近年、空き家に加え、空き店舗や空き倉庫などのいわゆる「遊休不動産」が増加している一方で、訪日外国人観光客の増加により宿泊施設の不足が問題となっています。
政府は対策として、2016年に簡易宿泊所および特区民泊の規制緩和をおこない、2018年には住宅宿泊事業法を施行するなど、その受け皿として合法的な民泊運営の推進に乗り出しています。
さらに、空き家や遊休不動産をゲストハウスに転用する動きも広がっており、ホテルや旅館とは違ったローカルな楽しみ方ができる宿泊施設として、外国人バックパッカーを中心に人気を博しています。
また、このようなゲストハウスには、単なる空き家の活用方法や宿泊施設としてではなく、地域への貢献などの社会的な目的を持って運営されているユニークな施設も少なくありません。
今回の記事では、空き家を利用して運営されているゲストハウスをご紹介いたします。
元呉服店の空き家が文化体験の場に!金沢市のゲストハウスPongyiの魅力
初めにご紹介するゲストハウスは、石川県金沢市のJR金沢駅から徒歩数分の場所にあるPongyiです。
こちらのゲストハウスは部屋数3室、最大宿泊人数10人と小規模ながら、世界的に著名なガイドブック「ロンリープラネット」により、日本で泊まりたい宿6施設のうちのひとつとして選ばれており、海外の旅行客からも人気の高い宿として認知されています。
Pongyiがあるのは、江戸時代から商家が軒を並べてきた六枚町と呼ばれる地区で、歴史を感じさせる建物が立ち並び、Pongyiもかつて呉服店だったという築140年の町家を活用したものです。
かつて空き家だったというPongyiですが駅や銭湯に近いことに加え、裏には昔ながらの蔵があり、さらに鞍月用水沿いに位置するため、夏になれば蛍を楽しむことができるという個性的な建物です。
Pongyiは普通の民家を利用しているため、客室は3室、そのほかの共用スペースは台所、シャワー・トイレに加え、共用ラウンジ、談話室、フロントとさほど広くありません。
しかし、日本の民家独特の狭い空間に暮らし、蔵を利用したドミトリーで寝泊まりするという体験は国籍を問わず好評で、特に海外の方からはドールハウスのようで興味深いとの評価が多いそうです。
さらに6畳間の談話室では折り紙や習字に加え、皆でスーパーに出向いて鍋を作るなど、日本人の文化や日常生活を体験できるアクティビティに参加することができます。
また、敷地内のバルコニーや橋を利用して、三味線や琴、能楽などの日本の芸術に触れることのできるイベントも開催されています。
このような日本ならではの狭い空間で肩を寄せ合い体験する日本の文化や生活は、海外からの旅行者にとって貴重な体験となるでしょう。
アクティビティや昔ながらの建物がPongyiの魅力の一つであることは確かですが、この宿が日本人も外国人も関係なく旅行者を引き付けるのは、まるで実家にいるかのように旅行者を受け入れてくれる懐の深さにもあるようです。
Pongyiに宗教色はありませんが、代表者の方がミャンマーで僧侶の体験をしたということから、宿泊料金のうち100円はアジアの子どもたちへの支援として寄付されています。
空き家を活用しながら、宿泊者に日本の文化や生活を体験する機会を提供し、アジアの子どもたちを支援するPongyiは、外国人だけでなく日本人にとっても魅力的なゲストハウスと言えるでしょう。
空き家となったドヤがゲストハウスに!地元民と旅人の出会いを支えるココルーム
次にご紹介するのは、大阪市西成区釜ヶ崎にあるゲストハウス、ココルームです。
釜ヶ崎と言えば日雇い労働者の街として有名です。
1960年代からの建設ラッシュで全国から労働者が集まり、労働環境改善のために起こる暴動や貧困のイメージから、治安が悪いなどと差別の目が向けられてきた歴史があります。
しかし、現在では交通の便がよく、関西国際空港に近いことからバックパッカーの間での人気が高まっています。
