことです。
不動産取引においては、既定金額の収入印紙を契約書に貼付することで納税します。
契約金額10万円から50万円までの取引では400円、100万円から500万円までの取引で2,000円というように、契約書に書かれた取引金額に応じて税額が設定されています。
なお、2014年4月から2022年3月末日までに作成された契約書に係る取引については、軽減税率が適用されます。
空き家の売却にかかる税金を抑えるには?譲渡所得の3.000万円特別控除は使える?
空き家の売却にかかる税金について見てきましたが、不動産の売却には、税金だけでも決して少なくない費用がかかることがお分かりいただけたでしょうか
これ以外にも、空き家の売却には、不動産会社に支払う仲介手数料や解体費などの各種経費も必要となります。
空き家の売却を成功させるには、これらの費用をできるだけ抑えることが重要なポイントとなります。
そこで活用したいのが、空き家の売却にかかる税金を抑えることのできる特例や控除などです。
ここからは、これらの特例や控除についてご紹介していきましょう。
まず、すでに述べたとおり、不動産を売却して出た利益は「譲渡所得」と呼ばれ、課税対象となります。
しかし、売却して利益を出した不動産が所有者の自宅で、一定の条件に当てはまる場合には、課税額を計算する際に譲渡所得から最大で3,000万円が差し引いて計算されます。
これが「譲渡所得の3,000万円特別控除」です。
ただし、ここで注意したいのが、この控除には適用条件があることです。
その条件には、売却する不動産が居住用物件であることや、まだ売り主が生活拠点として利用していたことが含まれています。
また、売却の期限は住まなくなってから3年後の年末までとされています。
つまり、売却した空き家が親から相続した物件で、相続人が住んだことがない場合や、別荘としてしか利用していなかった場合、空き家の期間が長かった場合などには「譲渡所得の3,000万円控除」を利用することはできません。
相続した空き家の売却で使える税金の控除や特例はあるの?
このように、「譲渡所得の3,000万円控除」を空き家の売却で利用するには、さまざまな制限が設けられており、特に相続で譲り受けた空き家を売却する際にこの制度を利用するのは難しいと言えるでしょう。
しかし、空き家問題の深刻化を受け、相続した空き家にも使える「譲渡所得の3,000万円控除」の制度が新たに設けられました。
それが「相続空き家の3,000万円控除」、通称「空き家特例」と呼ばれる制度です。
この特例では、相続した空き家の譲渡所得について、一定の条件をクリアしていれば、その物件に売り主が居住したことがなくても、「譲渡所得の3,000万円控除」と同等の税金の控除を受けることができます。
この特例を受けるためには、以下の条件をすべて満たしている必要があります。
●昭和56年5月31日以前に建てられた、戸建ての物件であること
●不動産全体の売却価格が1億円以下であること
●被相続人が一人で住んでいたこと
●耐震リフォームにより耐震基準を満たした状態、または更地として売却すること
このように適用条件があるものの、「空き家特例」を利用すれば、相続人が住んだことのない空き家であっても譲渡所得に課税される税金の控除を受けることができます。
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