近年人気が高まっている移住の手段として、希望の地方で空き家を購入し、リノベーションして移り住む、という方法があります。
そのような場合の空き家物件探しのためにぜひ知っておきたいのが、空き家バンクの存在です。
そこで今回の記事では地方移住をご検討中の方に向けて、空き家バンクについて、その概要やメリットおよびデメリットなどをご紹介いたします。
地方移住で空き物件を探すなら一見の価値あり!空き家バンクとは?
空き家バンクという言葉を耳にしたことはあっても、その利用方法をご存じの方は少ないのではないでしょうか。
空き家バンクは地方の空き家物件を探すにあたって、ぜひ知っておきたい物件探しのツールの一つです。
ここではまず初めに、そもそも空き家バンクとは何か、その仕組みや特徴、利用の手順などをご紹介いたしましょう。
空き家バンクとは
空き家バンクとは、自治体が運営するウェブサイトなどで地域の空き家情報を提供し、空き家の所有者と空き家物件を探す人をマッチングするサービスのことで、自治体による空き家活用に向けた対策の一環という側面もあります。
この制度が始まったきっかけには、全国的に増加し続ける空き家の問題があります。
家は日常的に使われていないと老朽化のスピードが速まり、近隣地域に悪影響を及ぼしてしまうことも珍しくありません。
古民家などの昔ながらの家屋に人気が集まる昨今ですが、地方の空き家の情報はその地方に住んでいない限り手に入りにくいという状況がありました。
このように埋もれてしまっている地方の空き家情報を、全国どこにいてもアクセスできるようにするため生まれたのが、空き家バンクなのです。
20年以上前に始まった制度ですが、地方移住や古民家の人気の高まりから近年になって全国の自治体に広がりを見せています。
空き家の活用を推進するため、空き家バンクを利用して購入した空き家の修繕や改修などの費用を助成してくれる自治体もあります。
空き家バンクでの物件探しの手順
ここで、空き家バンクを利用した物件探しの手順を見ていきましょう。
●インターネットで自治体の空き家バンクを探す
まずは、空き家バンクを管理しているのは自治体ですので、移住をご希望の自治体のウェブサイトなどでその自治体の空き家バンクを探しましょう。
自治体の移住情報ポータルサイトが空き家バンクの機能を兼ねていることもあります。
また、国土交通省と民間の不動産会社の提携による全国版の空き家バンクもあります。
●空き家バンクで物件を検索
気に入った物件が見つかれば、その物件の条件や規則をよく確認しましょう。
空き家のリノベーションをお考えの場合は、物件の立地などによる法的な制限がかかっている場合もありますので注意が必要です。
●気に入った物件の見学申し込み
物件の条件や規則を確認して問題がなければ、見学を申し込みます。
空き家は中古物件ですので、実際に物件を見て設備などを確認した上で判断したほうがよいのはもちろん、住んだことがない地方であれば、周辺環境などを把握しておくことも大切です。
宿泊体験ができる物件もあるようです。
●売買交渉を経て契約
見学して物件が気に入れば契約に向けた交渉に入り、交渉が成立すれば物件を契約することになります。
空き家バンクを管理する自治体に物件を申し込むと、基本的にその後は物件の所有者と入居希望者同士で直接交渉をおこないますが、自治体や物件所有者、またはご自身の希望により不動産会社が仲介に入るケースもあります。
直接交渉であれば仲介手数料はかかりませんが、不動産会社に仲介してもらったほうがトラブルを回避できます。
移住希望者は知っておこう!空き家バンクのメリット・デメリットをご紹介
それでは、地方移住の際に空き家バンクを利用するメリットおよびデメリットについて見ていきましょう。
空き家バンクを利用するメリット
空き家バンクを利用する際の大きなメリットの一つはその金銭面です。
●お金をかけずに物件を入手することが可能
空き家バンクに掲載されている物件は、移住を促進するために賃料や売却価格が低めに設定されている場合が多く、所有者との直接交渉が基本ですので、仲介手数料もかかりません。