そのような歴史のある釜ヶ崎の一角にあるココルームは、ドヤと呼ばれる日雇い労働者向けの簡易宿泊所として使われていた建物を、地元の方やアーティスト、ボランティアの方の協力によりリノベーションしたものです。
アートのNPO法人こえとことばとこころの部屋が運営し、カフェやゲストハウスを営みながら、人々が出会い、表現し、学びあう場を提供し、地域に根差した活動を続けています。
ココルームは3階建てで、1階にはカフェと庭があり、旅人と地域の人々がふらりと立ち寄って出会うことができる団らんの場となっています。
昼食、夕食時にはココルームに滞在する人、地域の人、子どもたち、そしてスタッフみんなで食卓を囲む「まかないごはん」があり、庭でバーベキューを楽しむこともできます。
70坪ほどもあるという広々とした庭は、元土工だったという地元民の平間藤助氏や、オーナーの方が人づてに紹介されたという庭師の方などの協力を得ながら作り上げたそうです。
参加型のミニ畑や、バナナや芭蕉などの熱帯植物に覆われたパワースポットがあり、猫や鳥、イタチや蝶々などさまざまな生き物がやってきます。
また、ゲストハウスになっている2階と3階には、ツインルーム、シングルルーム、ドミトリーがあり、それぞれの部屋やベッドには「Our Sweet Home」や「銀河鉄道の駅」、「子豚とひょうたんの部屋」などユニークな名前が付けられています。
どの部屋も地元のアーティストたちの作品が展示され、それぞれが趣向を凝らした個性的な部屋となっています。
また、ココルームはカフェやゲストハウスの運営に加え、隣町である山王町の野宿者におむすびを配る活動や、地元の方が無料で健康相談を受けられる「まちかど保健室」など、様々な活動をおこなっています。
そうした活動の一つである「釜ヶ崎芸術大学」では天文学や哲学から、狂言や創作ダンスに至るまで様々な講座を開講し、参加者の表現と学びあいの場を提供しています。
単にゲストハウス旅人に宿を提供するだけでなく、地元の方と旅人が出会い、表現し、学びあう場を提供するココルームの活動は、ネガティブなイメージで語られることの多かった釜ヶ崎の魅力的な一面を教えてくれるのではないでしょうか。
淡路の下町で三軒長屋に宿泊して銭湯を楽しむ!ゲストハウス木雲
最後にご紹介するのは、大阪市東淀川区淡路にあるゲストハウス木雲です。
オーナーの方は、昭和3年より営業を続ける銭湯「昭和湯」の三男で、宿泊客は銭湯を無料で利用できることが大きな特徴です。
ゲストハウス木雲は三軒長屋を利用しており、うち1棟をカフェ、残りをゲストハウスとして営業しています。
この長屋の1棟に「昭和湯」のお客様がお住まいになっていたものを、引越しをきっかけに引き受けることとなり、残り2棟も空き家となったため、ゲストハウスの開業を決断したそうです。
改修工事はすべて地元の有志によるDIYで、杉やヒノキ材を使ったドミトリーのベッドや、しとみ戸風のカフェの窓も手作りしたものとなっています。
また、ゲストハウスの特徴である銭湯への入浴無料のサービスですが、次々と銭湯が廃業していく中、地元民だけでなくゲストハウスの利用客が利用することで銭湯の活性化につながるとの思いも込められているそうです。
そのためイベント風呂だけでなく、風呂の中でのライブや、男湯と女湯を仕切る壁越しに言葉を交わす歌垣などのユニークなイベントも開催しています。
ゲストハウスの宿泊客というと外国人が多いイメージがありますが、ゲストハウス木雲では昔ながらの銭湯と淡路の下町を楽しめるとあって、日本人客の間でも好評を博しています。
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まとめ
今回の記事では、空き家を活用しつつ、地域の活性化や文化の継承など社会的な貢献もおこなっているユニークなゲストハウスをご紹介いたしました。
空き家のゲストハウスへの転用をご検討中の方は、ご参考にされてはいかがでしょうか。
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