2021年2月10日、法制審議会にて「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」が決議されました。
これは相続登記の義務化を定めるもので、3月中にも改正案を提出、決定し、2023年度の施行を目指しています。
この法案は、所有者不明土地や所有者不明の空き家に関する問題の解決に向けた国の取り組みの一つで、これらの所有者不明の不動産の増加に歯止めをかけることが期待されています。
そこで今回の記事では、所有者不明土地問題や、法改正のポイントなどについてご解説いたします。
相続登記と空き家の関係とは?放置空き家は所有者不明のケースが多い!
はじめに、相続登記を義務付ける今回の法改正の発端となった所有者不明土地問題についてご説明しましょう。
まずは、所有者不明土地とはなにかについて見ていきましょう。
国土交通省の規定によると、所有者不明土地とは、不動産の所有者を記載する台帳に所有者の氏名などについての正確な情報の登録がない土地のことです。
本来、登記簿から所有者をはじめとする不動産の情報がわかるはずですが、それだけではその不動産の所有権に関わる情報が確認できないケースがあるのです。
このような状況となった大きな要因の一つが、これまで相続登記が義務とはされておらず、不動産の所有者の変更に伴って相続などの際の登記手続きがおこなわれないケースが多くあったことと言われています。
相続登記の手続きには手間がかかりますし、税金などの費用もかかります。
また、相続人が複数いる場合には、遺産分割協議や相続人間での話し合いなど、さらに多くの手間や時間がかかることになります。
このため、不動産を相続しても登記手続きをおこなわずに放置するケースが増えてしまったのです。
所有者不明土地が増加したもう一つの要因と考えられているのが、不動産の所有者が住所を変更した際、これに伴う登記手続きが義務化されていなかった点です。
所有者の住所変更が登記簿に登録されなかったために、所有者が明確でない土地や空き家が多く存在します。
このように、現状に合わせて登記簿の内容を変更することが義務付けられていなかったために、不動産の所有者台帳と現状との乖離が生じ、放置される空き地や空き家が増加してしまったのが、所有者不明土地問題です。
そして、こうした状況を国が問題視し、今回の法改正に踏み切ったというわけです。
所有者不明の土地や空き家が引き起こす問題とは?
所有者不明の土地や空き家など不動産は様々な面で問題を引き起こします。
次に、こうした土地や空き家の所有者となってしまった場合にこうむる様々な不利益について見ていきましょう。
所有者不明の土地や空き家の所有者となってしまった際、大きな問題となるのが、その土地や空き家を売却することが困難になってしまう点です。
不動産取引の際に登記簿と売り主の名前や住所に相違があった場合、売り主が実際にその不動産を所有していることが証明できませんので、不動産仲介業者や購入希望者に取引に応じてもらうことは困難になってしまうでしょう。
また、所有者不明の土地や空き家は利活用することも難しくなります。
このような不動産の利活用にはアパート経営や駐車場などの土地活用がありますが、建物を建てたり、土地を整備したりする際にも、所有者の確認は必須となります。
登記簿で土地の所有権を確認することができなければ、やはり業者と取引することは難しいでしょう。
空き家の活用の場合も、その空き家を賃貸物件として活用したいと考えても、所有者を確認することができなければ、仲介業者が取引を拒否する可能性が高いと言えます。
さらに、所有者不明土地は、融資を受ける際に抵当物件として利用することも難しいと言えます。
通常の不動産であれば、土地に建物を建てる際、その土地を担保として金融機関から建設費の融資を受けることができます。
この場合も、金融機関が担保とする土地の所有者の確認には登記簿が必要となります。
ここで名義と実際の所有者が一致しない場合、金融機関の信用が得られず、融資を拒否されてしまうでしょう。
そして、所有者の代替わりが進んで登記手続きがなされずに放置されている土地や空き家の場合には、その分相続人が増えていることも考えられます。
このようなケースでは、登記簿に不動産所有の現状が正しく反映されていなければ、相続する財産の現状を把握できません。
これを前提として遺言を書くこともできませんので、次の代への相続にも支障をきたすことになるのです。
このように、登記簿に正確な情報が記載されていない土地や空き家は、売却や利活用することができず、次の代への正しい相続や登記も困難になってしまいます。
そのため、所有者不明となった土地や空き家が放置され、空き地・空き家問題を深刻化させる一因となっているのです。
空き家・空き地問題の解消に向けた取り組み!相続登記に関わる法改正の内容は?
最後に、相続登記義務化に関わる法改正の内容についてご説明いたします。
2021年2月に決定された「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」で示された内容のうち、相続登記義務化に関わるのは、相続登記および住所変更登記の義務化です。
まず、相続登記の義務化では、相続や遺贈により不動産の所有者となれば、その不動産の所有を確認した日から3年以内に登記簿の名義を変更することが義務付けられます。
また、複数の相続人がおり、遺産分割協議に時間がかかる場合、法定相続分による登記をおこなうか、相続人であることを申告して連絡先などの情報を登記簿に登録した上で協議をおこない、遺産分割から3年以内に遺産分割に基づいた名義変更が義務付けられました。
これらの義務に従わなかった場合には、過料の対象となります。
一方で、遺贈や遺産分割による名義変更については、従来、手続きの際には法定相続人全員の協力が必要でした。
しかし、今回の法改正によりこれが簡略化され、遺贈の対象者が単独で手続きをおこなうことが可能になりました。
また、法務局が住基ネットにより所有者の死亡を確認すれば、これを登記簿に反映することができるようになりました。
相続についての登記の義務化に加え、所有者の氏名や住所に変更があった場合には、その変更内容の登記手続きをおこなうことも義務付けられました。
この場合も、2年以内に手続きをおこなわなければ、過料の対象となります。
また、こちらのケースでも、法務局が登記簿上に記載された内容が所有者の現状に反映されていないことを確認した場合、登記内容の変更手続きをおこなうことが認められました。
さらに、法務局内部での情報照会に役立てるため、不動産所有者が個人である場合は生年月日などの情報を提供すること、また、所有者が法人であれば法人登記の際の法人番号が登記簿に記載されることも定められました。
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まとめ
これまで、登記簿に正確な情報を記載することが義務付けられておらず、行政は放置された空き家や土地への対処に苦慮し、また所有者は土地や空き家の売却や利活用ができないため、これらの不動産が空き家・空き地のまま放置されてしまうケースは少なくありませんでした。
今回の法改正により、空き家や空き地の放置問題が解消されていくことが期待されています。
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