さらに、多くの自治体では空き家バンクに掲載されている物件について、その購入やリノベーションなどにかかる費用を助成する制度や、空き家バンクを利用する移住者に対する補助金制度を設けています。
これらの制度の内容や制度を利用できる条件などは自治体により異なりますので、確認が必要ですが、このような支援制度をうまく利用すれば、移住にかかる費用を抑えることができます。
●地域活性化に貢献できる
また、空き家バンクを利用して移住することで、気に入った地域の活性化に貢献できるのも魅力の一つです。
空き家が多く人口が少ないけれど魅力的な地域に移住すれば、空き家という眠った資源を活用できる上に、地域経済の循環にも貢献できるわけです。
また、移住先で空き家を利用して起業をするのも、地域貢献につながる可能性がありますし、空き家バンクの物件を活用しての起業に助成金を出す自治体も存在します。
空き家バンクを利用するデメリット
このように空き家バンクを利用しての地方移住には多くのメリットがある反面、デメリットもあります。
●物件の詳細を知るために現地に行く必要がある
まず挙げられる点としては、不法侵入などのトラブルを避けるため、不動産会社のウェブサイトのように詳細な物件情報が掲載されておらず、現地に出向いて内見しないことには物件の詳細がわからないことです。
地方移住をする場合には物件の詳細だけでなく、地域の雰囲気や周辺環境などを事前に把握しておくことが重要ですので、いずれにしても現地を訪ねてみることをおすすめします。
●契約は物件所有者との直接交渉が多い
もう一つ空き家バンクを利用する際に注意すべき点は、基本的に所有者との直接交渉が必要であることです。
これは自治体にとって空き家バンクの運営は移住促進のためであって、営利目的でないためです。
自治体や所有者によっては宅建業者などの専門家に仲介に入ってもらう場合もありますが、そうでない場合はトラブルを避けるため、十分注意して交渉する必要があるでしょう。
地方移住で空き家を探すなら空き家バンクをチェック!各自治体の取り組みは?
最後に、いくつかの自治体の空き家バンクに関わる取り組みをご紹介いたしましょう。
地域への定住を目的とした取り組み
空き家バンクの最終的な目的は移住希望者の定住を促進することにありますので、まずは定住に向けた取り組みを推進する自治体の例を見ていきましょう。
●岩手県遠野市
岩手県遠野市の移住・定住策では、観光から、短期滞在、長期滞在へと段階を経て、定住に繋げていく点が特徴で、その受け皿である空き家バンクにも力を入れています。
●島根県江津市
島根県江津市ではNPO団体や宅建業者などの地元企業や団体と連携して、空き家バンクの運営業務にあたっています。
●島根県雲南市
また、島根県雲南市では定住推進員を置き、移住希望者からの空き家物件に関する問い合わせ対応業務をおこなっています。
空き家バンクのウェブサイト上には最小限の情報のみ公開し、物件の調査にもあたっている定住推進員が移住希望者の疑問にきめ細やかに対応します。
空き家バンクを利用した移住者向け補助金制度
空き家バンクを利用しての移住に対する補助金制度についても見てみましょう。
●神奈川県横須賀市
神奈川県横須賀市では、子育て世帯向けの空き家バンク「子育てファミリー等応援住宅バンク」で紹介されている物件の購入・リフォーム・解体する子育て世帯に向けて、これらの費用を最大50万円まで補助します。
●千葉県勝浦市
千葉県勝浦市の「勝浦市空き家リフォーム補助金」では、空き家バンク掲載の物件のリフォームに対し、補助対象の2割を、50万円を限度として補助します。
●長野県「楽園信州空き家バンク」
また、長野県が運営する楽園信州空き家バンクでは、県内の自治体の空き家バンク物件情報に加え、各自治体の補助金や助成金に関する情報も検索することができるため、大変便利です。
こちらの記事も読まれています|空き家を活用して憧れの田舎暮らし!空き家探しの方法や注意点をご紹介