空き家の利活用が推進されるなか、空き家の無償譲渡にも注目が集まっています。
空き家の無償譲渡には多くのメリットがある一方で、注意点もあります。
今回の記事では空き家の無償譲渡について、その方法やメリット、注意点などについてご紹介いたします。
空き家の無償譲渡がおこなわれる背景とは?空き家の増加や税金対策など
はじめに、空き家の無償譲渡とその背景についてご説明していきましょう。
ものを譲り渡す際には、通常その対価として金銭の授受がおこなわれ「売却」もしくは「有償譲渡」と言われますが、「無償譲渡」とはものを無償で譲ることを指します。
空き家の無償譲渡とは、活用していない不動産をその利活用を希望する相手に無償で譲ることになります。
ものの対価として金銭の授受が発生しないため、法的には「譲渡」ではなく「贈与」に位置づけられます。
活用されていないとはいえ、空き家が無償で手に入るというのは都合のよい話に聞こえるかもしれませんが、その背景にはさまざまな要因があります。
その根幹となる要因の一つに、空き家の増加があります。
総務省が5年ごとにおこなう「住宅・土地統計調査」では、調査開始の1963年当時、日本の空き家率は2.5%でしたが、その最新の調査がおこなわれた2018年には13.6%にまで増加しています。
こうした状況を生み出した背景には、人口減少や少子高齢化があります。
日本では新築住宅が好まれる傾向があるため、人口が減少しているにもかかわらず新しい住宅が建設されつづけています。
住宅に住む人の数が減少する一方で住宅の数は増加しているため、住宅の供給過多となり、古くなった住宅が空き家となってしまうわけです。
また、人口減少が顕著なのが地方で、この要因には都市部に雇用が集中した結果、働き盛りの若い世代が地元を離れ、人口が都市部へと流入していることが挙げられます。
こうした状況に追い打ちをかけているのが少子高齢化です。
住宅の所有者が高齢になって子どもとの同居や老人ホームに入所するなどして、自宅が空き家となってしまうケースが増加しています。
さらに、このようにして住み手がいなくなった住宅が利活用されず、空き家となってしまうさまざまな要因があります。
たとえば、長年住んだ思い入れのある自宅を手放したり、解体したりすることに抵抗がある方は少なくありません。
また、建物の解体や空き家を売却するためのリノベーションなどに費用がかかる、住宅を取り壊して更地にすると固定資産税の軽減措置が受けられなくなるなどの経済的な理由で空き家となってしまうケースもあります。
築年数の古い住宅の場合、除去しても新たに建物を建設することが法的に許可されない「再建築不可物件」もあります。
しかし、このように空き家となってしまった多くの住宅にも、都市計画税や固定資産税などの税金や管理費などがかかり続けます。
また、空き家の管理を怠って周辺地域に悪影響を及ぼすと判断され、特定空き家に指定されれば、固定資産税の軽減対象から外され、さらに税金を課せられることになります。
すでに述べたとおり、こうした事態を回避するために空き家を解体して更地にしても、固定資産税の軽減措置が受けられなくなります。
このような状況が空き家の所有者が無償であっても空き家を譲渡したいと考える要因となっているのです。
空き家の無償譲渡の方法って?口コミや空き家バンクなどを利用
ここからは、空き家の無償譲渡の方法をご紹介いたします。
●口コミで譲渡先を探す
無償譲渡の方法としてまず挙げられるのが、口コミを通じて親せきや知人、近隣住民などに譲渡する、という手段です。
無償譲渡することを決めたら、まずは空き家があるエリアで不動産を探している方がいないか、周辺の方に相談してみるとよいでしょう。
空き家の隣に住んでいる方であれば自宅の敷地を拡大できる、周辺でビジネスを経営している方は近隣に駐車スペースが確保できるなど、周辺エリアの方に需要があるケースは珍しくありません。
●空き家バンクを活用する
空き家バンクは、自治体などが空き家対策を目的として運営しており、空き家の所有者が空き家の物件情報を登録し、空き家が欲しい方とのマッチングをおこなう仕組みです。
空き家バンクは、不動産会社が扱わないような古い物件や、老朽化が進んだ物件でも掲載してくれる場合が多くあります。
また、空き家バンクで空き家を探している方にも、そのような物件をできるだけ安価で入手したいという方がいらっしゃいます。
このため、無償譲渡であれば、譲渡先が見つかる可能性は十分にあります。
●法人や自治体に譲渡
また、法人に空き家を無償譲渡するのも一つの方法です。
ご自身の空き家の特性がその企業のニーズに合うような法人を探すとよいでしょう。
一般企業はもちろんのこと、社団法人やNPO法人、学校、寺社などにも譲渡することができます。
ご所有の空き家に歴史的価値がある、もしくは公共施設として利用できるような特性を備えている場合には、国や地方公共団体に寄付することができるかもしれません。
自治体による調査を経ての受け入れとなりますが、受け入れてもらえれば自治体が譲渡に必要な費用を負担してくれるため、選択肢の一つとして検討してみるとよいでしょう。
空き家の無償譲渡のメリットや注意点は?課税対象となる点に注意!
最後に空き家の無償譲渡のメリットや注意点についてご紹介しましょう。
まず、無償譲渡を受ける側のメリットとしては、住宅購入の費用が抑えられることでしょう。
一方で、注意すべき点としては、無償譲渡のための手続きに手間がかかることが挙げられます。
通常の空き家の売買であれば、仲介をする不動産会社が取引をサポートしてくれますが、無償譲渡の場合は譲り渡す候補者と直接交渉することが一般的ですので、調査・交渉や書類の準備などをご自身でおこなうことになります。
費用がかかってもよいのであれば、これらの手続きをそれぞれの専門家に依頼することで手間が省けます。
また、空き家自体は無料でも、贈与税や不動産取得税、登録免許税、固定資産税、都市計画税といった税金は課税されることになります。
空き家の購入費がかからなくとも、全く費用がかからないわけではないことを頭に入れておきましょう。
税金については、以下の記事もご参照ください。
関連記事|空き家の無償譲渡には税金がかかる!無償譲渡にかかる贈与税についてご解説
ただし、無償譲渡される空き家は、老朽化が進んでいたり「再建築不可物件」であったり、アクセスが極端に悪かったりといった、いわゆる「訳あり物件」である可能性があります。
次に、空き家を無償譲渡する側のメリットとしては、空き家を無償譲渡することで、その維持管理費や税金を払う必要がなくなる点が挙げられます。
また、売却するのが難しい空き家の引き取り手が見つかりやすくなることもメリットでしょう。
注意すべき点としては、無償譲渡契約書に記載されていない点があれば契約不適合責任が問われるため、無償譲渡する不動産に不具合があればそれも契約書に記載しておくという点が挙げられます。
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