総務省が5年ごとにおこなう住宅・土地統計調査の最新の結果では、日本の空き家数は848万9千戸、空き家率は13.6%となっており、空き家率は過去最高を記録しています。
中でも特に用途を持たない、いわゆる「その他の空き家」は戸建ての空き家のおよそ8割を占めており、放置され、トラブルにつながることが懸念されています。
そこで今回の記事では、空き家を放置することにより起こりうるトラブルについてご紹介いたします。
空き家のトラブルをどうする?まずは日本の空き家の現状を知っておこう
はじめに、日本の空き家の現状について見ていきましょう。
上記で述べたように、総務省による最新の調査結果では、日本の空き家数は848万9千戸、空き家率は13.6%となっています。
1988年の調査では空き家数は394万戸だったので、過去30年間で空き家数が2倍以上に跳ね上がったことになります。
また空き家率も、2003年には12.2%、2008年には13.1%、2013年には13.5%と年々上昇を続けています。
これほどまでに空き家の増加が続く原因とは何なのでしょうか。
その一つには、新築住宅の供給過多が挙げられます。
日本では少子高齢化や人口減少が問題となっているものの、核家族化の影響で世帯数自体は2014年から2018年の間に211万世帯ほど増えています。
同期間内の新規住宅着工戸数は467万戸ほど、滅失戸数は56万戸ほどでした。
つまりこの間、日本の住宅はおよそ200万戸余ってしまったわけです。
このような状況が継続的に生じていることが空き家の増加が続く原因となっているのです。
さらに、住宅用地については固定資産税などの税金が軽減される住宅用地特例も空き家が増加した一因となっています。
この特例では、住宅のある土地について、固定資産税は1/6、都市計画税は1/3を上限として減額されます。
つまり、老朽化した空き家を除去してしまえば、住宅のない土地だけが残るため、これらの税金が高くなってしまうのです。
現在では空き家対策特別措置法により、特定空き家に指定された場合はこの特例措置は受けられなくなりますが、それでも空き家の所有者が空き家を放置する一因となっていることは否めません。
税金だけでなく、住宅の除去に必要な費用も空き家が増加する原因となっています。
令和元年の空き家所有者実態調査では、空き家をそのままにしている理由について、「物置として必要」が60.3%、「解体費用をかけたくない」が46.9%と、解体費用が空き家の利活用を妨げていることをうかがわせる結果となっています。
家屋の解体の相場は木造で月・坪あたり4万円、鉄筋コンクリート造で月・坪あたり7万円とされています。
さらに空き家では、重機が進入できない狭小道路に面していることも少なくないため、費用がさらに高額となる場合もあり、空き家の除去や利活用を妨げる原因となっています。
放置された空き家が引き起こすトラブルにはどんなものがある?
このような空き家の増加が社会問題とされる背景には、空き家が放置された結果引き起こされるさまざまなトラブルがあります。
ここからは、放置空き家により引き起こされるトラブルについてご紹介していきましょう。
こうしたトラブルの一つに犯罪の温床となることがあげられます。
空き家には居住者がいないため、空き巣に狙われやすくなりますし、不審者が不法に侵入し、犯罪者のアジトとなるケースや、ホームレスが侵入してたき火が原因となって火災が発生することもあります。
このような事態になると、空き家だけでなく、周辺地域の治安が悪化してしまうのです。
これはアメリカの心理学者であるケリングが提唱した犯罪理論である「割れ窓理論」にあたります。
この理論によると、割れた窓ガラスを放置すると、その家屋が管理されていないと認識され、ごみの不法投棄が増えます。
これを引き金にその建物に犯罪者が住み着き、犯罪の温床となった結果、周囲の治安までも悪化させてしまうのです。
空き家が犯罪の温床となった事例としては、詐欺行為を働く際の住所として利用される、大麻を栽培するなどがあります。
また、空き家の倒壊・破損も空き家の放置で懸念すべきトラブルのひとつです。
建物は日常的に使われていないと急速に老朽化するものですので、倒壊の危険性が高まります。
倒壊により周辺の住宅や住民に被害がおよんだ場合、空き家の所有者に無過失責任が発生し、賠償問題に発展する可能性があります。
ごみの不法投棄をはじめとした衛生上の問題も、空き家が引き起こすトラブルのひとつです。
先ほどの割れ窓理論でもご紹介したように、十分に管理されていない空き家の敷地にはごみが不法に捨てられることが珍しくなく、そのごみを放置しておけば、投棄されるごみは増えていくものです。
捨てられたごみを放置しておくだけでも衛生的に問題がありますが、これに付随する問題に害虫・害獣の発生があります。
ごみがあることでネズミやゴキブリが繁殖すると、悪臭の原因ともなり、さらに不衛生な状態となります。
このように、空き家を放置しておくと様々なトラブルの原因となりますし、周辺地域に悪影響を及ぼしてしまい、近隣住民とのトラブルへと発展する可能性もあるのです。
空き家が引き起こすトラブルを回避するには?定期的な適正管理が必要
最後に、空き家が引き起こすトラブルを回避する対策についてご紹介いたします。
まず、空き家の防犯対策について見ていきましょう。
不審者が空き家に寄り付かないようにするためには、定期的に空き家を訪れて管理することが大切です。
ポストの中身が回収されている、除草をおこなっている、また壊れている部分がきちんと修復されているなど、人の気配を感じれば不審者は寄り付きにくくなります。
ごみの不法投棄への対処法も、ほぼ同様で定期的かつ適正な管理が、不法投棄を防ぎます。
きちんと空き家を管理していくことで、ごみの不法投棄がなくなり、それに付随する害虫・害獣の発生も防ぐことができるでしょう。
また、空き家の老朽化による倒壊や破損を防ぐためには、こまめに空き家の状態をチェックしその都度修繕していくことが最も望ましいでしょう。
老朽化が進んでしまった場合には、改修工事をおこなうか、空き家を除去することになります。
空き家を除去するには、家屋の条件にもよりますが100万円ほど、また改修工事には数百万円ほどかかってしまいます。
こういった事態を避けるためにも、早めの対処をおすすめします。
このように、空き家が引き起こすトラブルはさまざまですが、それを防ぐためには空き家を放置せず、適正に管理していくしかありません。
空き家をご自身で管理することができない場合には、空き家の管理代行業者を利用するとよいでしょう。
空き家の管理代行を請け負っているのは、ハウスメーカーや不動産会社、警備会社や中小事業主などさまざまな事業者です。
業者やサービス内容によって金額が異なりますが、費用は一般的な管理サービスで月額5,000円から10,000円が相場です。
主なサービス内容には、通風や換気、通水、破損個所や雨漏りの確認、清掃、庭木や雑草の確認、ポスト整理などがあります。
業者によって、様々な価格帯やサービス内容から選択することができますので、複数の業者を比較し、自分の予算や状況にあったものを選択しましょう。
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