近年、テレビやインターネットなどのメディア上で、空き家問題について取り上げられるのを目にする機会が増えてきています。
これには空き家の増加にともない、放置空き家などにより引き起こされる弊害が顕著となりつつある現状が背景にあります。
国や地方自治体もこうした問題を解消すべくその対策に乗り出しており、定期的に実施される「住宅・土地統計調査」はこれらの対策の土台ともなっています。
今回の記事では、この「住宅・土地統計調査」について、最新の統計である「平成 30 年住宅・土地統計調査」の結果や空き家を取り巻く現状と政策についてもご紹介いたします。
空き家に関する統計をご紹介!まずは空き家の現状と政策を知っておこう
はじめに、空き家問題の現状やそれに対する政策について見ていきましょう。
空き家とは居住者のいない住宅を指しますが、このような住宅が長期間にわたり放置されると、様々な問題を引き起こします。
空き家により引き起こされる問題としては、害虫・害獣の発生やごみの放置などによる衛生上の問題、老朽化が引き起こす倒壊など安全面での問題、不審者の出入りや不審火の発生といった防犯面での問題、さらに、家屋や庭の手入れ不足による景観上の問題が挙げられます。
このような事態が発生すると、地域や周辺住民にも及ぶ問題となります。
しかし、空き家は所有者に属する財産であるため、国や自治体であっても所有者以外のものが許可なく処分するわけにはいかないのです。
このような状態にある空き家の増加が社会問題化しつつあるわけですが、その背景には地方の人口減少や高齢化といった過疎化問題があると言われています。
地方では、若い世代が進学や就職を機に都市部へ移住・定住し、地方に残った両親が高齢化して老人ホームへと入居したり、死亡したりすれば、実家が空き家として残される、といった構図が多いようです。
また、商業地域などでは、放置された空き店舗が増えて地域活性化の妨げとなる、いわゆるシャッター商店街も問題視されています。
こうした空き家問題を打開すべく、政府により平成26年に制定されたのが「空き家等対策の推進に関する特別措置法案」です。
この法案の制定を受け、地方自治体は国が提示したガイドラインに沿って、空き家を調査してその所有者を特定し、空き家に関するデータベースの整備や情報の提供、また空き家活用のための対策などをおこなうこととなりました。
この法令の制定により、自治体は空き家の調査をおこなう際、固定資産税などの個人情報を閲覧することができるようになりました。
また、この法案がもたらしたもう一つの大きな変化に、保安・衛生・景観などの面で周辺地域に悪影響を及ぼす可能性のある空き家を「特定空き家等」としたことが挙げられます。
そして、このような空き家が放置されている場合、地方自治体は最終手段として勧告・命令・行政代執行などの強制措置をとることが可能になったのです。
こうして空き家の情報の整理と対策が義務化され、自治体にある程度の権限が与えられたことにより、空き家バンクの整備や相談窓口の設置など、各地域における空き家を取り巻く状況は大きく変化しつつあるのです。
国がおこなう空き家に関する統計「住宅・土地統計調査」とは?
ここからは、このような国や自治体の空き家対策の土台となる「住宅・土地統計調査」について、ご紹介していきましょう。
「住宅・土地統計調査」は、総務省統計局が昭和23年以来おこなわれてきた住宅統計調査の内容を変更し、平成10年より5年ごとに実施している調査です。
毎回10月1日を期日として実施され、平成30年度の調査は第15回目となります。
調査対象は国内の住宅および人が居住する建物に加え、居住者がいない建物や土地の保有状況などですが、外国政府や国際機関が管理している建物、皇室の保有する施設、刑務所や拘置所および軍関連施設は除外されます。
その目的は、これらの建物や土地の現状や推移の全国的および地域的統計をとり、住生活関連の資料とすることです。
このため総務省統計局に加え、各都道府県のウェブサイトでも地域別の統計結果を閲覧することができます。
また、具体的な調査項目には、世帯の構成や世帯の構成員に関する事項、ならびに現住居やその敷地に関する事項、現住居以外に所有する住宅や土地に関する事項などがあります。
住宅や土地については、設備内容や所有権、取得時期、利用方法に加え、建物の立て方や構造、破損の有無、改築や建て替えなどの工事の履歴、耐震構造などについて調査されます。
これらの統計の対象には空き家以外の住宅や土地も含まれていますが、平成30年度の調査では、少子高齢化に向けた住環境整備や、災害対策や省エネルギーを踏まえた住宅性能などに加え、空き家の所有状況にも新たに焦点が当てられました。
空き家に関する最新の統計!「平成 30 年住宅・土地統計調査」の結果は?
それでは、空き家にも焦点が当てられた「平成 30 年住宅・土地統計調査」の調査結果から、空き家を取り巻く現状を見ていきましょう。
今回、全国の空き家に関する調査では空き家数は846万戸、そして全ての住宅のうち空き家が占める割合は13.55%という結果となりました。
この統計は、前回調査の空き家数820万戸、空き家率13.52%という統計を上回る過去最高記録です。
ただし予測では空き家数1000万戸、空き家率16%にまで増加するとの見込みであったため、予測に比べて空き家の増加に抑制がかかったことになります。
空き家は、賃貸用、売却用の住宅、別荘や別宅などの二次的住宅、そしてこうした用途がなく、やむを得ない理由で空き家になった、または取り壊す予定となっている「その他の住宅」に分類されます。
このような種類別の増加ペースとしては「その他の住宅」が347万戸と29万戸増加しましたが、年間10万戸の増加という過去10年間のペースと比較すると、増加のペースは抑えられていると言えます。
また、賃貸用は431万戸と2万戸の増加、売却用は29万戸と1万戸の減少、二次的住宅は38万戸と3万戸の減少と、「その他の住宅」以外は減少か微増に留まっています。
今回の統計での空き家数や空き家率だけを見ると、過去最高にまで空き家数が増加してはいますが、以前の統計と比較すると、空き家の増加ペースには歯止めがかかりつつあります。
その一因として、「空き家等対策の推進に関する特別措置法案」が制定されて以来、国や地方自治体が講じてきた様々な空き家対策が挙げられます。
空き家対策の実施状況としては、493の自治体が「特定空き家」への措置を実施しており、措置別の件数では、助言や指導が13,084件、勧告は708件、命令が88件、行政代執行が188件となっています。
また、空き家対策計画の策定は1,122の自治体が完了しており、古い空き家売却での譲渡所得税の減免措置については、利用する際の証明書の発行件数が13,351件となりました。
このような国や自治体による空き家対策の推進が、空き家の増加ペースを押しとどめていると言えるでしょう。
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まとめ
今回の記事では、空き家に関する統計として「住宅・土地統計調査」についてご紹介し、その最新の調査結果から空き家問題の現状について見てきました。
「平成 30 年住宅・土地統計調査」の調査結果を見ると、空き家は未だ増加傾向にありますが、その増加ペースの減少からは「空き家等対策の推進に関する特別措置法案」の制定以来、国や自治体がおこなってきた空き家対策が功を奏しつつあることがうかがえます。
このような空き家対策の一環として、空き家の適正管理や利活用のための支援策があります。
今後空き家を所有する可能性がある方は、お住まいの自治体にどのような支援策があるのか一度調べてみることをおすすめします。
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