国を挙げての空き家対策の一環として、平成26年11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(以下:空家法)が公布、翌年より全面施行されました。
空家法は全国の市区町村を空き家対策の主体としており、多くの市区町村がこれに基づいて、空き家対策計画を策定するなどの取り組みを進めています。
大阪市では「大阪市空家等対策計画」に沿った取り組みを積極的に推進しており、また、防災の観点から空き家の建て替えなどに関する補助金制度も充実しています。
今回の記事では、大阪市の空き家対策計画と空き家に関する補助金についてご紹介いたします。
大阪市の空き家問題への取り組みをご紹介
はじめに、大阪市の空き家対策の概要についてご紹介しましょう。
総務省統計局が実施した「平成25年住宅・土地統計調査」の結果では、全国の空き家数が約820万戸、空き家率13.5%でした。
これに対し、大阪市の空き家数は約28万戸、空き家率が17.2%と、全国的に見ても空き家が多い結果となっています。
さらに、売却や賃貸などの利用目的が定まらない、いわゆる「その他の空き家」が増加傾向にあり、戸建ての空き家の6割を占めることから、空き家が放置されたり、管理不全となったりするケースの増加が懸念されています。
西成区・東住吉区、生野区は老朽木造住宅が多いことから、空き家率が20%以上と特に高い数値となっています。
「大阪市空家等対策計画」は以下の3点を基本的方針としています。
●区役所を拠点として地域・専門団体と連携を図り、空き家対策に取り組むこと
●安全・安心なまちづくりに向けた特定空家等対策に重点的に取り組むこと
●空家等の活用を促進することで、地域の活性化やまちの魅力向上につなげること
これらの方針に基づき、大阪市は空き家の現状把握や適正管理・利活用の促進に向けて、様々な形での調査や情報提供といった取り組みを実施しています。
具体的な取り組み内容としては、空き家相談員や様々な分野の専門家による空き家に関する相談への対応や、空き家の管理や活用に関するハンドブックや事例集の発行、空き家の活用に向けたイベントの実施などが挙げられます。
これに加え、大阪市では防災性の向上や住環境の改善を目的に、民間老朽住宅の自主更新を促進する支援事業として「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」(タテカエ・サポーティング21)を実施しています。
大阪市の防災性や住環境面での大きな課題として、JR大阪環状線の外周部を中心に分布する老朽化した建物や建て詰まり、狭あい道路などがあります。
「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」では、このような土地や建物によって引き起こされる災害の可能性が高い市街地を、老朽化住宅の建て替えを重点的に促進する「防災性向上重点地区」(アクションエリア)と位置付けています。
また、アクションエリア内でも「特に優先的な取り組みが必要な密集住宅市街地」(優先地区)、優先地区内でも「重点整備エリア」などを設定しています。
この事業では、空き家を含む老朽住宅の建て替え相談や、住宅の除去費用や建て替え建設費用の補助制度などが用意されていますが、一部の補助制度はこれらの地域に優先的に適応されています。
「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」とは?すべての地区で利用できる補助金をご紹介
ここからは、「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」の内容についてご紹介していきましょう。
すでに述べたように、「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」では、優先度順にエリアを分類し、支援策を実施しています。
こうしたエリアは以下のように分類されています。
●「防災性向上重点地区」(アクションエリア)に分類されていない「一般エリア」
●面的な災害の可能性が高く、老朽化住宅の建て替えを重点的に促進する「防災性向上重点地区」(アクションエリア)
●アクションエリア内の「特に優先的な取り組みが必要な密集住宅市街地」(優先地区)
●優先地区の中でも特に早急な支援を要する「重点整備エリア」
一般エリアや優先地区を含むすべてのエリアで利用できる支援制度や補助金制度についてご紹介していきましょう。
大阪市では、建て替え建設費や解体費の補助、「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」の利用などについての建て替え相談を受け付けています。
また、「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」ですべてのエリアで利用できる補助金制度としては「集合住宅への建て替え建設費の補助」があります。
「集合住宅への建て替え建設費の補助」は、古いアパートや長屋をマンションやアパートなどの集合住宅に建て替える場合に利用できます。
上記に述べた優先度別のエリアや建て替えの種別ごとに補助率などの条件が異なりますが、設計費、解体費、共同施設整備費の一部の補助金を受けることができます。
一般エリアの集合住宅への建て替えでは、昭和56年5月31日以前に建設された集合住宅や住宅について、敷地面積200㎡以上、3階建て以上の賃貸住宅や分譲住宅に建て替える場合、設計費や解体費、共同施設設備費の1/2以内について補助金制度の適用を受けることができます。
補助金の限度額は、2戸以上の賃貸住宅等への建て替え(単独建替)の場合は1,000万円、隣と一緒に、1棟に建て替える共同建替や、隣と同時期にルールを決めてそれぞれ建て替える協調建替の場合には4,000万円と定められています。
一方で、アクションエリア、優先地区、重点整備エリアでの集合住宅への建て替えでは、昭和56年5月31日以前に建設されたすべての建物や建物解体後2年以内の土地に3階建て以上の賃貸住宅や分譲住宅を建設する際の設計費、解体費、共同施設整備費について制度の適用を受けることができます。
補助率については、アクションエリアでは1/2以内、優先地区および重点装備エリアでは1/2以内または対象項目によって2/3以内となっています。
また、補助限度額は単独建替で1,000万円、共同建替や協調建替で4,000万円となっています。
狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度とは?「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」の補助金制度
ここからは、優先地区や重点整備エリアで受けることのできる「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」の補助金制度をご紹介しましょう。
まず、「戸建て住宅への建て替え建設費の補助」は道路に接していない未接道敷地や15坪以下の狭小敷地を解消のため、平成30年4月以降に隣接する土地を売買で取得した敷地で、戸建て住宅に建て替える場合に設計費や解体費、災害時避難通路整備費を補助する制度です。
具体的には、昭和56年5月31日以前に建設された建物について、敷地面積80㎡以上150㎡未満、住戸規模50㎡の戸建て住宅に建て替える場合に利用することができます。
補助率は上記対象項目にかかる費用の2/3以内で、補助限度額はありません。
また、「狭あい道路沿道老朽住宅除却促進制度」では、優先地区および重点整備エリアにおいて、狭い道路に面した古い木造住宅を解体する場合に、解体費の一部の補助を受けることができます。
対象となるのは、優先地区において幅員4m未満の道路に接する敷地内に昭和25年以前に建てられた木造住宅、または重点整備エリアにおいて幅員6m未満の道路に接する敷地内に昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅の解体費用です。
補助率は解体費用の1/2以内、補助限度額は戸建て住宅で75万円、集合住宅で150万円と定められており、解体後の用途は問われません。
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まとめ
大阪市は全国的にも空き家が多いエリアとなっていますが、「大阪市空家等対策計画」の策定や「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」など、積極的に空き家対策に取り組んでいます。
特に「大阪市民間老朽住宅建替支援事業」では、優先地区での老朽化住宅の建替を対象とした補助金制度が充実しています。
対象エリアに老朽化住宅をご所有の方は、補助金制度の活用をご検討してみてはいかがでしょうか。
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