現在、日本では空き家の増加が深刻な社会問題となっており、平成26年、空き家問題に対する国の取り組みとして「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家対策法)」が制定、翌年より施行されました。
空き家対策法は所有者を空き家の適切な管理の主体として位置付けると同時に、市町村に空き家対策に関する計画を作成することを求めています。
神奈川県横須賀市は早い段階から空き家対策法に基づいた取り組みをおこなってきた自治体の一つです。
平成27年には、市は空き家対策法に基づく措置として全国で初めて行政代執行による特定空き家の除去を実施し、それ以降も積極的に空き家対策に取り組んでいます。
今回の記事では、横須賀市の空き家問題に関する取り組みについてご紹介いたします。
空き家対策に積極的に取り組む横須賀市の空き家の現状とは?
はじめに、横須賀市の空き家の現状について触れておきましょう。
総務省統計局は5年ごとに全国の住宅および土地の現状を把握するために「住宅・土地統計調査」を実施しています。
「平成25年住宅・土地統計調査」の結果によれば、横須賀市の総住宅数が196,300戸であるのに対し、空き家数は28,830戸、空き家率は14.7%でした。
空き家の用途ごとの統計を見てみますと、市内の空き家総戸数のうち、「賃貸用の住宅」は41.8%、売却や賃貸などの用途が定まらない「その他の住宅」は38.4%、別荘やセカンド・ハウスなどの「二次的住宅」が14.9%、「売却用の住宅」が4.9%となっています。
腐朽・破損があると認められたものがもっとも多かったのは「その他の住宅」で、11,060戸のうち4,350戸と4割近くに腐朽や破損が認められています。
また、市内の空き家数・空き家率の推移を見てみますと、昭和63年から平成25年までの25年間、空き家数・空き家率ともに一貫して増加しています。
特に「その他の住宅」は、平成15年から平成25年までの10年間で4,400戸から11,060戸とおよそ2.5倍に膨れ上がっており、管理不全となる傾向が高い「その他の住宅」が増加していくことが懸念されています。
また、横須賀市の空き家数・空き家率を神奈川県や全国の空き家数・空き家率と比較してみますと、横須賀市の空き家率14.7%は神奈川県の平均11.2%や全国平均13.5%を上回っています。
これには横須賀市の地理的特徴が関係していると考えられます。
横須賀市は平坦な土地が少なく、山や丘陵地帯がその面積の多くを占めるという地理的特徴を持ち、古くから栄えた浦賀港と横須賀港の関係者向けの住宅が港に近い斜面地に密集しています。
「谷戸」とは、このような地域の階段でしか行くことができない、山や谷が入り組んだ地形の斜面地を指します。
平成21年に市がおこなった調査では、郊外住宅地の空き家率2.4%に対して、谷戸地域では7.6%と特に多くの空き家が発生しており、これが市全体の空き家率の高さに影響を及ぼしていると考えられます。
また、横須賀市には戦前に建てられた家屋が多く残っているため、こうした家屋が空き家となり、管理不全により老朽化して周辺の住環境に悪影響を及ぼすケースが発生しています。
さらに、少子高齢化により、戦後に開発された戸建て住宅団地でも空き家が増加していくことが懸念されています。
横須賀市空き家等対策計画とは?空き家の適正管理・活用促進・発生抑止に向けた取り組み
上記のような状況に対応するため、横須賀市は平成24年に「横須賀市空き家等の適正管理に関する条例」を制定しました。
さらに、空き家対策法に基づいた「横須賀市空家等対策計画」、「横須賀再興プラン」、「横須賀市都市計画マスタープラン」などにおいて、空き家問題対策の方針や具体的な施策を定め、空き家の発生防止や放置空き家への対処に取り組んできました。
ここからは、「横須賀市空家等対策計画」の内容に触れつつ、横須賀市の空き家問題に対する取り組みをご紹介していきます。
「横須賀市空家等対策計画」では3つの基本理念に基づき、空き家問題への対策の3つの方向性が示されています。
その理念とは、市民の安全・安心と住環境を守るための取り組みを推進すること、地域の活性化・魅力向上に向けた空き家等の流通・活用の促進すること、そして拠点ネットワーク型都市の実現に向けた空き家等の流通および発生予防の促進することとされています。
横須賀市は、これらの理念に基づき、空き家等の適正管理、活用促進、発生抑止という3つの方向性からさまざまな取り組みを実施しているのです。
横須賀市の空き家解消に向けた取り組み内容とは?空き家解体の助成金支給や空き家バンクなど
それでは、これらの取り組みについての具体的な施策をご紹介しましょう。
まず、空き家の適正管理に関する取り組みでは、空き家の所有者に対して適切な管理を促進すべく情報を提供し、助言や指導、支援をおこなっています。
周辺の環境に悪影響を及ぼすと判断される「特定空き家」については、空き家対策法に基づく措置が取られる場合もあります。
また、空き家に対する2種類の解体助成制度も設けられています。
このうち、空き家解体費用助成事業では、市内の空き家で市の老朽度判定の点数が一定以上である場合、解体工事着工前に申請すると、35万円を上限として市内の事業者による解体工事費用の1/2の補助金を受けることができます。
また、旧耐震空き家解体助成事業では、5年以上使用されていない市内の空き家が旧耐震基準により建築され、耐震改修がされていない場合、市内の事業者による解体工事について、着工前に申請をおこなえば、15万円を上限として工事費用の1/2の補助金を受けることができます。
空き家の利用促進に関する代表的な取り組みとして挙げられるのが、空き家の所有者と購入希望者を市のホームページを通じてマッチングする空き家バンクの設置です。
横須賀市の空き家バンクには、駅周辺谷戸地域空き家バンク、横須賀一芸住宅バンク、子育てファミリー等応援住宅バンクがあります。
駅周辺谷戸地域空き家バンクでは、車を利用できないが、緑が多く、眺望のよい物件も多い谷戸地域の空き家物件を紹介しています。
横須賀一芸住宅バンクでは、眺望がよい、広い庭があるなど使い方次第で魅力となる特徴を備えた中古住宅を掲載しています。
子育てファミリー等応援住宅バンクでは、高度経済成長期に開発され、少子高齢化によりいわゆる「相続空き家」が増加しつつある戸建て住宅団地内の中古物件を掲載しています。
こちらの空き家バンクに掲載された物件を、中学3年生までの子どもがいるか、夫婦ともに50歳未満の子育て世代の方が購入し、居住した場合、物件の購入やリフォーム・解体費用に対して、合計で最大50万円の助成金制度を利用することができます。
空き家バンク以外にも、空き家の利用促進に関する取り組みとしては、空き家の所有者や管理者のための相談窓口の設置や相談会の実施があります。
さらに、空き家の発生抑止に関する取り組みとしては2世帯住宅リフォーム助成事業があります。
2世帯住宅リフォーム助成事業では、横須賀市内の一戸建て住宅に住む親世帯が、市外から転入する子ども家族と同居する場合、30万円を上限として必要となるリフォーム費用の1/2を助成します。
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まとめ
横須賀市は戦前に建てられた古い家屋が残り、車が入り込めない地域に住宅が密集しているという事情から、空き家数・空き家率が高い傾向にあります。
このような背景から、横須賀市は早い段階から積極的に空き家対策に取り組んでおり、空き家解体を対象とした助成金の支給や、様々な中古物件を掲載した空き家バンクなど、空き家について充実したサポートを受けることができます。
首都圏で空き家の購入をご検討中の方は、今回ご紹介した横須賀市の空き家に関するサポートを活用してみてはいかがでしょうか。
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